タンゴ・冬の終わりに 公演情報 タンゴ・冬の終わりに」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    民死主義時代の幻想と愛に未来はあるか?
     雪組を拝見。矛盾語法に満ちた清水 邦夫の脚本を、活きた舞台にするのは大変難しい作業だが、単に芸術上のノウハウや、そのテーマとしての愛や幻想を捉えて観客の目の前に提示しても、清水の描くシナリオの半分しか捉えていないように思う。

    ネタバレBOX

     言い換えれば、何故、清水の書く科白には、かくも矛盾に満ちた表現が多いのか? ということである。残念乍ら、今作ではその辺りは掬い取られていないように感じたのだ。ハッキリ言おう。清水は恐らく政治及び政治的なものに幻滅してしまった。それ故にこそ、愛だの、それに纏わる幻想だのに賭けてみようとしたのだ。然し、それには別次元の付帯要素があり、それ独自の「法則」によって極めて自然に語られるが故に、益々互いの原理の間に乖離を齎し、結果、矛盾語法で表すしかないようなアンヴィヴァレンツを生じたのだ。この、政治と愛、即ち政治と命の問題との間にある乖離をこそ、今作の底流を為すテーマとして捉え、そのメタ構造として今作で表現された風狂を重ね合わせると、より面白い舞台になる気がする。
     ところでタンゴを踊るシーンだが、群舞は兎も角、相対で踊る時には、キチンと男のリードとアドリブを表現し、女の息のあったコミットで表現して欲しかった。タンゴの特性が全然出ていない。和太鼓の使用は面白いが、インパクトのある分、使い方には注意が必要だろう。役者個々人に“狂”の定義を求めることも必要になってくるかも知れない。当然、演者自身の「言葉」でそれは定義されなければならない。それを要求するシナリオだからである。

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