公演情報
「あの夏の夜の夢」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/07/18 (金) 19:00
前回観た座·高円寺の『マクベス』では、マクベスが悪の権化と化して、最終的に野望欲望が肥大化していった結果、全てを失い、身の破滅に繋がるピカレスク悲喜劇だが、それを野性味溢れ、残酷で、エログロな場面も露骨に導入しながらも、最後の最後までマクベスが良心や理性との葛藤で揺れ続ける、1人の等身大の人間として描かれる。
周りの持ち上げや、唆し、畏怖によって、マクベスが独善的で独裁的な怪物と化していくといった風に描かれ、むしろ哀れにさえ思えた。
しかし、世の独裁者はこうやって形作られていくのかと思うと、背筋が凍り付き、襟が正される思いがした。
その『マクベス』に引き続き、今回は同じくシェイクピアの『真夏の夜の夢』を曼荼羅という吉祥寺の老舗ライブハウスで、それもバンド演奏付きということで期待しかなかった。
今回は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を、シェイクスピアの台詞の良さや世界観は残しつつ、ジェンダー問題の観点から『夏の夜の夢』を捉えるということで、現代的な価値観をいかにこの劇にアレンジとして活かしつつ、どう本編と融合して、違和感なく観れるのかということに、興味が湧いた。
実際に観てみると、アテネの公爵のシーシュースが結婚前に公爵の婚約者ヒポリタを力で従わせていることがよく分かる演出として、血だらけのドレスに黄色の鎖をヒポリタの首にかけ、鎖の先をシーシュースが持ち、時々鎖を引っ張りながら会話するという、明らかに対等とは言い難い、シーシュースに隷属する婚約者という構図が、DV夫とその妻の関係性を如実に連想させる。
そのシーシュースとヒポリタの関係性は、家父長制、現代日本においても完全に消えたとは言い難い男尊女卑観を視覚的にも体現しており、鬼気迫る迫力、強烈な印象を与えられるとともに、深く考えさせられてしまった。
忠臣イージアスの、イージアスの娘ハーミアの意志とは関係なく、ディミートリアスと結婚させようとする独善的で父権的、家父長的、封建的価値観に支配された行動、森で身体関係をハーミアに拒まれ、不気味で謎めいていて、神秘的で不穏な感じに描かれる妖精王オーベロンの臣下妖精パックの惚れ薬によって、ライサンダーがヘレナに目を向ける。
ディミートリアスは、元々はヘレナと仲が良かった筈だが、今は心変わりして、ハーミアを追いかけ回すという勝手過ぎて、やりたい放題の男たち、それに翻弄され、尊厳も何もかもズタズタにされる女たちという構図を普段の『夏の夜の夢』よりも露骨に強調していて、ジェンダー問題について考えさせられた。
妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの妖精の女王タイテーニアと上手くいかないとなると、急に柄にもなく大声で手足をジタバタさせて、まるで赤ん坊か3歳児のように泣き喚く場面などは、ギャップ萌えで大いに笑えた。
妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの両乳首が見えて、ガタイが良くて引き締まって、筋肉質な身体には、男の色気を感じてしまった。
妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの身体にフィットし過ぎて下半身の大事な部分が露骨に強調されている海パンに上半身裸に白い布を引っ掛けただけ、頭にもお粗末な冠のようなものを被っているという出で立ちも妙な生々しさと渾然一体となった不健康な色気が漂っており、しかしその露骨な感じが寧ろ笑えてしまった。
妖精の女王タイテーニア役の高村絵里さんも黒のブラジャーに黒のパンツ、腰布を巻いただけといった出で立ちで、そのあまりのもろ出し感と、艶感に驚いてしまった。
まだ役者が河原乞食と呼ばれていた頃の荒々しく、過激で、エロティックで、残酷で観客に媚びてなかった頃の原初の演劇を思い出さずにいられず、今演じられるどんなシェイクスピア劇よりも、シェイクスピアの根幹となる部分や匂い立ち上ってくるような、舞台と客席の距離がなかった頃の大衆性が今ここに現出したかのような舞台に、演劇ユニットキングスメンに可能性を感じた。
妖精パックが暗くて不気味で、闇感があって、神秘的で不穏な、声の出し方1つとってもこの世のものとは思えない感じに高村絵里さんが演じられていて、妖精パックっというと、大抵は軽くて、イタズラ好きで、でも何処か憎めない道化的に描かれることが多かっただけに、良い意味で、新鮮で衝撃を受けた。
しかし、よくよく考えてみれば、妖精パックは妖精なのだし、人ならざるもので、人智を超えた能力を有しているとしたら、そんな人好きのするような感じではなく描くのが、リアルみを感じるのだと思えた。
アテネの庶民や妖精たちの役をバンドFURUCHANSが演じるという、役者だけでなくバンドメンバーまでもが劇に参加するというところが、ライブハウスという特殊性も相まってか、全然違和感なく、寧ろ自然に見れた。
妖精王オーベロンの妖精の女王タイテーニアと関係性が上手く行かないことで癇癪を起こし、タイテーニアとアテネの庶民で妖精パックの魔法でロバの顔にされたボトムとを惚れ薬で無理矢理くっつけようとしたりと強引で、勝手過ぎるが最後は、惚れ薬の効き目を解き、オーベロンを疑う妖精の女王タイテーニアと仲直りして、人間界では、ハーミアとライサンダー、ヘレナとディミートリアスといった感じで、お互い本当に好き者同士で結ばれ、シーシュースとヒポリタの関係性も逆転して、今度はヒポリタがシーシュースの首に鎖をかけ、鎖の先を自分が持って時々引っ張るといった感じに、主従の立場が逆転し、忠臣で封建的、家父長的で偉そうで傲慢だったハーミアの父親のイージアスもヒポリタに鎖を首にかけられ、大人しく従うといった感じに、大袈裟で視覚的も、見ていて大いに楽しめて、みんな幸せになって心底安心した。
だが、これで本当に良かったのだろうか、少なくとも一時的にだとしても妖精王オーベロンの妖精の女王タイテーニアが別れ話を切り出してきたことに逆ギレして、タイテーニアと人間で、妖精パックのイタズラでロバのあたまにされたボトムとくっつかせ、後で、あれは夏の夜の夢だったんだと弁明するこのエピソード1つ取っても感化できない女性軽視、女性蔑視、女性をただの物として扱っているように思えて許せず、他の登場人物の男性たちも同様で、現実としてはまだまだジェンダー問題が解決したとは言えない日本において、この劇や、この劇に出てくる登場人物たちの言動行動を通して、深く考えさせられた。
自分もあんまり考えずに普段、大なり小なり女性に不快な思いをさせていないか、良かれと思って言ったことでも、相手を深く傷付けていないか、改めて自分を振り返る良い機会になった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
べし観る! 華5つ☆
曼荼羅は著名ライブハウス、JR吉祥寺南口(公園口)を出て直進できる道を真っ直ぐ。バスが通れる程度の道を抜け丸井やドンキが対面に見える大通り迄出て信号を渡らずに右折、対面のドンキを過ぎて少し歩くと地下への入り口がある。畳半畳程の入り口なので見落としやすい。
ライブハウスでの公演であるから当然バンドは生。3人編成のバンドでドラム、ベース、リード各々のギター。場転や台詞の切れ目に、演じられている舞台に相応しい曲を選曲して演奏してくれて演劇と音楽が互いに混じる、或いは交感する、時に競合したり逆に引いて舞台の雰囲気を濃密にするなど、シェイクスピアにロックというのは初めての経験であったが実にフレッシュでグー。最終追記2025.7.20 10:04
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高!2時間を超える長尺の舞台でしたが緩急のある舞台で長さを感じませんでした。曼荼羅が劇場だったこともあり、めちゃくちゃアットホームな舞台ですごくよかったです。舞台のシーンが変わるごとにメタルの曲が演奏されこれがまたハマりまくりです。シェイクスピアとメタル合うじゃん…と思うほどです。全体的にラウドネスの曲が多かったですがw 今回観劇するにあたり『夏の夜の夢』の勉強をしておいて正解でした。復習する感じで観劇できたこともあり「ああ、ここはこういったセリフでくるか…」と考えながら鑑賞することができました。キングスメンさんには引き続きこのメタルとのコラボのスタイル推し進めてもらいたいです。メタルシェイクスピアという新しいジャンルを構築してください^^