こんばんは、父さん 公演情報 こんばんは、父さん」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 満足度★★★★★

    男3人芝居をじっくり堪能しました。
    最近、SF的設定やファンタジー、海外の古典とかミュージカルなどが多かったので、
    久々に日本のオーソドックスなストレートプレイ、3人芝居の普通の話をじっくり堪能しました。

    歴史的な役柄が多い平幹二朗さんが演じる父親は、波乱の半生を歩んだ元カリスマ的町工場の経営者。
    佐々木さんは、それに憧れながらもバブル崩壊を目の当たりにして反抗する息子。
    溝端さんは、町金の取り立て屋でありながら、その環境の中での出世を夢見る、ごく普通の青年。
    3人の、探りあいながらの会話を、非常に楽しみました。

    平さんは身近な役柄は最近めずらしく、しっかりと元気に、時には飄々と、しかし狡猾さを感じさせて
    演じられていてさすがです。
    また失敗を繰り返してしまったと悔しがり、しかし息子と絆を確かめる。
    溝端淳平さんは、『ウサニ』の主演と後で気づきましたが、そのときも一人、長ゼリフをこなし
    感動させられましたが、今回も、芸達者なお二人を向こうに回し、
    昔のステレオタイプの取り立て屋とは違う、複雑な心境の若者を演じ、善戦していました。

  • 満足度★★★★★

    永井さん復活!
    ここ何作かの永井さんの新作には、幾分がっかりする部分があったのですが、久々に、永井さんが、誰の思惑にも踊らされず、本当に、書きたい題材を書きたいように作品化された芝居だったように感じました。

    3人の配役が素晴らしく、均衡が取れていて、舞台を拝見している間、ずっと気持がワクワクとしてしまいました。

    ただ、ひとつ、腑に落ちなかったのは、長い間、行き来がなかった父がどうして、鉄馬の携帯番号を知っていたのだろうかということ。昔から携帯番号を変えていないというのは、この鉄馬の状況では考え辛く、ちょっと虚構的に感じてしまいました。

    今回の作品、個人的事情から、溝端さん演じる、闇金の取立て屋の青年に一番感情移入してしまって、複雑な気持ちで観劇したのですが、それでも、この配役の妙と、永井さんの綿密仔細な計算の上に成り立った戯曲の魅力には、心躍る思いがしました。

    できれば、また再演してほしい演目でした。

    ネタバレBOX

    平さんと佐々木さんの父子役が、お二人の雰囲気も似ていることから、違和感がなく、絶妙の配役だと感じました。

    お二人とも、舞台上では、落ちぶれた風体ですが、壁の上がった空間で、以前の第一線で活躍していた時代を演じる場面があり、一瞬にして、その勝ち組時代を体現される演技力の巧みさに、感嘆しました。

    そして、先日の観劇でも驚いた、溝端さんの舞台役者としての資質に、嬉しさがこみ上げました。スーパーボーイコンテストの結果が出る前に、才気が認められ、人気が出ただけのことはあるのだなと、改めて納得!

    ソフト闇金の社員である、山田青年が、ブラック企業なのにも関わらず、必死に店長を目指して、ある意味、奮闘努力する様は、今の自分の心的状況を刺激して、胸が痛くなりました。

    終盤、佐藤父子が、亡き母であり、妻である、町工場のおかみさんの一生を語る場面では、彼女の苦悩がやはり胸に沁みます。
    登場人物は、男3人なのに、何故か、この薄倖の女性の健気な生き様を、一番、鮮明に観客に想起させるように感じました。

    軋んだ階段の上に腰かけ、幼い鉄馬が、職人である父の仕事ぶりを注視していたという配置が、物語の途中で、座る位置が逆になり、階段で父が、かつて自分が座っていた椅子に座る息子に語りかけ、それが、終幕では、やはり、過去の配置に戻ります。

    きっと、こういう細部まで、永井さんが計算され尽くして演出されているのでしょう。そういう、意図的な演出が鼻白む場合もありますが、今回の舞台では、名配役が功を奏し、全てが、うまく構成されていたように思えました。

    鉄を扱う工場で、息子に鉄馬と命名した父。自分のような下請工場で、息子の人生を終わらせたくないと、私立のエスカレーター学校に進学させ、経済社会でのし上がって行くように、父に人生を決められた息子も、やはりバブル崩壊の中で、投資詐欺に合い、負け組の人生を歩みます。
    妻とも離婚し、離れて暮らす、鉄馬の一人息子の名は、勝馬。

    でも、これからの日本で、勝馬君も、名前負けする人生を歩むことになるのだろうと思うと、ただただ切なくなるばかりでした。
  • 満足度★★★

    こんばんは、父さん
    「男」が旗を振って切り開いてきた戦後日本。工場の機械化を進め、正規雇用を減らし…等の成れの果てが今。私の人生もそんな時代に流されるがままだったんだと、落胆しつつ懐かしみつつ、おさらいした。

    ネタバレBOX

    知的に組み立てた緻密な演技をしながら、舞台上では生々しく生きている、といったタイプの俳優が好きだから、この作品での演技方法は苦手でした。わかりやすくデフォルメしていても、その方法に細やかさがもっと欲しかったです。

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