わが友ヒットラー【当日券ございます】 公演情報 風琴工房「わが友ヒットラー【当日券ございます】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    犠牲の羊と男の愛憎
    この舞台の白眉は、やはり2幕後半のレームとシュトラッサの談合と思います。シュトラッサは、レームに、「ヒトラーはお前を見捨てているぞ(もう愛していないぞ)、突撃隊を使ってクーデタを起こし、一気に政権を奪取、革命を続行しろ。」と説得します。しかし、レームは、その説得を撥ねつけます。レームの中では、ヒトラーと自分は完全に一体(アドルストネズミの話は、三島の創作ですが、象徴的に使われていました。)であり、ヒトラー政権を磐石にする犠牲の羊に供される迄、ヒトラーとの戦士の友情を信じて疑っていませんでした。もしかすると、知っていて知らないふりをしていたのかもしれません。実際、史実でも、ヒトラーもレームの殺害にはためらいがあり、まず自死を勧めて、応じない場合は殺害するようにと指示しています。また、3幕に出てきますが、ヒトラーもレームの死にはダメージを受けています。レームの愛情もあながち一方通行ばかり(レームの愚かさ)とは言えないと思います。従って、本作を政治劇からだけ観ると軍人のレームは政治を理解しない愚かさしかみえませんが、美-エロティシズム-死のトライアングルの三島美学から観ると、ヒトラーにより殺されて犠牲の羊に捧げられたレームは、シュトラッサの「英雄が英雄的に死ぬとは限らない、ヒトラーがレームの死を命じてきたらどうするのだ」という皮肉にもかかわらず、最高に劇的な死を遂げたといえるかもしれません。この舞台を政治劇だけでなく、愛憎劇として観ていただくと、また別の楽しみ方ができると思います。

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    2014/09/11 00:29

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