満足度★★★★★
菊之助のお岩が出色
江戸時代、三代目菊五郎が当てたお家芸に挑む菊之助。
玉三郎、18代目勘三郎の初役も観ているが、いままで観た中で一番哀れさが勝ったお岩だったと思う、出色の出来だ。
この若さで役の性根をしっかりつかみ、的確に表現できている。
場数を踏んでいる最近の若手の強みだ。
しかし、本当に腹がたったのは、隣の男性客が遅れて途中入場し席に着くなり、バッグをガサゴソとまさぐり、驚くことに舞台をまったく観ずにその場で足の水虫のケアをは始めた。
それが終わると半ズボンをはいているので素肌の太ももを附けうちに合わせてバシバシ叩く。台詞まで大声で言う始末。
うるさくてかなわない。こういうのが新しい歌舞伎座の常連客なのか。私の世代には考えられない所業だ。
満足度★★★
髪の怖さが印象的な『四谷怪談』
有名な怪談の通し上演で、虚仮威しの怖さではない、人間の心の怖さが感じられる作品でした。
序幕は怖い要素はなく、男に騙された姉妹の姿がテンポ良く描かれていました。
二幕目では病気で弱っているお岩が薬と偽られて毒を飲み、醜い顔になって嘆く過程がじっくりと描かれていて、切なさと怖さが伝わって来ました。
三幕目は川辺で幽霊に遭遇するエピソードが描かれるものの冗長さを感じました。
大詰では伊右衛門がお岩との幸せに暮らす夢が、蛍を模した照明の中で幻想的に描かれ、お岩の幽霊が祟る様子を様々な仕掛けを用いた演出で描いた中盤が対照的に引き立っていました。
お岩が毒を送った相手を復讐しに向かう前に髪を前に垂らして櫛で梳くシーンや、魚を捕ろうとして銛を川に入れると髪の毛がまとわりついているシーンがとても不気味でした。
話が進むに従って次第に照明が暗くなっていき、歌舞伎では珍しい完全暗転があったのが印象的でした。
尾上菊之助はさんは3役を時には早替わりを用いつつ演じ、見応えがありました。お岩の恨み節の時の倍音が良く響いた声色が魅力的でした。
中村小山三さんは92歳という年齢を感じさせない溌剌とした演技で楽しかったです。
満足度★★★★
こってりと面白い、鶴屋南北の名作
主君の仇を討つ『忠臣蔵』の裏ストーリーという設定で、さらに「仇を討つ」(と復讐)が、キーワードとなる怪談話。
染五郎が民谷伊右衛門を演じ、菊之助がお岩を含め3人を演じる。
満足度★★
久々怖いお岩でしたが…
全体的には、深みのない四谷怪談でした。
菊之助さんは、お岩を丁寧に演じていて、その上、身震いするほど、恨みを前面に押し出した怖さのあるお岩でしたが…。
この演目は、私の個人的な思いからすると、主役二人と同じくらい、直助と宅悦、お梅を誰が演じるかが重要なんですけれど、今回満足したのは、お梅だけでした。
30年ぶりという「蛍狩」の場面、30年前は子育て真っ最中で、しばらく歌舞伎は御無沙汰の時期で、今回初めて観たのですが、染五郎さんと菊之助さんの踊りはため息が出るほど美しかったものの、どうもいつも見慣れている舞台進行と違って、違和感を感じてしまいました。
個人的好みから言えば、直助とお袖の夫婦の場面の方をむしろ観たかった気がします。
満足度★★★★
怖っ!
怪談どころか、ちょっと間違えるとたちまち大爆笑喜劇になってしまう、結構難しい演目の「東海道四谷怪談」。今回は菊之助がきっちり怖がらせてくれて大満足。ぞっとなるほど美しく、哀れで、怖いお岩だった。昼の部の「岩藤」も宙乗りやら骨寄せやら面白い部分もあるのだが、それが全体の面白さにつながっていない。元々の話が分かりにくいかな・・・