満足度★★
夏目漱石を通して見る日本
夏目漱石の様々な小説のテクストをコラージュした作品で、表現したいことがあまり伝わってきませんでしたが、多様な台詞回しや視覚的な美しさが印象に残りました。
4人の役者がモノローグ的にコラージュされたテクストを語る形式で、物語性は希薄な展開でした。「東京」や「富士山」がキーワードとして度々現れ、文章の中の特定の人物を指す名詞や代名詞を発声せずに沈黙に置き換えていて、その間が訪れる度にそこに「私」や「日本人」という言葉をイメージさせられ、それについて考えさせられました。
日本をテーマにしつつ、『君が代』は用いずに、漱石の留学先のイギリスを連想させる『威風堂々第1番』を使っていたのがシニカルでした。
序盤は独特な表現に惹かれましたが、その後の展開に中弛みを感じました。中盤で床に下手奥から上手手前に線上に照らされていた所を、子供用の靴を手で動かして歩いている様に見せるラストが美しかったです。
ベニヤ板で塞がれた舞台奥の壁面の上手に4組の靴や下駄が立て掛けられ、客席のすぐ前には美術館等で見掛けるロープパーテーションポールが置かれた舞台美術が印象的でした。和洋折衷の衣装も美しかったです。