やわらかいヒビ【ご来場ありがとうございました!!】 公演情報 やわらかいヒビ【ご来場ありがとうございました!!】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★

    生まれ変わった「やわらかいヒビ」
    本作品は、2010年に三鷹市芸術文化センター「星のホール」で
    初演されたものの再演となる、劇団の代表作であり、また初の
    シアタートラム進出作品でもあります。

    私は2年前の初演も観ているのですが、当時相当の衝撃を受け、
    以来、「カムヰヤッセン」という劇団名が脳裏に刻まれるなど、
    本当に想い出深い作品です。今回の再演でも変わりません。

    むしろ、ある部分では、再演の方が深く切り込んでいるかもしれない。

    ネタバレBOX

    本作品『やわらかいヒビ』ですが、

    舞台は近未来の日本。そこでは数々の社会問題に対応する為に
    各分野の頭脳を集めた施設「アカデミー」があり、主人公、牧の妻、
    上谷はその中でも圧倒的な才能を発揮し、空間輸送用ブラックホール
    開発に日々精魂を傾けていた。

    ところが、本人の研究以外に周囲を顧みる事の一切無い性格や、
    妬みから、同僚の計略でアカデミーを追放された上谷の体に、
    原因不明の不調が起こる…

    といったもの。ジャンルでいうと…一種のディストピアSFですね。

    初演では、主演の板倉チヒロの絶叫し、時には鼻水涙を
    まき散らしながら泣き叫ぶ渾身の演技、

    裏切り、妬み、嘘、偽善といった負の感情・要素が一体で
    襲いかかってくる、ラストの破局に向かって突き進んでいく、
    一切の希望無しの絶望的なストーリー展開、

    そしてその悲しみと余りの美しさが一部で「伝説」になっている
    ラストシーンが大いに話題を集めた作品なのですが、

    今回、再演に当たって、大幅に脚本が直されています。
    重要な役割を果たす人物も新たに加えられて、作者の
    言う通り、「まったく別の作品」に生まれ変わりましたね。
    劇団員も入れ替わって、役者も大幅に替わっています。

    観ていて感じたのが、この劇団特有の人間の酷さ、残酷さ、
    非情さを示すような台詞、演出、展開は書き改められて
    よりトラムに相応しい「広がり」を覚える作品になったな、と。
    初演では確か用いられる事のなかった音楽が、ここでは
    より深く感情を揺さぶる効果をもたらしています。

    夫婦の息子、慧吉と牧の関西弁を介してのやり取りが
    コミカルで、緊迫感が大分緩和されているのもあるけど
    初演ではほぼ無かった、「まだ見ぬ未来への可能性」を
    今回は強く感じられるようになってて。

    劇中、牧と上谷、二人の夫婦のきずなが問われる場面が
    あるのですが、初演では、それは先に待ち受ける悲劇を
    より強める効果にしかなっていなかった気がします。

    今作では、初演のエモーショナルさはそのままに、一層
    台詞が身に入って来る感じ。

    アカデミーを追放されて絶望する科学者の妻に向かって、
    牧が言った「m+1の公式はmが0なら成り立たない。+1は
    mという今があるからこそ、出来るんだ」「あなたは…俺より
    頭が良いんだから理解出来るはずだ」と必死に訴える、
    あの場面、

    初演では全然来なかったけど、今回は目頭が痛くなりました。

    伝説のラストシーンは今回削除され、より未来の希望を
    感じさせる終わり方になっていました。ここは賛否両論
    あると思いますが、初演のはどうにもならない悲劇の上に
    咲いた、美しい一輪の華のようなものなので、

    より「人間を、未来の可能性を信頼する」ようになった、
    今回の上演では無くて良かったのかもしれません。

    最後に、本作は本当に傑作で、シアタートラムも良い劇場です。
    カムヰヤッセンが現在激推しの劇団であることを差し置いても
    この作品は観て損が無いと、私は確信を持って言えますね。
  • 満足度★★★★

    ネクストの定義
    演劇自体はしっかりとしていて、序盤の入り、話の起承や展開など、観るべきポイントはあるのですが、それにしてもネクストとしてはベテランに寄り過ぎてない?
    もう一つ二つ若い劇団を掘り起こして欲しいなぁー

  • 満足度★★★★

    「今」の証明
    終わったからネタばれでもいいですよね。
    数学的帰納法の1の証明を人生にあてはめて、「僕たちは今を証明しないで先のことを考える。保険にも入るし、ローンも組む」というあたりの会話がよかったです。私自身の「今の証明」には何があるかと、帰り道みち考えさせられました。
    こういったお芝居を見に行くことも、今の証明ですね。

    ただし、泣かされはしませんでした。誰にも感情移入できず(笑)
    どっちかというとロジックな芝居だと思いました。

  • 満足度★★★

    初演が素晴らしすぎたのか
    大きな舞台をうまく使い、多くの登場人物を活かしていた。混沌の中にも整然とした物語で、清涼感を感じさせてくれた。
    しかし三鷹で見たときのは高ぶる感動は最後まで沸きあがってこなかった

  • 満足度★★★

    スッキリした印象の舞台。
    役者さんたちの熱演が素晴らしかった。

  • 満足度★★★★

    観劇してきたぞ
    という感じ。

    素敵なお芝居でした。

    板倉さんの熱演には
    心打たれるものがありました。

    しかしながら、口コミを見て
    泣けるとのことだったので
    急遽観に伺うことにしたものの、
    残念ながら私には刺さらなかったです。

    何というか、
    全体的に軽かったように思いました。
    上谷・牧の夫婦(家族)だけが濃くて
    他は取って付けたような。

    2時間にするために付けたような
    そんな印象を受けました。

    でも、楽しかったです。

  • 満足度★★★★

    嫌なところをついてくる
    カムヰの話はいつも嫌なところをついてくる。

    ストレートに、でもそんなに直球すぎない感じでの風刺というかイヤミというか。
    今回も結構それが聞いていた。

    久しぶりに数学的帰納法を思い出した。

    ネタバレBOX

    1の証明はぐっときた。

    もっと、「理想的」に描いている方が好きだけど、
    これがカムヰで、嫌いじゃない。
  • 満足度★★★★★

    「1の証明」
    世田谷パブリックシアターが
    “未来を担う若手演劇人の発掘と育成”を目的として企画する
    「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」。
    今年は「カムヰヤッセン」と「演劇集団 砂地」の2団体が選ばれた。

    そのうちのカムヰヤッセン 「やわらかいヒビ」を観る。
    シアタートラムの高さのある空間を活かした舞台の上
    巨大組織の上から下まで、各部署における人々の葛藤と競争、不安と後悔が
    生死を分けるほどの熾烈さで繰り広げられる。
    私たちの生きている社会とは、こんな価値観で回っているのか。
    テクノロジー至上主義の先には、こんな未来が待っているのか。
    暗澹としながらも、示されたひとすじの希望に涙があふれた。

    夫婦の細やかな心情と、社会の大きな流れの両方が自在にリンクする
    北川さんの脚本のスケールは、やはりネクストにふさわしいと思った。

    ネタバレBOX

    舞台から地下へ降りて行く階段が見える。
    斜めに昇って行く二階部分はかなりの高さだ。
    この階層がそのまま、「アカデミー」と呼ばれる巨大研究組織の階層に重なって見える。

    冒頭、このアカデミーを取材する女性新聞記者(陣内ユウコ)が組織の概略を説明する。
    ドクターと呼ばれる常勤研究員とポスドクと呼ばれる非常勤研究員には
    研究予算がひとケタ違うと言われるほどの環境・待遇の差があり、
    ポスドクは誰もがドクターを目指して研究成果を争っている。

    成果も挙げるが強引な進め方で仲間の反感を買っていたドクターの上谷(工藤さや)は
    計画的な追い落としに遭ってアカデミーを去ることになる。
    同時に研究員に支給される薬(飲めば年を取らないと言われる)を入手出来なくなった
    上谷の肉体は急速に衰え始める。
    過酷な研究職を離れて初めて夫婦として向き合うことが出来、
    残された時間を大切に過ごして行こうと話し合う上谷と夫牧(板倉チヒロ)。
    だが、友人の新聞記者柏田(橋本博人)から渡されたファイルによって
    アカデミーの真実を知った牧は、命をかけてある計画を実行する・・・。

    テクノロジーは競争の中からこそ生まれるものであり、また犠牲を伴うのが当然──。
    研究開発のためには研究員の人生も幸福も、果ては生命も犠牲になるのは仕方がない、
    だって開発のためだもの、というアカデミーの体質は現代社会の延長線上にある。
    この近未来が、つるつるした手触りと共に妙にリアルに感じられるのは
    北川さんの創り出す登場人物の設定と、繰り出す台詞の豊かさだ。

    優秀な妻を尊敬し、彼女を支えようとアカデミーの学生寮に就職した夫
    牧を演じる板倉チヒロさんが素晴らしい。
    生まれて来ることができなかった息子とのテンポ良い掛け合い、
    心配かけまいと夫に病状を隠す妻にぶつける情けなさと怒りの入り混じった叫び、
    素朴な言葉のひとつひとつに血が通っていて、観ている私たちは
    彼の言葉に引きずられるように物語の核心へと入り込んでいく。
    ラスト彼の行動に説得力を与え、感情移入が出来るのは板倉チヒロさんの台詞の力だ。

    一体今何歳なのか自分でも分からなくなってしまった
    少年のようなアカデミーの長官タダシ(金沢啓太)。
    そのたたずまいと冷静な台詞は強烈な印象を残す。
    彼の最後の選択に、“生き永らえる”ことと“生きる”ことは違うのだと改めて思う。

    牧と上谷夫妻の、生まれて来ることが出来なかった子慧吉(辻貴大)の存在が面白い。
    時々現われる、牧にしか視えないこの優しい子どもは快活な青年になっていて
    妻を支えようとして思うように出来ない自分を責める父親を温かく見守っている。
    最後、死んだ母に寄り添って自らも死を覚悟した父に向って叫ぶシーンは圧巻だ。
    BGMの音量に負けないその声の力強さは、この舞台のテーマを語るにふさわしい。

    ──将来のことばかり心配して僕たちは不安になる
      不安でしょうがないから人を傷つけ、自分を損なうような生き方をする
      でも先のことより、今ちゃんと生きることの方がずっと大事じゃないのか

    北川さんの脚本にはいつもピュアでストレートなメッセージを感じる。
    それは自然な人間性を損なうものに対する素朴な疑問や反発、怒りだ。
    私たちは誰ひとり完璧ではなく、皆“やわらかいヒビ”を持って生きている。
    もし堅いヒビであったなら、私たちは簡単に壊れて二度と再生出来ないだろう。
    やわらかいこのヒビを、私たちは大事にかばいながら歩いて行く。
    その道に“人工的なブラックホール”の研究など要らない。
    ただ大切な誰かと並んで歩いて行きたいと思うだけだ。
  • 泣いたぁ~☆
    板倉チヒロ(クロムモリブデン)さんの熱演に泣きました!脚本も素晴らしい☆彡観れて本当に良かった!

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