七月花形歌舞伎 公演情報 七月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.6
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  • 満足度★★★★★

    菊之助のお岩が出色
    江戸時代、三代目菊五郎が当てたお家芸に挑む菊之助。

    玉三郎、18代目勘三郎の初役も観ているが、いままで観た中で一番哀れさが勝ったお岩だったと思う、出色の出来だ。

    この若さで役の性根をしっかりつかみ、的確に表現できている。

    場数を踏んでいる最近の若手の強みだ。

    しかし、本当に腹がたったのは、隣の男性客が遅れて途中入場し席に着くなり、バッグをガサゴソとまさぐり、驚くことに舞台をまったく観ずにその場で足の水虫のケアをは始めた。

    それが終わると半ズボンをはいているので素肌の太ももを附けうちに合わせてバシバシ叩く。台詞まで大声で言う始末。

    うるさくてかなわない。こういうのが新しい歌舞伎座の常連客なのか。私の世代には考えられない所業だ。

    ネタバレBOX

    先ごろ亡くなった勘三郎の初演の際に問題となった「お岩が蚊帳にひきずられる場面で笑いがおきる」こと。

    今回も注目したが、やはり笑いが起きた。

    いまの客はコントをよく見ているせいか、動きで笑ってしまうのだろう。

    となると、この演出はそろそろ考えるべきかもしれない。

    17代目の勘三郎が演じた際は、老体と言うこともあり、長く引きずられる演出ではなかったため、笑いは起きなかった。

    小仏小平に笑いが起きるのも、本来はおかしいのだ。

    「薬くだせえ」は哀れさを感じるが、笑わせる場面ではない。

    今回、やけに笑う客が多かったのには驚いた。

    染五郎も父祖の当たり役伊右衛門をそつなくこなす。

    松緑の直助権兵衛に当代の猿翁初演の直助を思い出した。武智鉄二氏が「世話物の芝居とは違う。時代劇のチンピラ」と酷評したが、私はこのときの直助が好きである。

    今回の松緑も賛否あるかもしれないが、わかりやすい演じ方である。

    宅悦の市蔵も子役時代から観ているので感慨深い。昨今、宅悦役者がけなされるjことは少ないが昔は点が辛かった。
    40年前の故・坂東弥五郎の宅悦は今回の市蔵と孫色はなかったが、酷評された。

    お袖の梅枝は昼の部の再岩藤でもおつゆを演じ、父の時蔵の演じた役を演じる機会が増えた。

    この若女形も父親の初役の時よりは数段巧い。

    今回はカットされた三角屋敷は、隠亡堀の伏線がつながる大事な場面だが、カットされることが多い。

    お岩の櫛を直助が拾って持ち帰り、櫛を洗う盥の中から幽霊の手が伸びるなど怪談らしい演出があり、

    お袖が直助の身代わりに与茂七に討たれ、実は二人が兄妹とわかり、畜生道と主家への不忠から直助が切腹するなど

    平家物語の袈裟と盛遠の趣向が仕込まれていたり、観どころが多いので残念だ。

    今回は三角屋敷の代わりに女形がお岩を演じる場合、常道の夢の場が出る。

    女形は与茂七を替わらないので、夢の場かだんまりの茶屋女を替わる。

    菊之助は与茂七を替わるうえ、夢の場も演じる。

    役者の見た目の美しさで楽しませる演出で、これはこれでよかった。

    また、昨今は上演時間がますます短くなっているので、三角屋敷の上演はなかなか望めなくなっている。




  • 満足度★★★

    髪の怖さが印象的な『四谷怪談』
    有名な怪談の通し上演で、虚仮威しの怖さではない、人間の心の怖さが感じられる作品でした。

    序幕は怖い要素はなく、男に騙された姉妹の姿がテンポ良く描かれていました。
    二幕目では病気で弱っているお岩が薬と偽られて毒を飲み、醜い顔になって嘆く過程がじっくりと描かれていて、切なさと怖さが伝わって来ました。
    三幕目は川辺で幽霊に遭遇するエピソードが描かれるものの冗長さを感じました。
    大詰では伊右衛門がお岩との幸せに暮らす夢が、蛍を模した照明の中で幻想的に描かれ、お岩の幽霊が祟る様子を様々な仕掛けを用いた演出で描いた中盤が対照的に引き立っていました。

    お岩が毒を送った相手を復讐しに向かう前に髪を前に垂らして櫛で梳くシーンや、魚を捕ろうとして銛を川に入れると髪の毛がまとわりついているシーンがとても不気味でした。
    話が進むに従って次第に照明が暗くなっていき、歌舞伎では珍しい完全暗転があったのが印象的でした。

    尾上菊之助はさんは3役を時には早替わりを用いつつ演じ、見応えがありました。お岩の恨み節の時の倍音が良く響いた声色が魅力的でした。
    中村小山三さんは92歳という年齢を感じさせない溌剌とした演技で楽しかったです。

  • 満足度★★★★

    こってりと面白い、鶴屋南北の名作
    主君の仇を討つ『忠臣蔵』の裏ストーリーという設定で、さらに「仇を討つ」(と復讐)が、キーワードとなる怪談話。

    染五郎が民谷伊右衛門を演じ、菊之助がお岩を含め3人を演じる。

    ネタバレBOX

    染五郎が民谷伊右衛門を演じ、菊之助がお岩を含め3人を演じる。

    お岩と無理矢理実家に連れ戻され、お岩の父親を説得してよりを戻そうとする伊右衛門だったはずなのに、産後の肥立ちが悪いぐらいでお岩対して冷たい態度をなぜとるのか、というところがイマイチ伝わってこない。
    もともと伊右衛門が悪い男だということはわかるのだから、いかにも見た目はいいが悪い男であるように、最初から演じてほしかった。
    したがって、伊右衛門を見初めた隣家の伊藤家の策略を、これ幸いと乗ってみせる悪ぶりも、もっとほしい。

    染五郎の伊右衛門が、さらにどす黒く見えてこないのが残念。
    名台詞「首が飛んでも動いてみせるわ」は、力が入り、いいなとは思ったのだが、全編このエネルギーを悪いエネルギーとして見せてくれていたら言うことはなかった。
    もちろん、お岩を立てるという意味もあろうが、伊右衛門がくっきりしないとお岩も引き立たない。

    対して、お岩を演じた菊之助は良かった。毒と知らずに薬を飲む場面は、鳴り物はまったくなく、白湯を取りに行き、大切な薬を大事そうに丁寧に飲むという一連の仕草は、無音で長い場面にもかかわらず、観客は固唾を飲んで見ていた。
    それほど見事だった。
    毒を飲まされた後の髪をすく場面もよかったし、控え目な貞淑さもよく、伊右衛門の非道さがくっきりして見えた。子どもを思う母親の心情もいい。
    また、菊之助が三役演じるうちのひとつ、佐藤与茂七のすっとした感じもなかなかだ。

    出番は少ないものの、直助権兵衛を演じた松緑の台詞のタイミングの良さは気持ちが良かった。

    戸板返し、仏壇返し、幽霊の宙乗り、菊之助の早変わりなど、見せ場が多く4時間超がまったくだれない。
    幽霊が出てきてから、もっとこってりと怖がらせるのかと思ったが、思ったほどでもなかった。

    歌舞伎座では30年ぶりに演じられるという、大詰の「滝野川蛍狩の場」は幻想的で、「本所砂村隠亡堀の場」と「本所蛇山庵室の場」という、お岩が祟るシーンの間にあり、とてもいいクッションになっていたと思う。これはやはりあったほうがいい場ではないだろうか。
  • 満足度★★

    久々怖いお岩でしたが…
    全体的には、深みのない四谷怪談でした。

    菊之助さんは、お岩を丁寧に演じていて、その上、身震いするほど、恨みを前面に押し出した怖さのあるお岩でしたが…。

    この演目は、私の個人的な思いからすると、主役二人と同じくらい、直助と宅悦、お梅を誰が演じるかが重要なんですけれど、今回満足したのは、お梅だけでした。

    30年ぶりという「蛍狩」の場面、30年前は子育て真っ最中で、しばらく歌舞伎は御無沙汰の時期で、今回初めて観たのですが、染五郎さんと菊之助さんの踊りはため息が出るほど美しかったものの、どうもいつも見慣れている舞台進行と違って、違和感を感じてしまいました。
    個人的好みから言えば、直助とお袖の夫婦の場面の方をむしろ観たかった気がします。

    ネタバレBOX

    直助の松緑さんの登場の仕方が、どうも現代劇風で、気になりました。松緑さんは、日舞の方は、周囲にきっちり基本を教えて下さる方がいらしたので、しっかりしているのですが、歌舞伎の基本を手取り足取り教えて下さる方はいらっしゃらないと思うので、無理からぬ気はするのですが、先輩役者さんが次々亡くなられた今、より一層、歌舞伎役者として、精進される環境が困難そうで、心配になります。

    染五郎さんのように、叔父様がきっちり教えて下さる方はお幸せだなと改めて思いました。

    それにしても、明治座の時にも驚きましたが、今回の舞台でも、大詰で、「高麗屋!」の掛け声ばかりが聞こえ、誰も「音羽屋!」と言わないのには、驚愕しました。どちらかと言えば、主役は菊之助さんの方だと思うのですが…。
  • 満足度★★★★

    怖っ!
    怪談どころか、ちょっと間違えるとたちまち大爆笑喜劇になってしまう、結構難しい演目の「東海道四谷怪談」。今回は菊之助がきっちり怖がらせてくれて大満足。ぞっとなるほど美しく、哀れで、怖いお岩だった。昼の部の「岩藤」も宙乗りやら骨寄せやら面白い部分もあるのだが、それが全体の面白さにつながっていない。元々の話が分かりにくいかな・・・

    ネタバレBOX

    とにかく体形が太めの人はお岩をやらないように!それだけで喜劇になっちゃうから~

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