「刹那なき人物像」、今こそ知ってほしい
100年前の「大逆事件」を語る。
その初めにして代表格といってよい3時間であり、ただただ観客は ひれ伏すしかない。
「太平洋食堂」という名をタイトルに付けるが、明治の既得権益者、革新主義者といった人物が食事を囲む風景は 冒頭に眺めるだけである。
西園寺内閣 前後の革新主義者の奮闘と、それを巡る社会、既得権益との関係性、「大逆事件」に至る機運を提供してくれる。
「3時間」は、少しずつ「消化」するが、コース料理を食べている感覚ではなかった。
冒頭ではN市の“各界代表”にサラダ、パン、のコース料理がテーブルへ出される。しかし、“各界代表”を不快に感じる既得権利者(町議会議長ら)と“バンザイ!”を激怒するドリトルの衝突など があり、前者は退席してしまった。メインディナーは、客人の口に入ることはなかった。
その食堂光景と比較すれば、舞台は 和洋折衷の どんぶり で、均質に味わえる。
「味噌汁にカレーのスパイス」を隠し味に加えたような、濃厚な風味だった。
ただ、濃厚とはいっても、決して脂ぎっとりの 豚肉ではなく、お腹にも心にも染みる、そんな食事=作品ではないか。
私が 印象的だったのは、「刹那なき反骨主義者」の象だった。