「刹那なき人物像」、今こそ知ってほしい
100年前の「大逆事件」を語る。
その初めにして代表格といってよい3時間であり、ただただ観客は ひれ伏すしかない。
「太平洋食堂」という名をタイトルに付けるが、明治の既得権益者、革新主義者といった人物が食事を囲む風景は 冒頭に眺めるだけである。
西園寺内閣 前後の革新主義者の奮闘と、それを巡る社会、既得権益との関係性、「大逆事件」に至る機運を提供してくれる。
「3時間」は、少しずつ「消化」するが、コース料理を食べている感覚ではなかった。
冒頭ではN市の“各界代表”にサラダ、パン、のコース料理がテーブルへ出される。しかし、“各界代表”を不快に感じる既得権利者(町議会議長ら)と“バンザイ!”を激怒するドリトルの衝突など があり、前者は退席してしまった。メインディナーは、客人の口に入ることはなかった。
その食堂光景と比較すれば、舞台は 和洋折衷の どんぶり で、均質に味わえる。
「味噌汁にカレーのスパイス」を隠し味に加えたような、濃厚な風味だった。
ただ、濃厚とはいっても、決して脂ぎっとりの 豚肉ではなく、お腹にも心にも染みる、そんな食事=作品ではないか。
私が 印象的だったのは、「刹那なき反骨主義者」の象だった。
満足度★★★
言葉が溢れた舞台
自分がタイトルからイメージしたのは、もっと「食堂」部分がふくらんだものだったのかもしれない。だからちょっと期待したものと違ってました。
実際は、ずっと言葉が続いていた。
すんごく体力のいる芝居だと思いました。役者さんも演出の方もみんな。
関わる方全ての熱意はとても感じました。
役者さんはみんなよかったけど、主役の間宮さん、僧の吉村さんがとくに良かった。
満足度★★★★
もっと観客の想像力を信じて!
そして自分の力を信じよう!そうすればどこを削ればいいか見えてくると思う。どうにも語りすぎが気になった。特に投獄されてからは「余計じゃないの?」と思ったのは、9時半すぎて疲れてきたからだけではないと思う。でも、とても力のある、人を引き付ける芝居だった。
満足度★★★★★
この作品の位置
今、戦への狼煙が焚かれ、反対する者には、恫喝と弾圧、民衆には嘘と分断と相克、更には共謀罪の成立を目指す画策が着々と進められる中で、この作品の上演は大きな意味を持つ。(追記後送)
満足度★★★★
現代にも続いてる物語でした
だって観客層が日頃目にしない高齢の男性多かったし、
戦争ものや特攻ものと同じような感じを客席から受けました。
きっちり描くのは素晴らしいのだが・・・。
10分休み入れての3時間はー、長いです。
満足度★★★★★
脚本が素晴らしい
正直、評価が難しいです。(★5は脚本に対するものです)
優れた脚本(言葉)があり、それを演出・演技で舞台化していくという極めて古典的(新劇的)な在り方の芝居。
これは、脚本自体に依るものか、演出や演技に依るものかはわかりませんが、役者の身体や演技よりも、言葉が舞台の中心にある。舞台は言葉で満たされている。
そういう芝居が(も)好きだ、という人にはとてもお薦めですが、
個人的には、3時間の芝居を、言葉に意識を集中させ続けるのは辛かったです。
ですが、逆に言えば、それだけ優れた脚本、言葉の強さであったという証拠。
これだけの強い批評意識を持って、歴史モノを再構築できる力量は凄いことだと思いました。それも、過去を扱いながら、現在の社会を問うている。憲法が改定されるかもしれない、国防軍さえ作られるかもしれない今日の社会状況下で、この作品が上演されることの意味は大きい。このような批評意識の強い作家は現代では稀有であり、とても重要な存在だと思います。
また、女性の脚本家だけあって、女性に向ける視線、特に主人公の妻〈大星ゑい〉への視線が強く印象に残りました。私の中では、彼女が主人公なんじゃないかとさえ思われる位に。その点も素晴らしかった。
文学作品のように舞台を(脚本を)考えるなら、とても力があり、本当に素晴らしい作品だと思いました。
ですが、もう一方で、ならば文学として脚本を読めば良いのではないかとも思ってしまいました。
ただ、私が観たのが「プレビュー公演」だったために、舞台としての強度が完全には高まっていなかっただけなのかもしれません。
満足度★★★★
難しい題材に挑んだ脚本家の志に拍手
座・高円寺で『太平洋食堂』の初日を観てきた。
難しい題材に挑んだ脚本家の志に拍手。
大逆事件が題材で、洋行帰りの医者が「金持ちも貧乏人も議員も被差別部落の人も、万人がともに囲む食卓」を作ろうとした。
日露戦争の勝利に沸き立つ時代に、逆行する発言へのバッシングは今も同じだとつくづく感じた。
満足度★★★★
まず、明治時代の大逆事件の犠牲者への
オマージュという形でNPOや世話人が動き、この劇が実現したことに驚きと感動。また多くの人が見に来ていたことにも驚きを禁じ得なかった。それから開演ブザーで劇が始まったのも何というか・・・・・初めての体験でした。実は近代史というのは一般人にとって割と未知なもの。学校で時間切れになってしまって習わない場合が多い。なので、始めのうち時代感が掴めず苦労した。演出は超正統派の真っ向勝負なので、よけいしんどい。音楽や効果音がミニマムなのも、それに拍車をかけている。小道具や衣装が丁寧で好感を抱かせますが、3時間の長丁場なのでもう少し音楽などで時代の空気や各シーンに変化をつけてくれればリラックスして見られたかも。