トロイアの女たち 公演情報 トロイアの女たち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.2
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★

    芝居の出来に不満
    俳優が相手役の台詞を理解できないため、演技から「表現の一回性」が損なわれてしまったと思いました。役者は相手の台詞を聞いて理解しないと、いい演技ができません。本作品の俳優の芝居は感じるものがなかったです。
    それでも戦争によって生の拠り所を奪われる女性の嘆きは2階席まで伝わってきました。戯曲と演出の力だと思います。

  • 満足度★★★★

    優れた出来ばえ
    千秋楽から時が経ちすぎてのコメントになってしまいました。失礼します。

    野心的な企画、大変すぎる挑戦でした、が、健闘したと思いますね。
    創る側の苦労や葛藤が大きいと観る側も骨が折れる。けれども、充実感は残る。
    そんな舞台だったと思います。

    ネタバレBOX

    序幕のポセイドン(アラビア語)とアテナ(ヘブライ語)の対話では神話世界に魅了されます。特にポセイドンの貫禄が素晴らしい。荒れる海の美術も美しいものでした。
    この荒波が引くと、ヘカベ(白石加代子)が地に伏しているという見事な劇的効果で本編に入ります。

    第1幕、ヘカベ(日本語)とタルテュビオス(アラビア語)の対話からもう作品の世界に引き込まれます。カッサンドラ(ヘブライ語)が加わる3人の対話場面は、劇中最も見応えのある部分でしょう。カッサンドラの舞踏的身体表現の悲劇性は、言葉の壁を越えて迫真的でした。

    この後から始まるコロスの合唱舞踏こそ今回の企画の真意を端的に表す場面であり、客の評価も分かれる部分でしょうね。日本語、ヘブライ語、アラビア語の順で3度繰り返される合唱、民族性を表現しているとされる各々の身体表現、見届けるのにかなりの忍耐が必要とされるのは事実です。僕も相当骨が折れましたが、先述した通り、充実感が残りました。

    第2幕には、アンドロマケ(ヘブライ語)が登場。この人も好演ですが、第1幕のカッサンドラには及ばないと感じました。

    2回目の合唱舞踏があって、第3幕にメネラオス(ヘブライ語)とヘレネ(和央ようか)が登場、この戦争の愚かしさが暴露される見せ場です。和央は見事な美貌ですが、類型的な演技で存在感は軽い。尤も、そういう役なのだから、責は充分果たしたというべきなのでしょう。

    3回目の合唱舞踏の後、終幕です。ギリシャ人の略奪と放火に加え、大地震の直撃でトロイアは完全に崩壊する―。見事な赤の照明が忘れがたい情景を見せてくれます。古代から繰り返されてきた文明の興亡、気の遠くなるような時の流れが一瞬で閃き見えるような不思議な感覚。去りゆくトロイアの女たちの姿には、現代世界にも確実に存在する紛争犠牲者、おびただしい難民たちが重なります。心の奥深くまでくい込んでくる悲しみは悲劇のカタルシス、文句のつけようのない劇的ピリオドを刻んでました。

    こうやって振り返ってみると、白石の力演がいかに素晴らしかったか再認識しました。彼女はまさに悲劇の王妃、妻、母そして祖母として舞台の上で生きていました。

    蜷川幸雄には、この大仕事をやり遂げた集中力、敬意すら感じます。
    どうぞ、これからも、本物の感動、大人のドラマを見せて下さい。
  • 20121218
    字幕つき

  • 満足度★★★★

    一周回って面白い
    初蜷川演出。

    ネタバレBOX

    トロイア戦争後、スパルタの奴隷等として生きていくことになる「トロイアの女たち」の嘆きを描く。
    1幕~ポセイドンとアテナの会話~カッサンドラ~アンドロマケ
    2幕~スパルタ王のメネラオスとヘレネ

    1幕
    これでもかってくらい嘆きまくる女たち。くどいってくらい嘆くのが、途中からなぜか可笑しさがこみ上げてきた。周りのコロスらが、日本語→ユダヤ→アラブと、同じセリフを繰り返すのも、当初まどろっこしいと感じたけど、ユーモラスに思えてきた。
    アンドロマケの子供が殺される悲劇性が上手く演じられてた。カッサンドラの気が触れた演技も、静かな狂気を感じられた。カッサンドラ役の女優が上手かった。

    2幕
    トロイアにヘレネを迎えにきたメネラオスと、トロイア女王のヘカベと、戦争の原因と言われたヘレネのやり取りが面白い。1幕で嘆いてたトロイアの女たちが、ヘレネやメネラオスらを攻める構図。女の意地が燃えてた。
    ヘレネを演じた和央ようかは美貌はまさに絶世だけど、宝塚っぽい発声が舞台に馴染んでたか微妙。演技自体はいいけど。
    メネラオスを演じた役者は、小遊三みたいないやらしい顔がいい感じにハマってた。
    コロスの順繰りにセリフを言うのが、2幕でやっと効果的と感じられるようになった。可笑しさでなく悲壮さに(自分の中で)変わったというか。
    あと、子供の死を悼むシーンの、各国のオリジナリティが面白い。
  • 満足度★★★

    現代に繋がる怒りと嘆き
    日本とイスラエルのユダヤ系・アラブ系の役者がそれぞれの民族の言葉を用いながら共にギリシャ悲劇を演じ、単純に調和や平和を訴えるだけではない、考えさせられる作品でした。

    戦争に負けたトロイアの女性達が勝利国の戦利品として奪われ、国が滅ぶことを嘆く物語で、笑いどころか明るい要素も皆無で、終始重い雰囲気でした。
    コロスの台詞の所は日本語→ヘブライ語→アラビア語と各民族のコロスが順に言うというルールを頑なに守りながら物語が展開し、途中までは冗長さを感じましたが、終盤の弔いの歌の場面では、その手法が非常に効果的でした。
    トロイアの街が燃えるシーンでは客席も赤い照明で照らし出され、現代の戦争の音や赤ん坊の泣き声が鳴り響き、舞台上で演じられている悲劇と同様のことが現代でも起こっているという事実を意識させられました。

    奥に数段上がっている舞台の周りを布で囲い、4隅にしなだれたヒマワリが置かれ、天井とヒマワリには血と火を思わせる赤い紐が吊られている簡素な美術の中、控え目な映像や歌舞伎の手法を用いた演出が、ギリシャ悲劇に似つかわしい様式感を生み出していました。
    最初と最後に現れる月と、地面に伏せられる円形の楯の対比が印象的でした。

    子や孫が次々に不幸な目に会い、悲嘆に暮れるヘカベを演じた白石加代子さんの台詞回しと存在感が圧巻で、作品に重厚な雰囲気を与えていて素晴らしかったです。
    絶世の美女ヘレナを演じた和央ようかさんは視覚的にはまさにそうでしたが、(浮世離れ感を出すために敢えてそうしたのかもしれませんが)台詞の発声法が他の役者達とかなり異なっていて違和感があり残念に思いました。
    海外の役者達も同じ台詞でも声や体の表現の仕方が全然異なっていて興味深かったです。

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