ソファー 公演情報 小松台東「ソファー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    台詞の仕込みは最小限、見逃すと振りが後で効かない(何かあったかも、と余白は残すが)面があってその分だけ精緻な演技を求める脚本という事になるが、出演者が宮崎弁のエキスパートばかりでない事は(方言が芝居にとって利点になる面はそれとして)幾分たりともハンディとの事実は否めない。という要素は恐らくあったのだがその前に、体調によるうつらうつらが不可抗力に襲い、前半は言語理解が追いつかず。桑野登場の少し前あたりから漸くちゃんと見れた。
    終盤の強く印象を残すくだりがそれ単体で美しく、そこへ至る前段の空白を脳内で再構成し、諒解させるものがあった。而して台本を入手して答え合わせ。あっと言う間に読了、感動を甦らせている。

    ネタバレBOX

    終始心許なく登場していた妻(江間直子)が、ラストに至る場面で初めて、明らかに少し違う雰囲気を発し、目が醒める。若い頃にあった一コマだろうか、夫(佐藤達)が妻のリクエストに応えて奮発した豪華なソブァ上で、昼日中二人がそれぞれ寝そべっている図。やがて夜の店に勤めるママが朝帰りしての睡眠の時間と分かる。夫(父)はいつもソファで寝て母の帰りを待っていたな...。その台詞との符合。やがて夫婦の会話、同窓会の案内が来ていたね、出るの?出ない、友達いなかったもんね、話すやつなどおらん、いつもポツンとしとった、そうやった、私付いて行ってやろうか?え?・・うそうそ。その後、久々に「あの気」がもたげた夫に、妻は一瞬怯むも、弱気に退いた夫へ、妻が寄って行く・・。
    と、末っ子長女の「ただいま」の声。そこから二人は、含羞の夫がソファの端で見守る中、妻が一人また一人訪れる娘息子や姻戚らを招じ入れ、コーヒーを振る舞い幸せそうに大家族の主然として囲まれるように座り、賑やかしくお喋りをする風景を作り出す(親戚にこういうおばちゃんいたなー、と思い出す。訪れる者皆に居場所を与えてやるお節介だが人の心の分かるテンションの高いおばちゃん・・)。母の「コーヒーあんたもいらんね」に皆も素直で断らない。皆で同じコーヒーを手にしようとしたが最後に入って来た次男と長男の前にポットが空になり、「あらーなくなっちゃったー(笑)」。
    それは幸せの図なのだが、皆それぞれの用であっと言う間に舞台をはける。ちょっとした「残念」が運命を岐つ事も・・といった事の象徴か。
    様々に過去を思い巡らして反芻し、時には仮想図をも思い描きながら妻を待ち続けていただろう「弱かった父」も、やがて舞台上を去った後、娘に小さなスポットが当る。父に最も近く父のあっけない無念の死への疚しさを抱え、その父が生涯思いを託しただろうソファを手放し難く家族会議を召集した娘。薄明かりが消えて、芝居は終る。
    蠱惑的に心を疼かせる場面を時々どうにも描写したくなる癖があるが、中々難しい。
    観劇を薦めるしかないが、保証の限りではない。

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    2025/05/17 00:01

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