「廃墟の鯨」 公演情報 「廃墟の鯨」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
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  • 満足度★★★★★

    東憲司芝居の真骨頂
    戦後にギリギリの生活を送る庶民の姿と綺麗事ではないリアルなヤクザの世界を泥臭く骨太に、メタフィクション気味なくすぐりも加えて描いた東憲司芝居の真骨頂。
    夏のテント芝居ならではの本水をふんだんに使ったダイナミックな演出も堪能。
    今までに観た十本ほどの椿組花園神社野外劇の中でも一、二を争う満足度やも?
    椿組花園神社野外劇ではなく、桟敷童子公演だったら…という架空のキャスティングをしながら観るのもまた楽しからずや。

  • 満足度★★★★★

    雷鳴轟く中での迫力の芝居
    花園神社に立ち寄って当日券でキャンセル待ち。
    最後の最後に何とか入ったら最前列の補助いすという幸運!
    泥まみれになりながらも臨場感溢れる観劇でありました。

    最初から雷鳴と豪雨という波乱の幕開けでしたが、セリフが掻き消されそうになると、役者が声を張り上げ、体当たりの演技が更にヒートアップするという神憑り的な相乗効果で、会場は不思議な熱気に包まれていました。
    終盤は序盤の雷雨が嘘のように静かになり、感動のエンディングを迎えるという奇跡の演出。
    最後の大宴会には気おくれして残念ながら参加しませんでしたが、新宿ゴールデン街にて芝居の話で盛り上がり、大興奮の一夜でありました。

    また、椿組の芝居を観てみたいと思います。

  • 満足度★★★★

    花園の鯨
    29年目となる夏の恒例イベントは、桟敷童子の東憲司さん作・演出という
    観る前から相性よさげな今年の野外劇。
    ダイナミックな創りは、粗さも含めて芝居の原点を見せてくれる。
    主人公の内面に迫るシーンがもうひとつ欲しかったけれど
    相変わらず“人生意気に感ず”みたいな展開がシンプルに心を揺さぶってくる。

    ネタバレBOX

    「ここ花園神社は新宿区の避難所に指定されております、
    皆様は最初から避難所にいらっしゃるわけです!」という
    定番の前説を聞くと、今年も野外劇が始まる前のわくわくした気分になる。

    戦後のスラムを舞台に“肉の防波堤”と言われた娼婦たち、
    彼女らを束ねGHQと繋がろうと抗争に明け暮れるやくざ、
    娼婦もやくざも忌み嫌いながら社会の底辺でもがく人々…。
    そこへ満州帰りのひとりの女が現われる。
    金とピストルを持ち、冷たい目をして人助けをしようとする謎の女番場渡(ばんばわたり)。
    彼女の出現は周囲に波紋を呼び、それは次第に広がって行く。
    そして渡の意外な素性が明らかになる…。

    徹底的に弱者の視点から時代を見つめる設定、
    “桜”や“鯨”が象徴的に使われる演出など
    ストーリーの運びは安心して観ていられる。
    そこへせっかく超異分子的な番場渡(松本紀保)が投入されながら
    彼女の内面がバックグラウンドを語るだけで終わってしまった感じが残念。
    先の短い命と知りながら誰かのために闘う孤独な心情を、もっと吐露してほしかった。
    受け手となり得る八幡(山本亨)、能嶋(恒松敦巳)、早乙女(鈴木幸二)がいるのだから
    強い渡がいっとき崩れて弱さがこぼれ出るような場面があったら、と思った。

    今年は“鯨”だけに、上手・下手にひとつずつプールを設け、水を使った演出が新鮮。
    冒頭の大勢がうごめくところや、エネルギッシュな群舞の面白さは
    振り付けのスズキ拓朗さんのセンスを感じさせて秀逸。
    ラストの白鯨の張りぼてがまた、もう少し早く出て来ても良かった気がするが
    たっぷり待たせて泳いできた時はやっぱり嬉しかったなあ。

    渡役の松本紀保さんはさすがの立ち姿で、寡黙で孤高の人を魅力的に演じる。
    親分に可愛がられながらも敵対するやくざに寝返る
    日和見的な嵯峨野を演じた粟野史浩さんが素晴らしかった。
    昨年鄭義信さんの「秋の蛍」でも、時代を感じさせるいでたちと台詞に魅了されたが
    今回も汗臭い群れの中で、ひとり風呂上がりのような清々しい風貌と口跡の鮮やかさが
    自信たっぷりにのし上がっていく新しいタイプのやくざをリアルに見せた。
    “自分が組に引き入れた新人やくざに刺されて死ぬ”
    という最期に説得力を持たせるキャラが見事。

    飲んだくれのヘエボウを演じた椎名りおさん、飛び道具的な役ながら
    振り切れた演技が素晴らしく、群像劇にメリハリがついた。

    当日パンフに外波山文明さんの書かれている通り
    “いまだ戦後であり、いつの日か戦前とならないことを祈る日々。
    きな臭い政治の世界に怒りを抱きつつこの芝居をお送りする!“
    そんな気持ちをいっそう強くさせる力のある作品だった。
  • 満足度★★★★

    最終日観劇
    水飛沫を大量に浴び泥塗れになりながら戦後直後のヤクザ、娼婦、耳つんぼ、市井の人々の地獄絵図から熱気と生命力に溢れた、ダイナミックでロマンチアングラ劇でした。
    配役の設定に多少の荒さのようなものも感じたけど、面白かった。
    平日千秋楽で飲み会参加なんて無理、なので大人しく帰宅せねばならないのは残念w

    ネタバレBOX

    冒頭から強烈な眼力を発揮させ歌い、踊り、台詞を発する役者たち。一瞬でも目をそらしたら負けな気がして、ついこちらも見つめすぎてしまったw。
    ワタリさんのピストル持った姿かっこ良くてサマになっていたけど、もう少し「女」の要素の場面があってもよかったような。能嶋、早乙女の繋がりに最後まで生きていてほしいな、と思ったり。ほか、撃たれてもなかなか死なない八幡の亨さんwとか、扉座の公演時とはまたひと味違う野性味ある馬野伊の松本さん、途中まで狂言回しの出落ちかと思った梶原の辻さん、面白くて印象に残った。
    それにしても劇中「人間まんま」の台詞を、一体何回聞いた事かw。
    生き抜いて死んで、またどこかで新たな命として復活して、を繰り返す人生の切なさと希望みたいなものが、ごちゃまぜに熱く感じらさせられた芝居だった。
  • 満足度★★★★★

    夢と希望の物語
    期待以上の良い舞台でした。
    野外テント劇場という特性を活かした演出、そして、泥にまみれ、水をかぶっての役者陣の熱演。最前列という特等席だったこともありますが、まさに役者の息遣いも聞こえてくるような、熱気あふれる舞台でした。
    マイクを使わない地声の舞台、というだけで、評価が3割増しくらいになってしまいます(笑)。

    桟敷童子の東憲司さんの作・演出ということで、程よいアングラ感がありつつも、作品は、「愛と希望を持ち続けることの大切さ」ということが沁みてくる、そんな優しい作品になっています。

    久しぶりに、「いい芝居を観たな」、という幸福と、「あぁ、もう見られないんだな」、という寂寞感の両方が味わえる芝居を堪能させていただきました。

    ネタバレBOX

    ネタバレ、というほどの話でもありませんが、ラスト近くに、群衆がスローモーションになる演出があるのですが、この時、最後列にいる時子役の坂井香奈美さんの演技が、あっぱれです。
    芝居の動きで、「身体ができている」、というお手本のようで、地味だけどすばらしい演技でした!
  • 満足度★★★★

    風物詩
    天候の悪さ、車の音を心配していましたが、野外公演の雰囲気って良いなと思いました。もうちょっとゆったり座れたら、ビール飲んで最高でしたが。
    誰かを誘って観に行きたくなるような、終わってからお酒飲んで語りたいような芝居でした。

  • 満足度★★★★★

    夏のはじまりの定番
    ここ数年、夏の始まりにはきまって「椿組」を見るようになりました。
    今回もthe椿組。期待を裏切らない展開です。
    暑さ対策は充分に。
    毎回、入口上のところを狙って整理券番号若番をgetして会場に入ったのですが、今回はそこは指定席になっていました(^_^)。その席には主演女優のお父さんがいまして、びっくりしました。

    ネタバレBOX

    野外劇の定番はやっぱり野外劇でしかできない特別な演出があって、今回もやってくれました。
    ここでは必ず「舞台裏・・・セブンイレブン・・・通行人まで見せてくれる」。他の野外劇でも舞台の外まではみ出すような気がします。(唐赤テントはそうではないですね。そういえば)。
    能登演劇堂の無名塾公演も必ず舞台奥の扉は開けてくれるそうで(私が昨年みたロミオとジュリエットでも見事に使ってくれて満足しました)。川島雄三の「幕末太陽傳」がそういえばそんなエンディングでしたが。芝居でののルーツはなにか気になりました。
    残りわずかですが、是非。
  • 満足度★★★★★

    戦後復興の人間模様の現状
    腐っても鯛、されど人間、戦後の日本のヒューマニズムを体感できる素晴らしいアート的なステージを観れて良かったですね(≧∇≦)

  • 満足度★★★★★

    人の生命力が熱く溢れる舞台
    毎年夏に花園神社で野外劇を上演している椿組。
    そして、そこに、土の香りが強いセンチメンタリズムが充満する舞台を見せてくれる、劇団桟敷童子の東憲司さんの作・演が合体した。

    椿組の野外劇と東憲司さんの作風は、ぴったりとしか言いようがないので、とても期待して花園神社に向かった。

    ネタバレBOX

    劇団桟敷童子とは違い、年齢の幅、色とりどりの役者の個性が揃い、さらになんと、28人もの登場人物が舞台の上に現れる。

    しかも、それぞれの登場人物が活き活きと描かれており、舞台の上が役者で一杯になるシーンでも、どの場所を切り取っても「人間」がそこにいる、と感じられる熱い舞台であった。

    もちろん役者さんたちが上手いこともあるのだが、これだけの役者を動かし、まとめ上げ、作品に仕上げていく、東憲司さんの力を見せつけられた。

    役者の身体と気持ちがうねるように、物語を作り上げていく。
    その「うねり」は「人間の生命力」であり、人間賛歌に溢れていた。

    舞台は、戦後間もない頃の地方都市(復員船が到着するところ。たぶん桟敷童子でお馴染みの九州地方か)、下水が流れ込むドヤ街。そこに暮らす人々。
    このあたりを仕切るヤクザたちと、彼らに使われている「(米兵に対する)肉の防波堤」と呼ばれている娼婦たち。
    彼らの前に、満州から引き上げて来た、女が現れる。
    彼女は、ふとしたことから娼婦たちを逃がすことを手伝おうとする。
    そこで一波乱起きる。
    そういうストーリーに、戦争孤児たちや、満州の花屋などの話が絡んでくる。

    セットが野外劇であることを十二分に活かしたものだ。
    土の舞台、左右に爆弾が落ちた後に水が溜まっているという池、そこに天井から下水(本水)が、時折、大量に流れ落ちる。
    オープニングから奥のドヤ街のバラックが立ち上げるシーンは素晴らしい。
    新宿の喧噪、パトカーまでもが良いSEとなっている。
    ラスト近くに大立ち回りがあるのだが、これが凄い。
    水たまりに落ち、水がしたたり、必死の形相でつかみ合う。
    単なる「手順」の立ち回りとは大いに異なって見える。
    それだけの迫力があった。

    主演の満州帰りの女・番場渡は松本紀保さん。
    ドヤ街の住民やヤクザたちの中にあって、凜として立ち、なかなかカッコいい。
    病気であるという設定も効いている。

    主演と書いたが、物語の「軸」という意味である。幾人か登場人物たちが軸になる、群像劇であると言っていい。桟敷童子のスタイルである。
    さらに、軸となる番場渡は、ラストの早い時期に死んでしまうのだ。
    彼女の死を先に引っ張っぱることで、センチメンタリズムを感じさせるのではないところが、いいのだ。

    八幡を演じた山本亨さんは、熱っ苦しくで、やっばりいい。グイグイ来る。
    ヤクザの兄貴を演じた、粟野史浩さん、犬飼淳治さん、伊藤新さんはタイプの違う、いかにも悪そうな顔つきが良かった。
    飲んだくれのエイボウを演じた椎名りおさんは、こういう役は初めてではないだろうか。爆発していた。こういう役は立ち位置が難しいと思うのだが、全体にうまく溶け込んでいた。

    「主」とか「脇」ということを意識させず、どの登場人物も熱気でギラギラしている。
    そのギラギラした熱を見事にひとつの方向にまとめ上げたと唸る。

    「人間、まんま生きる」がテーマ。
    満州帰りの番場渡が繰り返し言う。
    そして、それは「今」を生き抜くということだけではなく、「明日」という日があることを想い生きるということを意味している。
    孤児の1人が「ここには明日はない」「今日の次は今日だ」のようなことを言うのだが、そうではないことを意識させる。

    番場渡は、満州では「満州花屋鯨の桜」という花屋のお嬢さんだった。
    満州生まれで満州育ち。日本は遠い故郷。
    このドヤ街に日本の桜を育て、花を見たいと思っている。

    孤児は桜の花に「明日」を想い、娼婦たちは「明日」の自分たちを思い描く。

    ラストはタイトル通りで、テント芝居の常道であるから、奥が開き、鯨が出てくるのだろうと想像していた。
    もちろん、そうなったのだが、そこまでの引っ張り方がとても上手いのだ。
    桟敷童子であれば、意外と早くそのシーンは訪れるのだが、ここではラストであろうと思っていた大立ち回りの後ではなく、それから時間が経っていき、「明日」がやって来たドヤ街の人々の前に現れるのだ。

    死んで行ってしまった人たち、去って行った人たちが、大きな鯨を支えながら現れて来る。
    このシーンには、わかっていたはなのに、グッと来てしまった。
    美しいシーンだ。

    人の命が、ワーッとこちらに溢れてくる、素晴らしいシーンであった。

    オープニングと劇中の歌も良かった。

    椿組の野外劇としても、東憲司さんの作・演出としても、トップクラスの出来であったと思う。
  • 満足度★★★★

    躍動感に溢れ疾走感のあるみずみずしい野外劇
     ストーリー的にやや粗さはあるものの、作り込まれた舞台上でリズミカルでテンポのあるセリフや音楽を効果的に織り込んで見事に展開された、随所に笑いの要素も交えながら、躍動感に溢れ疾走感のあるまさにライブ感満載の群像劇になっていたと思います。

    ネタバレBOX

     例えば、緊張感漂う場面でも、不自然な登場をするヤクザの親分役の辻さんがこのままだと出番が少ないと言い、そんなのありかと言ったその子分役 嵯峨野を演じる粟野さん(文学座)に向かって「だってアングラなんだもの、新劇やないんやで」とさらっと言い、粟野さんが苦笑いするシーンなどは、いろいろなバックグラウンドをもつ役者さん達が集まるこの野外劇だからこそできるなかなか遊び心に溢れた場面だと思いました。
  • 満足度★★★★★

    思想の劇作術化:群像劇の可能性
    東憲司氏の思想(視線)が、椿組の群像劇の手法と混じり合い、
    あらたな劇作術が生まれている。見事なコラボ。

    物語演劇にも、このような可能性があるのだなと感じた。

    作品自体の満足度は☆4ですが、この劇作術に✩5。

    詳しくはネタバレで。

    ネタバレBOX

    物語を牽引している人物は数人いるのだが、
    その人物たちが、ヒロイン・ヒーローとして機能することはない。
    観客にカタルシスは与えないのだ。

    中心人物たちは、希望を掴むこともなく、無残に死んでいく。
    それも仰々しく死ぬというよりも、割と簡単に死んでいく。

    では、この物語の主人公は誰かというと、それは、その他大勢の人々。
    つまり、一般庶民、、、無名の民、、、群、、、、である。

    東憲司氏は、以前から、庶民に対しての視点を強く持っていたが、
    その視線が劇作術にまで反映されたことは、
    私の見た限りでは無かった。
    今作では、そんな劇作術が生まれている。

    物語演劇にこのような反転のさせ方があるのだなということに驚いた。
    物語構造を反転させていると共に、権力構造を反転させている。
    力を持った強い者が主人公なのではなく、
    力のない匿名の民が主人公であるという。

    ラストシーン近くでは、かつての築地小劇場などのプロレタリア演劇は、こういう感じだったのかなと思いながら見ていた。

    作品の類似という意味では全くなく、その思想の劇化というような部分で。
    また、それを観客が共有するというような意味でも。

    ある意味では、これこそまさにプロレタリア演劇!
    (主義主張のあるプロパガンダという意味では全くなく、権力構造を根本的に反転させている劇作術だという意味で。)







  • 満足度★★★★★

    期待通り
    椿組、夏の花園に、作演出、桟敷童子の東さんは、ピッタリだと思ったが、やはり素晴らしかった。
    現実の重圧に、押し潰されながらも、明日の輝きを信じられる、素敵な作品でした。
    総勢40人と大人数ならではの、迫力ある演出が、良かったです。

    ネタバレBOX

    ストップモーションのような演出も、良かった。

    野外ならではの、水を使った演出も、良かった。

    外の雑踏も、あの時代の廃墟らしく感じました。

    ラストは、圧巻でしたが、7・11のネオンだけが、邪魔でした。
  • 満足度★★★★

    夏の風物詩
    初日観劇!やっぱテント芝居はいいよね~勢いがあって引き込まれる♪歌あり、殺陣あり…で楽しい。しかもビール飲みながらの観劇が楽しいよね。

    ネタバレBOX

    ただ、作・演出が東憲司さんなので桟敷童子色になっていたのは承知の上の観劇!楽しめました(笑)

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