公演情報
「桜の園」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
ワーニャおじさん、かもめ、また三人姉妹も比較的しっかり刻印されているが、桜の園は当日パンフの登場人物名を見ても「どんな人だっけ」と。観て行く内に、ああそうだ「競売」が焦点となる話だと思い出す。
このリーディングでは「桜の園」翻案とある。やしゃごの伊藤氏による。随所に現代口語や名詞の言い換え、やり取り自体のアレンジやラップをさせたりもあって面白い。下卑た人物が普通ドラマでは厄介で乗り越えるべき存在となる所、チェーホフ作品ではその人物なりの背景からの必然としてその下衆ぶりがあり、その報いはそれとして受ける事となる・・この構図は大事だなとふと思う。三人姉妹の三女の夫に決闘を申し込んで殺す男も、彼に鉄槌が下される訳ではない。彼は彼で已むを得ずそうした、という事になっている。人生そうしたものだ・・と。
落ち度のない人間の前に、彼の生の平和を脅かす存在が現われ、悪として現前し克服すべき対象となり、これを克服する事でドラマが終結する、といったタイプの(言わば勧善懲悪の変奏)ドラマが特に日本には多い気がする(その逆が少ない)。悪を懲らしめる警官の勇姿、敵国に勇敢に対峙する軍人や愛国の徒・・フィクションにも程があるが、国家そのものがフィクションである、との自覚の上でこれに乗っかる人生もあるのかも知れない。
閑話休題、リーディングとは言えミザンスを重視し、動きながらの場面描写。読み手の力量、キャラ出しの面白さに満足度高し。