満足度★★★★
「どうしようもない」それでも生きる
舞台は第一次大戦後の大正、日本初の空冷式発動機を手がける弱小飛行機研究所の物語。
作品の感想は一言でいえば「どうしようもなさ」。人生のどうしようもなさ、時代のどうしようもなさ。とは言ってもけっして悲観的ではない。ポジティブな舞台だった。
飛行機乗りになりたいお嬢様。その飛行機乗りになっても虚しさを捨てきれない女。戦争で夫をなくした未亡人。開発している飛行機を戦争に利用されたくない元軍人などなど。
それぞれ人にはやりたいこと、やりたくないことがある。時代が味方をしてくれて、やりたいことができることもあるが、そっぽを向かれることは多い。現代は大正の昔より可能性を追求できる時代にはなっているが、やはりつまづくことはあり人間関係に悩み、人生の進む方向に悩む。
何かを選べば、何かと捨てることになる。それでも時代のうねりのなかで希望を見つけ決断して生きていくしかない。そういう「どうしようもない」ながらも強く生きる生命力を作品全体から感じた。
その風=大正浪漫飛行は技術立国の原点を教えてくれる
「大正浪漫」を地で、いや、空で行く物語だった。時代は大正8年(1919年)弱小小型飛行機研究所の、資本家、労働者階級の枠を超えた、「飛行機を戦争のための道具にしない!」熱い意欲を、重厚なドラマ性で描く。
今までの「大正浪漫」をモチーフとした舞台であれば、「運動家」を悲愴感のもつ「良い姿」で捉えることが多かった。また、その反対に、若い「海軍士官」を制服カラーのような「真っ白な」青年として捉えることも多かった。いずれも、両者へ明確な線引きを行い、「比較対象」から大正(昭和初期)の空気を再現したのである。前者は「軍国主義」「軍人」だったし、後者は「現代人」だろう。
満足度★★★★★
愛すべき飛行機バカたち
父と娘の物語、と聞いて父がもういない私は観劇を少し躊躇ったのだけど。そんな思いなんか、飛行機の飛ぶ音とともに吹っ飛ばしてくれた。何より所長の娘の真っ直ぐさが一途で可愛らしい。どんな邪魔が入ろうとも諦めない飛行機バカたち。熱く爽快な舞台。