ソファー 公演情報 小松台東「ソファー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    松本哲也氏の作劇スタイルが何となく掴めた。多重奏。通奏低音から始まり、弦楽器を重ね、更に管楽器を合わせていく。ゆっくりとした立ち上がりに観客はじれるが曲のフォーマットが定まった時、それを破壊する不意の来客の訪問。この展開がどっと受けるとここからは思うがまま、自由自在に観客を操れる。作者であり登場人物でもある松本哲也氏は自身で作品にメタ的なツッコミを入れまくる。この物語が何を象ろうとしているのかを自分自身で確かめるように。

    舞台は宮崎県の実家、6人掛けの立派なソファー。父(佐藤達)が母(江間直子さん)にねだられて無理して買ったもの。母は夜の店に勤めて段々帰って来なくなった。映画監督を夢見て上京した長男(松本哲也氏)、次男(今村裕次郎氏)は若い奥さん(道本成美さん)と再婚、長女(山下真琴さん)は今里真氏と結婚。父が亡くなり実家の処分が決まる。長女は家族全員を呼び集める。どうしても会って話したいと。

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    MVPは道本成美さん。彼女の登場から明らかに空気は変わった。成程、こういう方法論があるのか。骨肉相食むどろどろのどうしようもない話にホームズやトム・ソーヤーが登場してきた時のような爽快感。まあ何とかなるかも知れん!女流棋士高橋和の若い頃みたいでえらく可愛い。松本哲也氏がおもむろに「彼氏とかいるの?」とメタ的に聞くシーンが全てを物語る。(役柄的には弟の新妻なのだから全くの的外れなのだが)。

    江間直子さんは原田美枝子と大竹しのぶをフュージョンさせたようなキャラ。これぞ日本の女優感。
    瓜生和成氏は珍しい役柄。贅沢な使い方。
    今村裕次郎氏が車を動かそうとソファーを立ち、財布の入ったセカンドバッグに手を伸ばす。妻を見て「置いとくか」と行きかけるが松本哲也氏を見てやっぱり持って出て行く。このちょっとした一連の動きだけで人間関係が伝わる巧さ。

    作品の骨格は阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』ではないか。オマージュとしての本歌取、詠み替えだと睨んだ。

    観劇通の玄人が味わう渋い作品。こういうのを普通に楽しめるようになった自分に驚いた。ラストはソファーの見ている夢か。

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    2025/05/11 08:06

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