満足度★★★
濃密な世界観
まずは凄い会場で驚きました。
その上、出迎えてくれる詩森さんはじめ制作陣も物語世界に入り込んだような服装で二度ビックリ。
三島作品ということで、ストーリーを理解するために
事前に読んでおいたのですが、
はっきり言ってあのきらびやかな台詞がどういう風に
芝居として立ち上がるのか想像がつきませんでした。
終演後、あの戯曲がああいう風になるのかぁ。つくづく演劇って凄いなぁ、と思いました。
もう一回戯曲に目を通して反芻しようと思いました。
満足度★★★★
雰囲気勝ち
会場に入った途端に、まず雰囲気、特に装飾品にやられてしまいました。ここで、男性キャスト4人芝居で三島原作を演るのか、これは背徳感バリバリで男咽返っちゃうなだなと思ってましたが、観終わった感想としては意外とさっぱりして、とても観やすかったです。
詩森女史が意図的にそう演出したのか、濃い所と軽めの所のメリハリが効いていて流石に巧いなと思いました。
また、これは原作もそうなのかも知れませんがナチス・ヒトラーの悪逆非道を殊更論うことしないのも良かったです。
特に、最後の夜描写は言葉で過剰に説明するわけでもなく、音とあの顔一発で表すのは、役者さんも含めて流石です。
満足度★★★★★
犠牲の羊と男の愛憎
この舞台の白眉は、やはり2幕後半のレームとシュトラッサの談合と思います。シュトラッサは、レームに、「ヒトラーはお前を見捨てているぞ(もう愛していないぞ)、突撃隊を使ってクーデタを起こし、一気に政権を奪取、革命を続行しろ。」と説得します。しかし、レームは、その説得を撥ねつけます。レームの中では、ヒトラーと自分は完全に一体(アドルストネズミの話は、三島の創作ですが、象徴的に使われていました。)であり、ヒトラー政権を磐石にする犠牲の羊に供される迄、ヒトラーとの戦士の友情を信じて疑っていませんでした。もしかすると、知っていて知らないふりをしていたのかもしれません。実際、史実でも、ヒトラーもレームの殺害にはためらいがあり、まず自死を勧めて、応じない場合は殺害するようにと指示しています。また、3幕に出てきますが、ヒトラーもレームの死にはダメージを受けています。レームの愛情もあながち一方通行ばかり(レームの愚かさ)とは言えないと思います。従って、本作を政治劇からだけ観ると軍人のレームは政治を理解しない愚かさしかみえませんが、美-エロティシズム-死のトライアングルの三島美学から観ると、ヒトラーにより殺されて犠牲の羊に捧げられたレームは、シュトラッサの「英雄が英雄的に死ぬとは限らない、ヒトラーがレームの死を命じてきたらどうするのだ」という皮肉にもかかわらず、最高に劇的な死を遂げたといえるかもしれません。この舞台を政治劇だけでなく、愛憎劇として観ていただくと、また別の楽しみ方ができると思います。
満足度★★★★
わが友ヒットラー
三島由紀夫作のこの戯曲を観るのはたぶん4度目。今回が一番面白かった。わかりやすく男の友情、可愛いじゃれ合い、馬鹿丸出しのみっともなさが楽しめた。女性演出家だからかも?会場も一見の価値あり。