おーい、 救けてくれ! 公演情報 おーい、 救けてくれ!」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-10件 / 10件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    1時間弱の芝居。米国のとある州のとある留置所にぶち込まれた男が、「おーい、救けてくれ」と叫んでいる。夜の明り。彼は今なぜ自分がここにいるのか分からない、といった風にも見えるが、ただ人を呼びたい、あるいは逃げ出す契機を掴もうとしてる・・想定は自由な感じである。どうやら鍵をかけて警官(看守?)は帰宅。誰もいないかと思いきや、予想外にも女の声が、それに答える。壁の向こうにいるのか・・。見えない相手との会話が始まり、窓から漏れる月明かりの下、男は相手をきっと素敵な人だ、と言い、女は恥かしそうに応答する。君を一目見たい、と思いが高ぶる男。でも、と臆する女。その応答が暫く続いた後、通路から本当に女が姿を現わす。
    この二人がメイン・キャストで、組み合わせが数組ある。この日は男が川口龍(この名を知っていたので観に行ったというのもある)。途中数人の不良連中が登場するが、配役名としては出ていない。
    さて、実は世話係の女が残り仕事で帰りそびれていたのであったが、女の全身姿を見た男は一瞬固まり、言葉を失う。が、すぐさま「素敵だ」と言う。リップサービスなのか本心(実は小太りが好み)なのか不明。話をしようと男は持ちかける。女は次第に男に気を許し、先走って行く(リレー競争で追い抜いて行くあの感じね)。完全に台上に乗り切った女を見て男は一瞬目が淀む。利用してやろうという目だ。
    だがその後、男は女に「ここを出て、サンフランシスコへ行こう」と言う。女は今の家庭の状況であれば、未練はない、と思い切る。サンフランシスコへ・・が、二人の合言葉となる。牢屋を出ない事にはどうにもならないのだが、なお男は女にそれを言い含める所にドラマの不思議がある。男は何を目論んでいるのか、あるいは男の中で何が生じているのか・・・。
    出奔の準備のため女が一旦帰宅した後、静寂の中に車のタイヤ音が響く。どうやら男はある男の女房を寝取り、夫と悶着の末、相手を伸したため監獄に入れられたらしいと分かる。今日その日のことだ。
    その夫婦と仲間らしい男二人がどやどやと、ケリをつけにやって来る。
    実は男はその浮気女に迫られたのであり、状況が危ういと悟った女は現場を出て大声を出した、という顛末だったのだが、檻の格子を挟んだ険悪なやり取りの後、夫以外の者が外へ出て、一対一で話す事となる。相手は自分の妻が実はそうした事を悟っている。だが体面上許す事はできない、という。本心を明かす夫に、男は「少し勇気を持てばいい」と相手の良心に訴える。が、形成を変えるに至らず、再びどやどやと入って来た男たちの手で、男は殺される。
    虫の息で床に腰かける男のもとへ、女が戻って来る。
    男は女に告げる。先に行っててくれ。後から俺も行く。サンフランシスコだ・・。
    その後の流れがどうだったか、女の目の前で男が息絶えたのか、女が疑う事なく牢屋を後にした後、また戻って来て気づくのか・・女はその場で佇み、小さく「おーーーい」と言う。
    出会って数時間で別れが訪れた男女の物語。恋愛の本質を抉ってもおり、普遍性がある。胸に植え付けられた疼きを撫でつつ、帰路につく。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    過去それなりに上演されていた模様だが認知したのは初めて。サローヤン作、に目が止まり、馴染みのある川口龍氏出演の回が都合良く空き時間に当ったので観に行った。約50分。短編戯曲として起承転結よく出来ているが、舞台としても二人の出会いの「純粋で無さ」を含めて生身の人間同士が出会うことの感慨に導かれる、匂いのある舞台だった。(短編のよく出来た戯曲で狙われがちなスタイリッシュさや軽演劇的な味付けには向わず、人間描写に徹し好感が持てる舞台。)

  • 実演鑑賞

    嘗ては女子大演劇のリーダーとしてならした鈴木裕美も小劇場劇団の自転車キンクリートで腕を上げ、いまや商業演劇の新橋演舞場、客の来る小劇場系公演も幅広くこなしている。芝居をまとめてどこか賑やか、どこか女学生らしい純情さ、一方で実は徹夜も辞さない大酒豪という噂も伝わってきて、女性の年齢を忖度するのは失礼だから止めるがそろそろ還暦だろう。その鈴木裕美が、若い俳優入り口の人を集めて一月ワークショップを開いてその結果を見せるというので見にいった。
    テキストはサローヤンで、一頃、鈴木はアメリカ演劇のテレンス・ラティガンのような地味だが受けのいい作家の作品をしきりにやっていた。日本の同年代作家では、マキノノゾミとか。分る演劇を照れないでたやり続けたところがいい。
    一方ではこういう新人育成のようなこともやっているんだと、見直すところもあった。ワークショップは徹底的に実践派で、型を教えているわけではないようで、解釈とそんれを体で相手を見ながらどう表現していくか、ということをやったようで現代演劇の基礎訓練だったようだ。嘗ての演出家先生の訳の分らぬ事w謹聴、拝聴するだけの訓練よりはよほど役に立ちそうだったが、新人の感性を引き出すには、演出の方も、よほどの経験と口先の旨さがなければ務まらずそろそろ還暦だろう。あつての蜷川のように、出来るまでやらせるというような演出はこれからは難しくなりそうだ。

    ネタバレBOX

    この欄・。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    【D】チーム観劇。この作品を観るのは2回目です。今回もぐっときました。一昔前のアメリカ。排他的で、差別的で、理不尽な世界。ささやかな夢と絶望。やるせないですね。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    おもしろかったです。原作は悲劇のテイストが強いですが今回の舞台はなんとなく喜劇ぽさが強調されていたかなと… 脚本と演出と演技次第ではこんなに原作とイメージが異なるのかな…と。これが舞台の醍醐味でありよさですよね^^ 別の作品も観てみたいと思える劇団さんでした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    芝居に素晴らしく迫力がありました。この舞台では、少なくとも刑務所の料理係の少女と収監された男の間に瞬間的な愛があったと思うのです。結果的に全く方向性が違う脱出になってしまいましたが、収監された男は得難いものを得たのではないかと思います。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     表層だけ見ていては何も理解できない作品。これこそ、アメリカ、これこそ差別、これこそがアメリカの病。華5つ☆、追記後送。ベシミル!!

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    Dチームの回。この作品、他の劇団の公演を今年観ているが、それとは少し異なる雰囲気もあって面白い。やはり見事な戯曲だと思った。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    刑務所からの脱出を試みはうまくいくのか、興味深かったです。

    ネタバレBOX

    おーい、という呼びかけから始まる、緊迫感がいいですね。そして恋物語になっていく、過程がまた、熱気が感じられとてもおもしろいです。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未見の作品。1ヶ月のワークショップ/稽古を経ての公演で、基本的に2人芝居。この公演では5組が挑戦している。自分が観たのは、赤松真治さん、勝谷涼子さん のD回。

    物語としては、薄幸な若い男と女が牢獄の内と外という特殊な状況の中で芽生えさせた幻想的な恋物語といった内容。その切っ掛けは、男の「おーい、助けてくれ」という孤独と絶望の淵から出た言葉。それに呼応した女、彼女もまた孤独で世間知らず。いつしか儚い恋物語のような…。

    自分が勝手に思い描いていた状況ではないことから、その世界へ没入出来なかったのが悔やまれる。舞台で先入観は禁物、知ってるつもりだったが…。
    (上演時間55分)【D】

    ネタバレBOX

    舞台美術は 全体的に薄暗く、正面の壁は薄汚れたレンガ。上手には鉄格子窓から月明りが差し込んでいる。上手と下手を遮るように斜めの線、それが鉄格子。上手が独房内でベットと便器、下手が外の世界。天井には裸電球が吊るされている。外は強風が吹き、その音が寂寥感を漂わす。

    テキサスの田舎町にある刑務所の独房。若い男が床にスプーンを叩きつけている。そして誰にともなく「おーい、救けてくれ!」と叫ぶ。その刑務所で働く女が物陰から「淋しいの」と声をかける。男は、女を騙し脱獄しようと企てる。世間知らずの女は騙されていくのだが…。初めこそ騙しているような感じだが、男は女に向かって 君と出会えた幸運を生かして、サンフランシスコでギャンブルで勝てば、金持ちになって幸せになれる。胡散臭くも 夢物語に酔いしれている様子。

    女は、男が婦女暴行の罪で投獄されたことを知っている。彼は殴られて意識を失っている間に、遠く離れた町の刑務所に収監された。女は、刑務所の料理人として働き、彼女の父親は働かず、ある怪我によって政府から金をもらっている。男は片方の靴の中に隠し持っていた80ドルを女に渡し、この町を出てサンフランシスコで落ち合おうと言う。そして 男に頼まれて 女が父親の銃を家に取りに行っている間に、男は暴行した女の亭主に銃で撃たれて死ぬ。その女は男を誘惑し金を要求する。亭主はそれがバレ、世間に醜聞が広まるのが嫌だった。男にそれを指摘されて、亭主は思わず銃を撃った。男は、死を目前にしながら自分の不幸を嘆かず、料理人 女の幸せを願う。亭主や女房たちは男の遺体を刑務所から持ち去って どこかへ。

    長々とあらすじ らしきことを記したが、この物語には2人の設定が殆どない。かろうじてあるのは、1940年代初頭。女がこの田舎町の生まれ育ちで、父が働かず娘の給料を当てにしていること。年代的には戦時中で緊張感と閉塞感が漂っていたと思うのだが…。そんな時の奇跡のような出会いで、今その瞬間だけを切り取って語る。男の孤独と女の不自由、そして2人に共通した寂しさが犇々と伝わる。勿論、事情を確かめずに投獄したことが偏見、差別になるのだろう。

    先にも記したが、男と女の過去や性格付などは無くに等しく、その瞬間だけの出会いと別れである。その意味では1ヶ月のワークショップ/稽古で行うのに適した戯曲で、その演技力は見事だった。ただ、自分は女が10代で男が20代後半といったイメージを持っていた。その年齢差ー人生(辛苦の)経験の違いが、「男の騙して脱獄」と 「女の初々しい興味」といったものが、<ささやかで神話的な恋物語>になると想像していた。それが同年代もしくは女の方が年上なのが、自分のイメージと違ったので…。
    次回公演も楽しみにしております。

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