おーい、 救けてくれ! 公演情報 鈴木製作所「おーい、 救けてくれ!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未見の作品。1ヶ月のワークショップ/稽古を経ての公演で、基本的に2人芝居。この公演では5組が挑戦している。自分が観たのは、赤松真治さん、勝谷涼子さん のD回。

    物語としては、薄幸な若い男と女が牢獄の内と外という特殊な状況の中で芽生えさせた幻想的な恋物語といった内容。その切っ掛けは、男の「おーい、助けてくれ」という孤独と絶望の淵から出た言葉。それに呼応した女、彼女もまた孤独で世間知らず。いつしか儚い恋物語のような…。

    自分が勝手に思い描いていた状況ではないことから、その世界へ没入出来なかったのが悔やまれる。舞台で先入観は禁物、知ってるつもりだったが…。
    (上演時間55分)【D】

    ネタバレBOX

    舞台美術は 全体的に薄暗く、正面の壁は薄汚れたレンガ。上手には鉄格子窓から月明りが差し込んでいる。上手と下手を遮るように斜めの線、それが鉄格子。上手が独房内でベットと便器、下手が外の世界。天井には裸電球が吊るされている。外は強風が吹き、その音が寂寥感を漂わす。

    テキサスの田舎町にある刑務所の独房。若い男が床にスプーンを叩きつけている。そして誰にともなく「おーい、救けてくれ!」と叫ぶ。その刑務所で働く女が物陰から「淋しいの」と声をかける。男は、女を騙し脱獄しようと企てる。世間知らずの女は騙されていくのだが…。初めこそ騙しているような感じだが、男は女に向かって 君と出会えた幸運を生かして、サンフランシスコでギャンブルで勝てば、金持ちになって幸せになれる。胡散臭くも 夢物語に酔いしれている様子。

    女は、男が婦女暴行の罪で投獄されたことを知っている。彼は殴られて意識を失っている間に、遠く離れた町の刑務所に収監された。女は、刑務所の料理人として働き、彼女の父親は働かず、ある怪我によって政府から金をもらっている。男は片方の靴の中に隠し持っていた80ドルを女に渡し、この町を出てサンフランシスコで落ち合おうと言う。そして 男に頼まれて 女が父親の銃を家に取りに行っている間に、男は暴行した女の亭主に銃で撃たれて死ぬ。その女は男を誘惑し金を要求する。亭主はそれがバレ、世間に醜聞が広まるのが嫌だった。男にそれを指摘されて、亭主は思わず銃を撃った。男は、死を目前にしながら自分の不幸を嘆かず、料理人 女の幸せを願う。亭主や女房たちは男の遺体を刑務所から持ち去って どこかへ。

    長々とあらすじ らしきことを記したが、この物語には2人の設定が殆どない。かろうじてあるのは、1940年代初頭。女がこの田舎町の生まれ育ちで、父が働かず娘の給料を当てにしていること。年代的には戦時中で緊張感と閉塞感が漂っていたと思うのだが…。そんな時の奇跡のような出会いで、今その瞬間だけを切り取って語る。男の孤独と女の不自由、そして2人に共通した寂しさが犇々と伝わる。勿論、事情を確かめずに投獄したことが偏見、差別になるのだろう。

    先にも記したが、男と女の過去や性格付などは無くに等しく、その瞬間だけの出会いと別れである。その意味では1ヶ月のワークショップ/稽古で行うのに適した戯曲で、その演技力は見事だった。ただ、自分は女が10代で男が20代後半といったイメージを持っていた。その年齢差ー人生(辛苦の)経験の違いが、「男の騙して脱獄」と 「女の初々しい興味」といったものが、<ささやかで神話的な恋物語>になると想像していた。それが同年代もしくは女の方が年上なのが、自分のイメージと違ったので…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/07/31 15:21

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