十一月新派特別公演 公演情報 十一月新派特別公演」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    貴重な二本立て
    昨年秋から体調を崩して最近まで病人生活だったのと、コリッチがアクセスできなかったりで、すっかりごぶさたしてしまいましたが、観劇数は少ないながらぼちぼち備忘録がてら挙げたいと思います。
    『鶴八鶴次郎』は昔に観た先代八重子と17代目勘三郎の舞台が印象に残っていますが、成瀬巳喜男監督の映画版も好きで特に山田五十鈴には惚れ惚れします。『婦系図』でも共演した長谷川一夫との息がピッタリなのです。芝居でも観たいと思っていた矢先に、中村屋兄弟が初演するというので行くことにしました。
    従来の新派公演ならこの二つの演目は昼夜に分けて上演するでしょうが、二つの芸道ものを堪能できる貴重な機会でした。
    最近の客席は世代交代したせいか、新派の演目自体知らずに観に来ている年配客もいるようで、名場面にもキョトンとして拍手も来なかったりするので時代の流れを感じさせられました。

    ネタバレBOX

    冒頭の楽屋での喧嘩で、七之助は腹の虫が収まらず口の中でブツブツ言うところ、このイキが山田五十鈴を思わせ、まだ若いのに感心しました。
    実の兄弟だけに呼吸は合うと思う役どころで楽しませてもらいました。ある新聞の劇評では勘九郎は奔放に演じた父に比べ、芝居が理に傾くが彼なりの良さが出たと書かれていました。まだ余裕のなさはいなめませんがこの役は融通のきかなさもある男で、勘九郎は父とはまた違う表現が今後できていくのではと期待しています。
    七之助は玉三郎と共通する新派の女形としての可能性を感じさせてくれました。
    芸人の悲哀を語る終幕は若い勘九郎にはまだ実感が出せないであろう、というか歌舞伎俳優は盛りを過ぎても名優は人間国宝などになり、哀しい末路は迎えないですむ境遇なので、難しい台詞だとは思います。
    ただ、この芝居で感動させられるのは「名人の芸もお客様あってこそ」という川口松太郎の名台詞。最近、この生原稿の写真を見ましたが川口松太郎氏が大切にしていた思いだという。近頃は腕の未熟さを棚にあげ、観客に毒づく若い演劇人にも接するだけに、若い演劇人にも観てほしい芝居です。

     『京舞』は昔、観に行こうと思っていたときに17代目勘三郎が休演したため行かず、生の舞台は今回初めて。前半は八重子の役者子供のようなわがままなおばあちゃまぶりが可愛らしく笑わせてくれるが、舞の場面では八重子と久里子それぞれさすがにきっちりと舞って見ごたえがありました。
    『鶴八鶴次郎』では若さが出た感のある勘九郎が、不思議に久里子との夫婦役は違和感がなく、妻の芸を尊敬する夫の包容力が伝わってきました。二人のやりとりを聞いていると、同じく井上流家元と観世流能楽師である当代の八千代さんと暁夫さん(現観世銕之丞)ご夫婦の若いころをみているようでもあり。ほほえましい気持ちになりました。
    晩年の毅然とした印象の先代八千代さんにもあんな時代があったんだなぁと。
  • 満足度★★★

    勘九郎鶴次郎は時期尚早
    「鶴八鶴次郎」は、大好きな作品で、10代の頃から何度となく観ました。

    物心ついた頃から、新派の舞台は、招待券で軒並み拝見させて頂いていましたが、あまり新派好きでない私の、これは一番好きな演目でした。

    鶴八役は、先代の八重子さんが、最高でした。

    鶴次郎は、18代目勘三郎さんの最後のシーンの名演技に泣かされたことが、記憶に新しいところです。

    大好きな作品ですから、若い中村屋兄弟が、どう演じて下さるのか、とても楽しみに観に行きました。

    七之助さんの鶴八は、初役にしては、及第点だったと思います。
    でも、残念ながら、勘九郎さんの鶴次郎は、まだまだでした.

    もう少し、年齢を重ねた後の、勘九郎鶴次郎に期待したいと思います。

    「京舞」の方は、この日のゲスト女優さんが、勘三郎さんを語るのを観たくないため、失礼して、帰宅しました。

    ネタバレBOX

    「鶴八鶴次郎」は、男女の恋愛の機微を見事に描いた名作です。

    お互いに、幼少の頃から、芸の上での兄妹の関係で、それがいつしか、男女の恋心に変わる鶴八と鶴次郎。でも、二人は、何かと言えば、芸のことで、諍いを重ねてしまいます。

    一度は、結婚を誓い合ったのに、鶴次郎の焼きもちから、また喧嘩別れとなり、コンビを解消した鶴八は、大店に嫁ぎ、鶴次郎の方は、酒に溺れて、田舎の小屋で、身を持ち崩してしまいます。

    縁あって、再会を果たした二人は、もう一度、共に舞台を務めようとしますが、鶴次郎なりの、鶴八に対する思いやりから、またもや、鶴八に喧嘩を仕掛けて、この共演は、身を結ぶことはありません。

    最後の酒屋の場面での、鶴次郎の、新内流しを聞いた時の、心情表現が、この芝居の核だと思いますが、まだまだ、若い勘九郎さんには、この悲しい男心を表現するには、無理があったと思いました。
    それに、お父様と違って、勘九郎さんには、好きな人を諦めた経験がないからかもしれません。

    いつか、お二人が、更に人生経験を重ねられた後に、再び、この演目を演じて下さる日を楽しみに待ちたいと思いました。
  • 満足度★★★★★

    新派初観
    中村屋の勘九郎さんと七之助さんも初出演の新派

    1本目は、二人が男女役の『鶴八鶴次郎』 。兄弟なのに恋人・夫婦といつみても見事。脇の役者さん達も柄本さんはじめ見事で、ゆったりした中にも重厚な感じでした。

    2本目は、新派の役者さんメインで「京舞 三幕」
    水谷 八重子さん、波乃 久里子さん、はじめ、素晴らしい新派の役者さんたちの作品。客演の近藤正臣さんや勘九郎さんも、新派の役者さんの前では、やはり重婚感が少なく見える

    間の挨拶も面白おかしくて、大満足な追善公演でした

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