ヘルメスの媚薬 公演情報 ヘルメスの媚薬」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    独特な舞台美術により印象を操作された?(笑)
    老齢患者が同じ症状で相次いで死亡した病院に遣わされた医療危機管理センターのコンサルタントは院長の友人でありかつては医師で…な物語。
    序盤で語られる症状は十七戦地の初期作品にして代表作でもある「花と魚」を想起させるリアルSF的な味わい、過去の事実も絡めて真相が浮かび上がる後半は近年の十七戦地作品風で、柳井脚本ファンにとって「一粒で二度オイシイ」作品。
    また、明かされる真相がホラー(心霊系ではなく心理系)っぽくもあり、夏向きだなぁ、とも(笑)。
    ホラーと言えば、独特な舞台美術が第一印象で廃墟を思わせ、観ているうちに実は登場人物は全員死んでおり、その亡霊が廃病院に夜な夜な現れて同じ会話を繰り返しているのでは?な妄想も。
    リアルな病院的な装置だったら印象もかなり違ったろうなぁ…。
    なのでアンケートにあった「本作が映画化されるとしたら?」という設問に対して「思いっきり写実的に、また、回想場面も見たい」と回答。

  • 満足度★★★★★

    嘘と悪意と
    論争から心の闇へ。濃厚な60分でした。

    ネタバレBOX

    カウンセリングルームのくだりで登場した「桃ジュース」がとても気になって。向精神薬副作用疑惑を経由して、最後に桃ジュースの伏線が回収される流れが見事でした。
  • 満足度★★★★★

    危機管理
    60分の中に、人間の欲とプライド、他人を観察して面白がる冷めた視線が交差して
    濃密な“嘘つきドラマ”が展開。
    “大人の崖っぷち感“満載の登場人物が「人は信じたいものしか信じない」なんて
    素敵な台詞を吐きながら蠢くあたり、作家柳井氏の若いのに老成した部分が全開。
    不気味なBGMも良かった。

    ネタバレBOX

    入り口から見ると奥へと延びる長方形のアクティングスペースには
    たくさんの白っぽいくしゃくしゃの紙が敷き詰められている。
    目を引くのは正面の壁を覆う、一瞬血しぶきかと思うような荒々しいタッチの抽象画。
    それを三方から囲むように客席が設けられている。

    暗転の後、車いすの男性がゆっくりとその絵の前に進み、絵を見つめている。
    表情は暗く、生気がない。
    彼は日向記念病院の病院長志郎(西地修哉)、妹百合は看護師長(林田沙希絵)、
    弟直樹(朝川優)は事務長、という一族が経営する病院である。
    ここで原因不明の病気により、5人の患者が次々と死亡した。
    スキャンダルを怖れる病院が呼んだのは、かつてこの病院の医師で、
    今は医療危機管理センターの主席コンサルタント大神(鶴町憲)である。
    情報分析に長けた門野(北村雄大)と共に、副院長の牛尾(狩野和馬)や
    カウンセラーの兵藤(岸野聡子)らからも聞き取り調査を開始するが、
    全員何かを隠している様子でなかなか核心にたどり着けない。
    そんな中、事務長の直樹が提出した資料から、内部告発の手紙が出て来る…。

    率直かつ素直なのはコンサルタントの大神だけで、
    他は皆怪し気で嘘をついているように見える。
    だからつい大神の視点で真相に迫ろうとしてしまう。
    「人は信じたいものしか信じない」という台詞は、
    大神と同時に観ている私にも向けられている。

    隙のない役者陣が素晴らしく、緊張感が途切れないままラストまでなだれ込む。
    一度もハケない鶴町さん、屈託のある立場で真実を追求する姿にリアリティがあった。
    車椅子の病院長役西地修哉さん、積極性をとことん消した表情と声が巧い。
    事務長を演じた朝川優さん、チャラいぼんぼんの感じが巧くて、
    その後の行動とのギャップが鮮やかだった。
    KYな助手門野が医療部門の専門家でなく、観客と同じ目線で
    質問したり解説を求めたりしたのが理解を助けてくれて良かった。。

    大人の嘘は“何かを守るため”、その何かとは“自分を守ってくれるもの”なのだ。
    そして嘘をついた人間は、どこかでそれを告白したくてたまらない。
    その衝動は嘘の大きさに比例して強くなり、ついには耐えきれなくなって爆発する。
    告白すれば楽になるが、同時にその人間の終わりも意味する。

    抑制の効いた人生の最後に”媚薬”を持ってくるところが
    単なる医療問題にとどまらない奥深さがあって素晴らしい。
    無駄なせりふ無し、こってり気味の演技も謎解きにはプラス、
    事件の15年前も、事件の今後も気になる含みを持たせた構成も巧い。

    本当にこのあと、病院はどうなるのだろう?
    誰一人爽やかな笑顔を見せなかったこの物語の、今後が気になって仕方がない。
    そしてすべての始まりであった15年前の物語もまた観てみたいと思う。
    空恐ろしい15歳の少女の物語を。



  • 満足度★★★★★

    17時の回と20時の回を観ました

    上演時間60分。

    上手側壁際、下手側壁際、手前の3面客席。
    壁際席に座ったら冷房の風を強めに感じました。

    台本は、終演後に800円で販売してました。

    ひび割れていくような展開と、音楽がマッチしていて
    1回でも震えたし、2度観たら伏線探しが楽しめました。
    角度によって新しい発見があって
    登場人物それぞれの「時間」を感じられて楽しいです。

    小道具のひと手間もセンスがよかったです。

    挟み込まれているパンフレットの設問があまり見かけないタイプのもので、
    この結果は関係者じゃないけど私も知りたいと思いました(笑

    ネタバレBOX

    医療ドラマでよく見かける
    隠蔽や治験結果の改竄、
    血のつながりによる経営の腐敗など「ですよね!」が盛りだくさんでした。

    大きなどんでん返しというより、じわじわと恐ろしくなるような展開、
    そして大爆発。

    登場人物たちの隠し事が末弟に明かされ、
    内科医によって真相と方便が暴かれ蹂躙されていくシーンは
    中でもかなりゾクゾクしました。

    門野さんのKY(実は読めてる部分もある)と、もの知らず加減が、
    いい感じに流れを切ってくれて、
    第3者視点になったり客側のサポートになってくれて
    漢字の多い会話にもついていきやすかったです。

    柳井さん脚本の、別作品とのちょっとしたつながりも、
    先週上演したものと、同じ劇場で昨年上演したものとで、2つ見つけました。

    2回観て、登場人物同士のちょっとした掛け合いが
    まったく同じというわけではなく、
    役者に委ねているのか演出を毎回変えているのかわかりかねましたが
    閉塞した空間ながらキャラクターが生き生きとしていて楽しかったです。

    壁をなでる兵藤さんのうっとりとした表情や、
    愕然とし、小さくなっておびえる百合さんの登場時とのギャップ、
    嘘をついている人の表情の隠し方や
    隠し事をしている人が共犯者や崩壊のスイッチになりそうな相手にに対し
    抑止力としてて異様に接近したり話をさえぎったり
    目線を配ったりしているところも細かくて見ごたえがありました。

    15年前の話も、いつか作品として観てみたいです。

このページのQRコードです。

拡大