鑪―たたら (残席僅か) 公演情報 鑪―たたら (残席僅か)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.9
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★★

    ストレートプレイを堪能
    サスペンデッズ主宰の早船聡さんの戯曲を青年団のベテラン俳優たちが演じる。
    老舗劇団の実力を味わう。

    ネタバレBOX

    昔、キューポラの煙が火事のようにたなびいていた町が、今や、マンションの建ち並ぶところとなった。
    かつて、親友だった鋳物職人は、ひとりは不動産プローカー(今西康平)に、もうひとり(水沼鉄三)はその町を離れ、別のところで息子と鋳物工場を続けていた。
    「キューポラ」という喫茶店で彼らをめぐる物語。

    訓練と経験を積んだ俳優が、時間をかけて準備し、演じるストレートプレイは、絶品である。
    こういう言い方は、なんだけど、多くの若い小劇場系劇団では出せない味がある(どちらがいい、というわけではない)。
    先月見た文学座でもそれを感じた。

    早船作品は何回か観ているが、青年座のこの作品は、どっしりと腰が据わっている。
    もともと戯曲が持っている資質なのだろうが、それが経験と訓練を積んだ俳優たちによって、十二分に活かされている。

    不動産プローカー・今西康平役の山路和弘さんが、フル稼動。
    本当に気持ちがいいほど、最初から最後までの、熱量が変わらない。
    途中の昔のシーンが差し挟まれ、山路和弘さんが素早く切り替わり、おばさん役を演じるところがある。
    おちゃらけているようでも、本編を乱さない強度がある。
    こういう味、強度は若手の俳優ではなかなか出ないだろう。
    単なるおふざけに見えてしまうから。

    そして、山路和弘さんに対する腕のいい鋳物職人・水沼鉄三役の山本龍二さんの佇まいがいい。
    黙って立っているだけで見える、対比が見事。

    離婚により家族から離れて1人の男と、息子に期待をかけすぎて、宝であるその息子を失ってしまった男が、表面上ではぶつかっているようで、実は、わかっているということが、後半に見えてくるという戯曲がうまい。しかも、それを広げて見せないところに美学さえあると感じた。
    互いに息子にどう接していいのかわからなかったのだ。

    その息子役の2役には驚いた。
    石母田史朗さんが、まったく違う2人の息子をくっきりと演じ分けていた。

    同じ俳優が演じることで、一見違う息子と父親の関係が、根っこは同じではないのか、とも感じさせてくれるのだ。

    彼ら2人や、彼らを取り巻く人々の仕事への誇りも感じさせる。
    さらに、今日的な、ヘイトスピーチ、失業者、ニート、在日、ネット、そんな背景が裏に見え隠れするところもうまい。

    やたらカッコ良すぎるシーンもあるが、状況説明の小芝居が面白すぎる。
    面白すぎるのだけど、くだらないとか、ベタとか感じないのは、基本の確かさがあるからだろう。

    工場と喫茶店を兼ねたようなセットもいい。
    キューポラから流れでるように見える湯(溶けた鉄)の感じとか。

    この作品を、7人の俳優で演じ切ったのは驚きだ。
  • 満足度★★★★★

    2回目
    ちょっと気になるところもあっての再観劇。納得。すごくわかるよ、…。演出もやはりちょっと変わってる。芝居はライブだよね。生きているよね。康平と鉄三の関係性が良くわかりました。山路さんのカッコよさは変わらず今回は山本さんに惚れてしまいました。また両方の息子役を演じた石母田史朗さんにも注目ですね。

  • 満足度★★★★★

    相性抜群、心に沁みる芝居に感謝
    大好きな大好きな脚本家が、信頼する劇団の芝居を書きおろし、しかも、好きな役者さんが勢ぞろい。演出も、新進気鋭の才能ある方。

    ずっと、拝見できる日を楽しみにしていました。

    期待通り、早船作品は、今回も、裏切らない佳作。しかも、青年座の熟練役者さん揃い踏みで、笑って泣いて、演劇ファンでいることの喜びをたくさん頂きました。

    生まれた時から、演劇世界の家庭で育ったので、あまりファン心理を表に出すことはなく、シャイに過ごして来ましたが、この日ばかりは、思わず、早船さんに、お声を掛けてしまいました。

    本当に、長きに亘る演劇ファンとして、早船さんが、演劇に携わって下さったことには、感謝の気持ちで、いっぱいになりました。

    また、早船さんと、青年座のタッグに期待したいと、心から思います。

    ネタバレBOX

    このところ、家族の思いのすれ違いに殊更、敏感なので、開幕すぐから、心が揺さぶられる瞬間が幾度もありました。

    山路さんの青年座舞台も久々でしたし、演技派の石母田さんの、ニ役の演じ分けには、心から、賞賛の拍手を送りたい、素晴らしい演技でした。

    お二人を始め、山本さん、麻生さん、横堀さん、山崎さん、高橋さん、全員の役者さんが、各々の役に命を吹き込み、舞台上で、生き生きと、存在してくださっていることに、どれほど、演劇ファンとして、喜びを感じたかわかりません。

    そして、早船さんという、稀有な才能ある方が、芝居作りを誠実に続けて下さっていることに、ひたすら感謝したい気持ちになりました。

    嫌なことだらけの世の中ですが、こうして、熱を持って、舞台を作って下さる、本物の演劇人がいる限り、私は、希望を捨てずに、生きて行けると思いました。

    須藤さんの演出も、とてもお茶目で、大好きです。

    漠然とした感想になってしまいましたが、それぞれの美点を挙げたら、切りがないので、こういう抽象的な表現になってしまうことをお許し下さい。

    とにかく、全ての演劇を愛する方に、ご覧頂きたい秀作でした。
  • 満足度★★★★★

    面白かった。
    山路氏山本氏が早船作の舞台に出るという事で、かなり期待して見たら予想を上回るええ舞台でした。
    最後のあの場面はとても美しく、まるで名画を見ているみたいで終わった後もしばし見とれてしまった。
    息子役、石母田さんの2役変わり身も巧みだわ、横堀さんのおっさんなのに弟的な可愛さとか。「鑪」ってそういうことだったのか、と理解。昭和のお茶の間劇では各自、適役すぎて笑った。
    約2時間。

  • 満足度★★★★★

    鑪 たたら
    面白かったの一言。
    今年の何かしらの賞に引っかかるのでは、、、

  • 満足度★★★★★

    役者。ウェルメイドを突き抜けて
    ストレートプレイの見本のような芝居。役者のうまさ。皆青年座だったんだ。やっぱし、やるな。終幕で並んだ7人が少なく感じた。早船聡の本、伊藤雅子の舞台美術。リアリズムで感情表現がストレートでそこをエンジンにテンポ感を出すタイプ。感情の激する生身の身体ゆえか、若干の台詞間違いも、気づかせるが乗り切るに十分の情動が舞台に流れている。キーマンとなる職人役(山本龍二)が場の撹乱要因、これと旧知で自らの家族問題も進行中の不動産屋(山路和弘)が全ての人物と関係して全体をアンサンブルする。
    終盤の台詞。作家の仕事に感服す。

  • 満足度★★★★

    ちょっとしたことにも
    こだわりが所々にあってそちらも目を引きました。面白い。生まれ育った土地について、親子とは!?考える。しかし、女性は強いなぁ~なんて感じた。過去のこととか、違う場所でのこととかあの劇場の中で分かり易く演出されていてそれも面白かった。一回ではつかみきれなくてもう一回観たい。

  • 満足度★★★★★

    程よい緊張感が漂う舞台。
    父と息子、父と娘、元親友同士、そして、それぞれの過去とこらから・・・いろんな緊張感がそこに漂っていて、それぞれがとても真剣に生きようとしてる・・・それがとても伝わってきました。
    せつなくて、温かくて、過ぎてきた時間が大切に思える物語です。
    演出がとても良かったです。

  • 満足度★★★★★

    K市の今昔物語
     鋳物で有名なK市を舞台にその今昔を扱った物語ですが、緩急が絶妙な構成のうまさとセリフのうまさを兼ね備えた戯曲、繊細な感性でその機微までくみとり見事に立体化した演出、俳優陣の意気込みががっちりとかみあい、キュポラからほとばしる溶湯のように、不器用にしか生きられない男たちの熱い思いがひしひしと伝わってくる作品になっていて、特に劇作家と演出家の相性というか組み合わせがとてもうまくあっている印象を受けました。
     テーマの一つでもあるものづくりは舞台作りにも通じており、劇団創立60周年記念公演の締めくくりとしてとてもふさわしい作品をもってこられたのではないでしょうか。
     上演時間は途中休憩無しの約2時間。

    ネタバレBOX

     舞台空間の使い方が見事です。さらに、登場人物の設定や配役がよくできており(例えば、石母田さんの一人二役のキャスティングの効果など)、特に東京オリンピックの聖火台を作った鋳物職人の親子の逸話を新派風の劇中劇でみせた際の山路さんと山本さんの夫婦役のやりとりはめったにみることの出来ない必見の場面だと思います。




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