『音の世界』 公演情報 『音の世界』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★★

    Aコースです。
    静まり返っている舞台。セリフ一つ一つが訴えかけている。こちらも真剣に対峙なければならい気持ちにさせられる。背筋をのばして壁にもたれかけることもなく見入った。
    夫人のワンピース、バッグ、靴が赤で、背景の黒と対比して映えていた。

  • 満足度★★★★

    大変美味しゅうございました
    1931年にラヂオドラマ向けに書かれたという作品だが
    男女の“思惑”とそれが“思わぬ方向へ転がる”展開が面白く
    当時最新機器であった「電話」が、不完全なコミュニケーションを助長するツールとして
    主役級の存在感を見せる。
    “見えないけど聞こえる”ことが、どれほど人の判断を狂わせるかを思い知らせてくれる。
    戯曲料理店「野良猫軒」での”試食会”ということでお代は無料、
    Aコースをいただいたが、斬新な素材選びと丁寧な作りで大変美味しゅうございました。

    ネタバレBOX

    横長のスタジオは、ドアを挟んで2つのホテルの部屋になっている。
    一つの部屋には年配の男と若い女、年は離れているが新婚17日目の夫婦。
    もう一つの部屋には、女を追って来た元恋人の若い男が滞在している。

    若い男が女の部屋に電話をかけ、女は夫を気にしてごまかしながら受け答えする。
    女に対する未練を断ち切れない若い男は「僕の決心はこうだ」と言って
    電話口で銃声を聞かせる。
    女は動揺するが、夫を外出させた後元恋人の部屋へ行き
    「そんなこったろうと思った」と笑う。
    そしてその場で夫に電話をかけ、
    「あたし、帰れないの。あなたに申し訳ない…」と謝罪し電話口で銃声を聞かせる。
    ただし、元恋人に向けて…。
    夫は「妻の芝居は可愛いもんだ」と笑って電話を切るが
    銃には実弾がこめられていた…。

    交換手に相手の名前を告げて繋いでもらい、
    耳にラッパの形の受話器を当て、本体の送話器に向かってしゃべるタイプの
    古風な電話器が存在感大。

    劣等感と不安を押し殺しながら妻の受け答えをちらちら見ている初老の男(益田喜晴)、
    目の前の男の反応をうかがいながら電話のやりとりを聞かせる女(進藤沙織)、
    そして女を呼びだすために銃声を聞かせるという手段をとった男(高橋正樹)、
    3人の思惑は相手より優位に立とうとした途端、ことごとく外れる。
    原因は“見えないけど聞こえる”新種のツール、電話だ。
    妙な機器を媒介に、息を殺して相手の声を待つ。
    この芝居では、ほとんどの場合側で会話を聞いている者がいるという状況で
    そのごまかし方やいら立ちからくる緊張感が見事に再現されていた。

    益田喜晴さん、今回は奇人変人(?)役ではなく、初老のせこい男を演じたが
    交換手や妻との短い受け答えがとても自然で、
    彼の社会的なバックグラウンドまでにじみ出るようだった。
    高橋正樹さん、昭和の始めのレトロなファッションが意外に似合って
    これまた未練がましい男を好演、視線に力があって切羽詰った感が伝わって来た。
    進藤沙織さん、3人の中で一番度胸のすわった女を演じたが、
    抑えた表情より、声の表現の豊かさでキャラクターを体現する人だ。
    したたかで相手を翻弄する女を声でたっぷり聴かせる。

    これがラヂオドラマだったらどんな演出で放送されただろう。
    少しテンポがゆっくりに感じたが、昭和初期の時間の流れを再現したせいか。
    80年後の今も変わらないのは男女の駆け引きと狡い女。
    当時の電話も信用するには危険な機器だが、携帯電話はその何倍も、
    たぶん危ない…。

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