天麩羅男と茶舞屋女/FRIENDSHIP【ご来場ありがとうございました】 公演情報 天麩羅男と茶舞屋女/FRIENDSHIP【ご来場ありがとうございました】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
1-4件 / 4件中
  • 満足度

    取り扱う題材はおもしろかったが・・・
    <1作目 天麩羅男と茶舞屋女>
    時の内閣総理大臣、犬養毅を殺害した5.15事件の裏でもう一つの暗殺計画が企てられていた、それが喜劇俳優のチャールズ・チャップリン暗殺である。そして氷川丸に乗り込んでいたチャップリンとそこに暗殺の命を受けて女中として乗り込んでいた女マリを巡る物語。構想や取り扱う題材としては非常に興味深いものであった。しかしながら物語に入り込めない時間が続いた。
    昭和史や歴史物など史実ネタ、というのは非常にドラマチックなりうるがとても扱いに難しいという印象がある。
    それはその当時のイメージ、というものがよくありがちな戦争物などに固定され、演じる側や演出する側もそのありがちなイメージから抜けきれないからなのではないだろうか、といつも考える。
    今回のもまさしくそれだった。役柄のありがちなイメージを演じる俳優、そしてそれを拭いきれない演出、というのが物語を少しつまらない物に見せていた感じがした。作家の川田唱子の作品は初見だったが、まだ若く、もちろんまだ多くの伸びシロがあるのだろうと思う。そのような意味では今後に期待したい。


    <2作目 FRIENDSHIP>
    当団体も私は初見だった。単純におもしろかった、というのが感想だが、一つどうしても引っかかってしまうのが、そもそもこれは氷川丸を題材とした作品を2つ、という企画であったはずなのに、この青春事情の作品は正直、氷川丸じゃなくても、クイーンエリザベスでも、それこそ飛行機でも宇宙船でもなんでも成り立つ作品だったのではないか、というところである。氷川丸じゃなくては成立しない作品、というものだったのであればもう少し違った感想が持てたのかもしれない。しかし、2つの作品を並べた時のバランス、という意味では好ましい流れだったのではないか、とも思える。

  • 満足度★★★★

    好対照
    1作目。タイムリーな内容。当時の哀しすぎる状況を知り。平和ボケで思考停止している自分の脳が呼びさまされました。
    2作目。1作目が潮が引くように静かに終わった・・あと。なのに、なぜかスムーズに頭が切り替えることができて、いきなり全開で笑える。この導入が見事。未来にも中華街があってよかったよ~~わかちこ!!

    ネタバレBOX

    河田さん、エログロを封印して、こういう本もお書きになるとは。。驚きました。次回作も楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    Hikawamaru
    全くタイプの異なる作品の2作上演だが、扇の要になっているのが、氷川丸である。デートに利用した方々も多いに違いない山下公園に係留されている船だ。横浜デートコースの定番でもある。

    ネタバレBOX

     
     さて、最初に上演されるのは、5.15事件を引き起こした皇道派青年将校参謀格であった古賀 清志と横浜の茶舞屋で働いていて清志に救われたマリが、日本の社会変革を夢見て、その方途として日米開戦を画策。具体的には訪日を終えてシアトルへ帰る世界的喜劇俳優チャップリン暗殺計画を氷川丸上で為そうとした物語である。
     これは、実際に計画されたことである。偶々、チャップリンの秘書になっていた高野が、チャップリンから絶大な信用を得ていた為、チャップリンの偉大を充分理解していた高野の機転とチャップリン自身のアーティストとしての優れた特性、また、偶然としか言いようの無い運命のきまぐれからチャップリンは、命を長らえたのである。
     皇道派将校の殆どは貧農出身である。彼らの姉、妹らは、飢饉の起きる度、女衒に連れられ苦界に身を沈めていった。食う物もなく、家の壁を剥いで喰い、土を食んで飢えを凌いだ。だから、堕落しきった上層部、支配層に抗議する時、激昂の余り鼻血を流す者等も居たという資料が残っている。5.15、2.26を経て日本は、太平洋戦争へ突き進んだ。その選択は、後代の我々から見てあからさまな間違いであるにせよ、決して豊かだとは言えなかった大日本帝国で、天皇、皇族、一部の華族、資本家、政治屋、官僚が富と社会的地位を独占し、家事手伝いに雇った女には手をつけ、子を孕めば暇を出すような好き勝手を許せるハズは無い。道理を言えば、特高に引っ張られ、拷問虐殺は日常茶飯であった。
     但し、作中でも言及されているように、古賀はアメリカと開戦したら、勝つ気で居た。即ち、アメリカの実体を知らず、当時のアメリカ経済の規模と大日本帝国のそれとをデータを駆使して調べるということも行っていなかったことは確かである。即ち、皇道派は、その決意の中核に天皇親政を夢見ていたのであり、具体的に国家を運営・管理する為のノウハウを持っていた訳では無かった、ということである。結果的に、後に統制派に敗れることになったのは必然と言わねばなるまい。だからと言って、大日本帝国の統制派が齎した政治が、決して良いもので無かったことは歴史の示す通りである。その意味では統制派と雖も所詮井の中の蛙。村社会日本の本質を脱しては居なかったということである。
    ところで戦中、現在の秘密保護法に該当したのが、治安維持法であり、当然、現在と同じ共謀罪も適用された。だが、当時の治安維持法は、現在の秘密保護法より、ゆるいと考えられる。批判してはいけない対象が限られていたから、それ以外は罰される恐れが殆ど無かったと考えられるからである。現在の秘密保護法は、GSOMIA+αであり、何が罰されるのか原理的に明らかにならない。嘘だと思ったら、自分で詳しく調べてみるが良い。とんでもない法の実体が分かるから。
    因みに茶舞屋とは、主に外国人船員相手の遊び場、1860年代から1930年代間迄横浜など国際港に設けられていた。無論、セックスの相手にもなるが、ダンスを一緒に踊るなど社交的体裁も整えていた。
    さて、今作の話に戻ろう。マリは、チャップリンの宿泊している1等船室の隣の、矢張り1等船室に部屋を取った。彼女は厨房の下働きをしている若者と仲良くなり、チャップリンの食事に古賀から預かった毒を盛る。然し、さしものチャップリンも毎日届けられる海老の天麩羅に飽き、手をつけなかったことで助かる。偶々、下働きの若者が傷ついたカモメの雛を育てていたのだが、この雛が天麩羅を食べて死んだことから毒殺計画が発覚、マリは、高野の尋問に答えなかった為、水責め、兵糧攻めに遭うが口を割らない。結局、高熱を出して倒れてしまった。高野もこれにはケアが必要と判断、ドクターに診察させ、食事も与えた。愈々、明日、シアトルに着くという前日、チャップリンが「マリに遭いたい」との伝言を高野に伝えられたマリが船室に残っていると、高野の配慮で船室に訪れこそしなかったものの、チャップリンが自分の考えを隣室から述べた。この文言に胸を打たれたマリは、チャップリン暗殺を諦め、1人分の毒薬を仕込んだペンダントを胸に最後の晩餐に出掛ける。
    ところで、現在、猛威を揮う安倍内閣のスタッフの愚かさもまた、皇道派と同じ過ちを犯しているように見える。日本の右翼というのは、全体何かか・誰かを神聖視し、神格化して決して疑おうとしないことにあるように思う。疑義を呈したりすれば、不敬だの失礼だので排除され、決して批判的検証が内部の者によって行われることが無い為、過ちがあってもそれを改める機会を失してしまうのだ。その結果、とんでもない失敗が外部の力によって明らかにされない限り、自らの失敗を自らの力と知恵で止めることができない。これが、安倍のまた安倍政権のそして日本「エリート」の愚かさの正体である。
    2作目は、まるでタイプの異なる作品である。2作の扇の要は氷川丸のみ。今作で氷川丸は、遊星アルカディアと横浜を結ぶスペースシップとして登場する。
    かつて地球留学をし、妻子持ちの男と恋に落ちた女、ケイが星間恋愛の破綻の結果自殺を図るが、しっかり者のクルー、サチコに救われる。尤も、この自殺志願者を最初に発見したのは、幸子の後輩クルー、コーエンであった。然し、腰を抜かしてしまいものの役に立たなかったのである。今回ばかりではない。彼は、客にスープを掛ける。先月は客の大事にしていた時計を壊す等々、ドジのデパート、間抜けの笊といったキャラクターなのであるが、どういう訳か他人が放っておかない好かれキャラでもある。サチコは無論のこと、サチコほど仕事はできないが、シシドも先輩として常にコーエンを気に掛けてくれる。コーエンという役名も深読みすれば後援と公演を掛けているのかも知れない。
    何れにせよ、彼の数々の失敗にも拘わらず、彼が一所懸命に客にサービスし、寿退社するサチコに心配掛けまいと頑張る姿も、シシドがアナンというコーエンがスープを掛けてしまった客が良い人なのを良いことに、一芝居打って、サチコの前で男を上げさせてやろうとするのも、アナンは偽名で、実は、サチコに会いたい一心でシップに乗り込んだ婚約者であることも、船長がロボットでグーしか出せないという基本情報を漏らしながら、オカマを示す仕草ではパーの形に掌を開くことなども、最後のしっぺ返しへの助走と取れ・・・にゃいよ!! 
    まあ、これらの仕組みはばれてしまうのだが、サチコがしみじみ、コーエンのひたぶる失敗にも拘わらず、彼の顧客から下船迄にクレームのついたことは一度もないことを告げ、横浜に到着してからの穴場情報を、客の好みに合わせて地図付きで提供したり、無論、移動の際の時刻表や手段等々細かい所までケアした手描きの資料集を作成して手渡したりと優しい面を強調して自分一人で独り立ちしてやってゆけると餞の言葉を贈ると同時に、今回、コーエンの男を立てる為に打った芝居が、宇宙シップジャックを想起させ、テロか? との大騒動を引き起こしたことで減給処分を受けたシシドの株を下げるというギャグの最後っ屁もつく。
    1作目をシリアス作品に、2作目をコメディーにした上演形式は、観客をスムースに日常へ戻す為の配慮と見て良かろう。
  • 満足度★★★

    氷川丸を巡る2題。
    アイデアは良かったのですが。

    ネタバレBOX

    もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡『天麩羅男と茶舞屋女』
    1932年、横浜からロサンゼルスに向かう氷川丸の船内で、日米開戦派の軍人に恋をして、彼の指示に従ってチャップリンを毒殺しようとした女の話。

    暗殺されそうになったことがきっかけで、映画「独裁者」の構想を得たというのがミソでした。チャップリンが平和を愛する人物だと知った女でしたが、やはり恋に生きて自決するのでしょうか。悩ましいところです。

    ところで、対面舞台の反対側にしか文字を映さず、随分冷たい仕打ちだなと思いましたが、途中から見づらいながらも見えるようになり、手違いかと一応は納得しました。また、女の顔を水に浸け水責めに使用したタライをそのまま人参を洗う料理場のタライとして使ったのはあまりにも不衛生で配慮に欠けていました。気持ちが悪くなっておえっとなりそうでした。

    青春事情『FRIENDSHIP』
    2215年、火星から横浜に戻る宇宙船氷川丸の中における、男性クルーの成長物語。

    先の話と同じ船長で同じ役者さん、と言っても時代が違うので秋吉七郎と秋吉百三七郎の違いはありましたが、ちょっと受けました。そして、先の話は全体がシリアスな話なのに船長だけが何か頼りなく浮いた感じがした原因も分かりましたが、先の話ではシリアスに徹した方が良かったのではないかと思いました。因みにこちらの船長は豚型ロボットでした。

    頼りないクルーの成長物語でしたが、どこか焦点がぼやけているように感じました。『ロボと暮らせば』で青春事情を知り、そのときの藤吉みわさんが良くて注目するようになり、劇団ズッキュン娘を応援している私ですが、彼女と随分差がついてしまったように思いました。

    ところで、寿退社する先輩女性クルーに憧れているクルーですが、婚約によって人間的に優しさが増した彼女だからこそ憧れたのであって、もし婚約していなかったら憧れてはいなかったかもしれないというようなセリフがありました。

    えっ、これってまさに不倫を扱ったお芝居、結婚によって男に包容力が増し、人間的に一回り成長したそんな男に惚れたということであって、もし男が結婚していなかったら恋愛感情に陥ることはなかっただろうと断言した劇団ズッキュン娘『2番目でもいいの♡』そのものじゃないかと思いました。

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