公演情報
「カタブイ、2025」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
三部作となった「カタブイ」、初回は沖縄本土復帰50年に因んで各所で組まれた幾つかの公演の一つだったが、第二弾を経て第三弾と来た。三作の共通点は、「沖縄」を叙述する舞台として、沖縄本島のとあるサトウキビ農家の家族とその(確か二作目以降は収穫時期にのみ使われる)家屋。娘が東京での大学生活を終えて里帰りしたのを追って来た青年を「沖縄にとっての他者」として迎える交流を軸とする。二作目、即ち沖縄県民二十万人を抗議集会に集めた米兵少女暴行事件の1995年でも、23年振りに男が彼女を訪ねて来た日々に起きるあれこれを通して沖縄の問題を炙り出す。そして三作目、再び老体を抱えてこの地を訪ねたかつての青年の滞在期間を通して、2025年現在の沖縄を切り取ろうとするものだ。
もう一つの共通点は、キャストに沖縄人の演者を配し、ウチナーの本格的な音曲が披露される事。
本作。2025年とは、2000年以降顕著になっている沖縄・南西諸島の不気味な程積極的な軍備拡大と、それを後追いする(必然化する)かのような対近隣への世論(私には全てが盧溝橋のよう自作自演に見えるが)の喧しい今であり、何らかの目標に向かうプロセスである。
従って、物語の終わりはない。演劇作品としては完結しても。私の予想では、作者は(私が想像する人であるならば)早晩の内に続編を書きたい衝動に苛まれるだろう。その理由は沖縄を含めた日本の状況つまりは「悪い状況」が、今後改善される兆しが皆目見えないから。
勿論そうならない事(作家内藤裕子に執筆への負の衝動をもたらさない事)を望んで止まないが。
実演鑑賞
満足度★★★★
素晴らしい傑作。現在の沖縄を舞台にどんなドラマが展開できるのか予想もつかなかったが納得の脚本。三上智恵監督のドキュメンタリー映画『戦雲(いくさふむ)』にも通じる内容。
升毅(ますたけし)氏がシリーズを通じる主人公、杉浦孝史75歳を演じる。大学時代の恋人、石嶺恵75歳は佐藤直子さん。娘の石嶺智子は古謝(こじゃ)渚さん。孫の石嶺葵は宮城はるのさん。その恋人の陸上自衛隊員、中村悠太に山下瑛司氏。彼の母親、中村敏江に馬渡亜樹さん。町の名士(?)、池原実に当銘由亮(とうめよしあき)氏。
自衛隊員と反基地運動の活動家との邂逅。
『戦雲』でも自衛官と県民との対話がある。県民の根強い不信感に自衛官は答える。「軍が県民を守らなかった前の戦争の過ちを教訓として我々は県民の為に行動します!」
馬渡亜樹さんは体育会系女子。動きや受け答えがハッキリしている。
古謝渚さんと宮城はるのさんは何となく顔立ちが似ていて母娘にふさわしい。
古謝渚さんはどことなく鈴木紗理奈みたいにくっきりした顔立ち。
宮城はるのさんはある種の天才だろう。全く演技を感じさせず自然に素の感覚を出せる。ちょっと松田聖子っぽくも見えた。
三線(さんしん)による演奏と琉球舞踊の優雅さ。「ヒヤミカチ節」が始まると、カチャーシー(祝宴の最後に皆で手を振り上げて自由に踊ること)が外にまで出て延々と続く。『焼肉ドラゴン』を彷彿とさせる名シーン。「ヒヤ ヒヤ ヒヤヒヤヒヤ ヒヤミカチウキリ」(「えい」と言って奮い立とう)。ヒヤ=えいやっ!
ジーマミー(落花生)豆腐=芋餅に近い。
オスプレイが頭上を通る轟音が凄まじい。これが日常か。
戦後の人々の再生に歌と踊りがどれだけ力になったことか。ただの現実逃避だけではない。人の心の再生に力を貸す。
こうなるとカタブイ全3作一挙上演なんかを期待する。
是非観に行って頂きたい。