ソファー 公演情報 ソファー」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/11 (日) 14:00

    じれったいようなもどかしいようなテンポかと思うと、リアル過ぎて怖い台詞の応酬が
    ぽんぽん!このソファー、きっと私も捨てられないと思うとボロ泣きした。
    お父さん、あなたはどんな気持ちで、あのソファーに座っていたのだろう。

    ネタバレBOX

    舞台上には茶色い革張りの、古い大きなソファーがひとつだけ。
    ゆるくカーブを描くソファ―、これが今日の主役か。

    ひとり暮らしだった父親が亡くなり、実家の取り壊しが決まっている家。
    時々実家に来て父親の世話をしていた妹から「最後に相談したいことがある」と
    招集がかかり、久しぶりに兄弟3人が顔を合わせる。

    「映画監督になりたい!」と東京へ出た長男。
    再婚してえらく若い奥さんをもらった次男。その奥さんも来る。
    そして夫とは別居中の妹。その別居中の夫も来る。

    東京にいて大した手助けもしなかったくせに、近くにいた次男と妹に不満を言う長男。
    妹が父に車の免許返納を説得し、することが無くなった父は庭いじりするしかなかった。
    その結果庭で転倒して死んでしまったのだ、と言う長男。
    妹は後悔の念に苛まれ、最後に父がいつも座っていたソファーをどうしても捨てられない、
    捨てることは父親を2度殺すことになるから。
    だからどうしたらいいかを相談したかったのだと心情を吐露する。

    時折差し込まれる過去のエピソードによって、一家の歴史が語られる。
    「ママ」として夜働く妻が、酔って客のひとりである地元の金持ちの和菓子屋を
    連れて帰宅した時のエピソードは、配役の妙もあって感情移入せずにいられない。
    互いが大切なことはわかっているのに妻は「優しいだけが取り柄の男」と口にし、
    夫は「この人を連れて帰ってくれ」と和菓子屋にタクシーを呼んでやる。
    ソファーがまるで父親の魂が乗り移ったかのように、ふんぞり返って座る和菓子屋を 
    床に放り投げるシーン、この超常現象(?)の場面だけは痛快だった。

    妻が次第に帰って来なくなっても、父は毎晩
    「電気つけっ放しにしてこのソファーで帰りを待ってた」と妹は言う。
    このソファーは父の誇りであり、孤独であり、愛情の全てだったのだ。
    妹のこの一言に父親の無念さや寂しさがあふれていてボロ泣きした。
    このソファーを、捨てられるわけがない。

    結論の出ないソアーの処遇をめぐってぐだぐだと兄弟が言い争う中、
    次男の若い妻が要所要所で放つ天然のひと言がスパイスのように効きまくる。
    妹の別居中の夫も、クッションとしての役割を期待されつつ時にそれを自ら
    かなぐり捨てて極めて能動的に場を回す。
    この外様(?)の二人が冷静に、時に熱く一家に絡む存在感がすごい。
    グチグチのあるあるのリアルさ、漫画のような急展開のバランスが素晴らしい。

    ラストはソファー(イコール父親)のみた幸せな夢なのだろうと思った。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    松本哲也氏の作劇スタイルが何となく掴めた。多重奏。通奏低音から始まり、弦楽器を重ね、更に管楽器を合わせていく。ゆっくりとした立ち上がりに観客はじれるが曲のフォーマットが定まった時、それを破壊する不意の来客の訪問。この展開がどっと受けるとここからは思うがまま、自由自在に観客を操れる。作者であり登場人物でもある松本哲也氏は自身で作品にメタ的なツッコミを入れまくる。この物語が何を象ろうとしているのかを自分自身で確かめるように。

    舞台は宮崎県の実家、6人掛けの立派なソファー。父(佐藤達)が母(江間直子さん)にねだられて無理して買ったもの。母は夜の店に勤めて段々帰って来なくなった。映画監督を夢見て上京した長男(松本哲也氏)、次男(今村裕次郎氏)は若い奥さん(道本成美さん)と再婚、長女(山下真琴さん)は今里真氏と結婚。父が亡くなり実家の処分が決まる。長女は家族全員を呼び集める。どうしても会って話したいと。

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    MVPは道本成美さん。彼女の登場から明らかに空気は変わった。成程、こういう方法論があるのか。骨肉相食むどろどろのどうしようもない話にホームズやトム・ソーヤーが登場してきた時のような爽快感。まあ何とかなるかも知れん!女流棋士高橋和の若い頃みたいでえらく可愛い。松本哲也氏がおもむろに「彼氏とかいるの?」とメタ的に聞くシーンが全てを物語る。(役柄的には弟の新妻なのだから全くの的外れなのだが)。

    江間直子さんは原田美枝子と大竹しのぶをフュージョンさせたようなキャラ。これぞ日本の女優感。
    瓜生和成氏は珍しい役柄。贅沢な使い方。
    今村裕次郎氏が車を動かそうとソファーを立ち、財布の入ったセカンドバッグに手を伸ばす。妻を見て「置いとくか」と行きかけるが松本哲也氏を見てやっぱり持って出て行く。このちょっとした一連の動きだけで人間関係が伝わる巧さ。

    作品の骨格は阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』ではないか。オマージュとしての本歌取、詠み替えだと睨んだ。

    観劇通の玄人が味わう渋い作品。こういうのを普通に楽しめるようになった自分に驚いた。ラストはソファーの見ている夢か。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/10 (土) 19:00

    110分。休憩なし。

このページのQRコードです。

拡大