城 公演情報 」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    わかる不条理劇
    不条理劇だけど,とてもとてもわかる不条理劇でした。退屈はしません。いろいろなことを想像しながら,次の展開がどうなるのか話に引き込まれていきます。役者さんは芝居上手だし,あと,舞台美術,音楽,結構好みです。3時間と結構しんどい観劇でしたが,観劇できて良かったと思います。

  • 満足度★★★

    奇妙な社会のシステム
    城に行こうとするのに、奇妙な権力や社会システムに阻まれて、いつになってもそこに辿り着けない測量士の様子を描いた小説が、身体表現を強調した演出で舞台化されていて、悪夢的でありつつ滑稽な雰囲気がある作品でした。

    断片的に連なるシーンを通じて同じ所をぐるぐると廻っているかのような話で、あまり盛り上がりがないので、ドラマを追い掛けるというよりかは、各シーンの雰囲気に浸って楽しむタイプの作品だと思いました。物語の階層とは別の階層に存在しながら主人公が翻弄される様子を眺める黒いロングコートを着た人々が象徴的で、強く印象に残りました。

    感情をストレートに乗せない棒読みっぽい台詞回しは、最初は違和感を覚えましたが、表面的には成り立っていてもどこかすれ違っているやりとりに適していると感じました。
    『城』のテクストとは別に、カフカによるアフォリズムが引用されていて、暗転時に奥の壁に映し出され、シニカルでかつ考えさせられる内容で作品に深みを加えていましたが、演技がその文章に負けているように感じられる時もあったのが残念でした。

    脱力感のある動きや独特のステップ等、振付の井手茂太さんのテイストが色濃く出ていたダンスシーンが物語の世界観に合っていて良かったです。
    ヴァイオリンやクラリネットを中心にしたジプシー風の音楽は、曲自体は魅力的でしたがBGMを多用し過ぎていて、ここぞという時の効果が弱まっていると思いました。

  • 満足度★★★★

    軽快な音楽もあり、
    長帳場の不思議な話ながら退屈はしませんでした。

    ネタバレBOX

    全体としては効率の悪いお役所仕事を皮肉ったような話に思えました。城で働いている人たちは社畜のような感じで、その社畜たちによる稟議書作成ダンスともいうべきパフォーマンスは、上司と部下の関係、同僚間の出世争いのようなものがとても良く表現されていると思いました。

    地元に妻子がありながら何のためらいもなく結婚しようとする測量士K、不思議な行動ですが情報が伝わらないので権力者に接近するためには女に手を出したり何でもするということなんでしょうか。

    学校の小使さんは教室で寝起きするものだったのかもしれない、当時の事情を窺い知ることができました。

    時々背景の壁に映されるカフカの名言はさっぱり意味不明でした。場つなぎの余興のようなものですから、見切れになったりして見づらかったこともありますが、見ても見なくてもどちらでもいいものでした。それでも、「綱渡りの綱は地面すれすれに張ってある、まるで人をつまずかせるために」みたいな文章には、高いと危険、低いと邪魔、うーんと唸らされました。

    ところで、時代は女性が長いズロースのようなものをはいている頃の設定です。それなのにKの靴底には赤いマークが付いていてもう最悪、ゲンナリしてしまいました。
  • 満足度★★★★

    思ったよりはるかに観やすく美味
    カフカだし、原作ががっつりボリュームがあることも知っているし、
    入場時に掲示されていた上演時間もけっこうなものだったので、
    不条理な難解さとのガチ対決の覚悟を決めて観はじめたら、
    意外なことに、これが、シーンごとにとてもわかりやすくおもしろい・・・。
    良い意味で裏切られました。

    観る側を離さない冴えやウィットもいろいろにあって、
    まるっと最後まで観切ってしまいました。

    ネタバレBOX

    舞台がいろいろにくっきりと綺麗・・・。
    役者の所作や絵面がとても映える美術。
    シーンの区切りもよくて、
    観る側をひとつの時間で飽きさせない。
    シーンの間に挿入される文字での説明にも、
    物語を進めたり、示唆があったり、どこか哲学的でもあったりと、
    一様でない表現のバリエーションがあって・・・。
    観る側をやわらかく揺さぶり、
    物語の次へと観る側を引き込んでいく。

    場の色の組み上げも実に多彩、
    会話でしっかりと作ったり、
    動きで繋いだり、
    衝動的な愛情の表現に身体をしなやかにさらけ出したり・・・。
    それらが、時に強く、すっと流れ、かとおもえば留まり、
    行き場をなくし、解き放たれて・・・、
    様々な変化となって観る側を繋ぎとめ顛末を追わせる。

    カフカ=不条理というイメージでしたが、
    作品に描かれたものに不条理さを感じることはあまりなく、
    その一方で、
    様々な価値観の頑迷さやご都合主義や
    人々の狡さやあからさまさを、
    シニカルに眺めるような視座の作り方があって。
    役者達もキャラクターを舞台の色に染めるのではなく
    むしろその色を踏み台にして、
    ロールのありようを瑞々し人間臭く織り上げる
    踏み出しに捉われる。

    舞台美術も実に秀逸、
    役者も安定していて、
    歩く姿から
    織り上げられるダンス的な動きでのシーンにまで
    様々に織り込まれたニュアンスと
    観る側をひとつの印象に立ち止まらせない切れと
    鮮やかさと美しさがあって。

    休憩込みとはいえ、密度をしっかりと持った舞台を
    3時間近く観続けると、
    流石に少し消耗はしましたが、
    でも体感的に時間を長いと感じることもなく、
    重く堅苦しい印象もなく、
    飽くことなく、城とそれを取り巻くものと測量士のなりゆきを
    追うことができました。

    いろんな寓意や風刺が込められた作品だと思うし、
    それを全て受け取ることができたかというと
    少々怪しいのですが、
    でも、その中に、
    登場人物達がそれぞれに処世をし、
    生きていく生々しさも深く印象に残って。

    とても、面白かったです。



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