満足度★★★
奇妙な社会のシステム
城に行こうとするのに、奇妙な権力や社会システムに阻まれて、いつになってもそこに辿り着けない測量士の様子を描いた小説が、身体表現を強調した演出で舞台化されていて、悪夢的でありつつ滑稽な雰囲気がある作品でした。
断片的に連なるシーンを通じて同じ所をぐるぐると廻っているかのような話で、あまり盛り上がりがないので、ドラマを追い掛けるというよりかは、各シーンの雰囲気に浸って楽しむタイプの作品だと思いました。物語の階層とは別の階層に存在しながら主人公が翻弄される様子を眺める黒いロングコートを着た人々が象徴的で、強く印象に残りました。
感情をストレートに乗せない棒読みっぽい台詞回しは、最初は違和感を覚えましたが、表面的には成り立っていてもどこかすれ違っているやりとりに適していると感じました。
『城』のテクストとは別に、カフカによるアフォリズムが引用されていて、暗転時に奥の壁に映し出され、シニカルでかつ考えさせられる内容で作品に深みを加えていましたが、演技がその文章に負けているように感じられる時もあったのが残念でした。
脱力感のある動きや独特のステップ等、振付の井手茂太さんのテイストが色濃く出ていたダンスシーンが物語の世界観に合っていて良かったです。
ヴァイオリンやクラリネットを中心にしたジプシー風の音楽は、曲自体は魅力的でしたがBGMを多用し過ぎていて、ここぞという時の効果が弱まっていると思いました。