満足度★★
芝居の出来に不満
俳優が相手役の台詞を理解できないため、演技から「表現の一回性」が損なわれてしまったと思いました。役者は相手の台詞を聞いて理解しないと、いい演技ができません。本作品の俳優の芝居は感じるものがなかったです。
それでも戦争によって生の拠り所を奪われる女性の嘆きは2階席まで伝わってきました。戯曲と演出の力だと思います。
満足度★★★★
優れた出来ばえ
千秋楽から時が経ちすぎてのコメントになってしまいました。失礼します。
野心的な企画、大変すぎる挑戦でした、が、健闘したと思いますね。
創る側の苦労や葛藤が大きいと観る側も骨が折れる。けれども、充実感は残る。
そんな舞台だったと思います。
満足度★★★
現代に繋がる怒りと嘆き
日本とイスラエルのユダヤ系・アラブ系の役者がそれぞれの民族の言葉を用いながら共にギリシャ悲劇を演じ、単純に調和や平和を訴えるだけではない、考えさせられる作品でした。
戦争に負けたトロイアの女性達が勝利国の戦利品として奪われ、国が滅ぶことを嘆く物語で、笑いどころか明るい要素も皆無で、終始重い雰囲気でした。
コロスの台詞の所は日本語→ヘブライ語→アラビア語と各民族のコロスが順に言うというルールを頑なに守りながら物語が展開し、途中までは冗長さを感じましたが、終盤の弔いの歌の場面では、その手法が非常に効果的でした。
トロイアの街が燃えるシーンでは客席も赤い照明で照らし出され、現代の戦争の音や赤ん坊の泣き声が鳴り響き、舞台上で演じられている悲劇と同様のことが現代でも起こっているという事実を意識させられました。
奥に数段上がっている舞台の周りを布で囲い、4隅にしなだれたヒマワリが置かれ、天井とヒマワリには血と火を思わせる赤い紐が吊られている簡素な美術の中、控え目な映像や歌舞伎の手法を用いた演出が、ギリシャ悲劇に似つかわしい様式感を生み出していました。
最初と最後に現れる月と、地面に伏せられる円形の楯の対比が印象的でした。
子や孫が次々に不幸な目に会い、悲嘆に暮れるヘカベを演じた白石加代子さんの台詞回しと存在感が圧巻で、作品に重厚な雰囲気を与えていて素晴らしかったです。
絶世の美女ヘレナを演じた和央ようかさんは視覚的にはまさにそうでしたが、(浮世離れ感を出すために敢えてそうしたのかもしれませんが)台詞の発声法が他の役者達とかなり異なっていて違和感があり残念に思いました。
海外の役者達も同じ台詞でも声や体の表現の仕方が全然異なっていて興味深かったです。