公演情報
「海の凹凸」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2026/03/08 (日) 14:00
座席1階
俳優座に書き下ろした劇作の自劇団による再演。この作品自体は初めて見るが、水俣を扱っていても患者からは一線を画して大学の教員らによる講座運営が舞台の中心になっている。
丁寧な取材で定評のある詩森ろばらしい、細部にまでこだわった会話劇が展開する。水俣病が歴史の中に押しやられ風化していく中で、水俣を研究し、その事実を伝えていくことがいかに困難になりつつあるかを痛感させられる。冒頭、日本は公害が起きにくい地勢にありながらなぜ公害が繰り返されたのかと問いかけられるが、その答えは劇中で明確に提示される。
個人的に少し物足りなかったのは、その講座がどんなふうに行われたのか具体的な場面がなかったこと。患者の声がストレートに聞かれなかったことも欲求不満のタネだった。しかし、逆に言えばそれらに手を広げなかったことで、物語がシャープになってわかりやすかったと言えるだろうか。
竹下景子の存在感はさすがだった。道学先生のかんのひとみが教育者の役で登場したのは興味深い。役者としての幅の広さを感じてとてもよかった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても高い強度を持った作品。
水俣病のことを置きつつも、人間のエゴみとエグみが描かれる。その辺りの筆の運びは見事としか言いようがない。演者の演技が若干ムラがあったのが少し残念。
実演鑑賞
満足度★★★
初演の俳優座で岩崎加根子さんが演った石牟礼(いしむれ)道子さんをモデルにした役を竹下景子さんが演ずる。竹下景子さん72歳、未だ変わらぬアイドルのような輝きと可愛らしさは観客を唖然とさせる。1969年に出版された石牟礼道子の『苦海浄土―わが水俣病』はそれに触れた者達の人生を大幅に変えたルポルタージュ小説。大企業の垂れ流す公害と地域住民の受けた生涯に渡る地獄を宗教的叙情詩にまで高めた文学。
杉木隆幸氏が演じた役のモデルは宇井純氏。東京大学都市工学科衛生工学コース助手の宇井純氏は公開自主講座「公害原論」を1970年より開講。実名で水俣病を告発した為に出世の道は閉ざされ、万年助手のまま冷遇された。(1986年、沖縄大学法経学部教授に招聘されるまで21年間)。
川田希さんが演じた役のモデルは加藤タケ子さん。元ほっとはうす施設長、現「きぼう・未来・水俣」代表理事。
1984年、横浜で市民学習会を開催している川田希さんはドキュメンタリー映画『水俣』(土本典昭監督)のフィルムを無償で貸してくれるという印刷所を訪れる。そこでは東大助手の杉木隆幸氏が一般市民を相手に公害をテーマにした公開自主講座を開いていた。場所を提供し印刷所に寝泊まりまでしてそれを支援する西原誠吾氏。丁度、『苦海浄土』の著者である作家(竹下景子さん)が上京するとの事でそれに参加してみる川田希さん。講座に集う者達の情熱と公害を必要悪と黙諾する日本社会の欺瞞を知り、のめり込んでいく。
かんのひとみさんは膝上ミニスカートのいつもと違うキャラクター。
西原誠吾氏の奥さん役の荻野友里さんが綺麗だった。もう少し物語に組み込んでも良かったと思う。
遅発性水俣病という、ある程度歳を取ってから発症する人々が多数いる。それを水俣病とは認可しない行政との闘争。自分は関係ないと思って生きてきた人間がある日突然発症し当事者になる絶望。
是非観に行って頂きたい。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2026/02/27 (金) 19:00
実話ベースのフィクションを手慣れた役者陣が丁寧に上演する。(3分押し)126分。
作・演出で主宰の詩森ろばが俳優座に書き下ろして2017年に上演された作品を自劇団での上演だが、俳優座の舞台は観てない。水俣病を始めとする公害問題の講義で知られる宇井純氏と取り巻く人々のあれこれを描く。水俣病の問題を扱いつつ、それに取り込まれ悩む人々の抱える人間関係が描かれる。それぞれの「正しさ」があり、それぞれの道を選ぶが、それで幸福になるのか、と言えば、そうではないのだな、という、いわば当たり前の出来事が丁寧に描かれる。いつもと違ってエンターテインメント要素が少ないのは、俳優座へ書き下ろしたことが影響しているか。初日のせいなのか、セリフに「滞り」みたいなのがあったように感じた。軸になる女性を演じた川田希の佇まいが良い。