実演鑑賞
満足度★★
「人と機」は「ひととき」と読む。それが一時なのか、人間と機械という意味なのか解らない。まぁ解らないままで良いと思ってるのだろうが、そういうところが困った作品である。昨年、「悼めば尊し」(コンビニ店員の飯田さん・公演)を見た池内風の青年座の書き下ろし作である。作品をたくさん見たわけではないし、この劇の素材と狙いが劇団と作者の間でどのように合意されていったかは知らない。だが一つの舞台をそういう訳のわからない韜晦趣味で「穏やかに」乗り切れると思っているところが致命的欠陥になっている。
内容は企業ドラマである。中小企業の介護用品製作会社を舞台にして、製品の制作部から製品検品に異動させられた中年のリーダーを主な主人公に、ホットな話題のAI機能の採否、から現代の会社・業界内部の組織経営の話題まで広く織り込んでドラマにしている。
現代の企業に生きる人間たちを描くのは、現代演劇に残された大きな素材領域で、最近でも、中津留、中村ノブアキ、横山と若い人たちもよく素材に選ぶ。みなだんだん上手くなってきた。この池内作品は、とにかく台詞頼み、ほとんど全編登場人物が言葉で説明していく。台詞のテンポは速く、さすがの青年座でも台詞を噛む俳優も少なくない。それでも人物設定が極めて類型的なので話はわかる。そこで何も観客が?と人間的にひかかることがないところが困ったところである。休憩なしの2時間。
前作の「悼めば尊し」は現代の青春物として新鮮だった。ここでは?が現代の若い人たちの心情を見せる糸口になっていた。この新作には見るべき発見がない。次頑張って欲しい。
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/12/17 (火) 19:00
小劇場系の作家の戯曲を青年座が上演。シビアな内容の、企業モノと呼ぶべき作品。120分。
介護用品会社を舞台に、開発と営業の狭間で悩む男と取り巻く人々…、の物語。劇団「かわいいコンビニ店員飯田さん」の主宰・作・演出の池内風が書いたのだけれど、青年座が新たなものを求めているのだと思うと、面白い。事象を淡々と、膨大なセリフで提示するスタイルで、独特の感触を生み出してはいる。ちょっと過剰に見えるし、エンディングにはいろいろ意見があるとは思うが(私はアリだと思うが)、これも池内のスタイルということか。役者陣の巧さは流石、だが、セリフを噛む場面がいくつかあったのは残念。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/12/16 (月) 14:00
座席1階
青年座創立70周年記念公演の一つ。ユニット「かわいいコンビニ店員飯田さん」主宰の池内風が青年座に書き下ろすのは初めて。劇団に書いてくれる新たな作家を発掘する取り組みだと思う。
舞台は介護用品製造販売会社という一風変わった設定だ。褥瘡の発生を抑える介護ベッドの開発を担当していた技術者が、ある出来事の責任を取らされた形で営業部に異動となる。技術者は、販売が好調のAI画像分析を搭載したベッドの動作不良を感じて再検査を求めているが、同期の営業部員は検査に後ろ向きで販売促進を続ける。「何かあったら命に関わる」と、技術者の良心にかけて検査を求めるが、部内では孤立していく。
会社の中の群像劇。掃除のおばあちゃんも含めてユニークなキャラクターがたくさん登場し、それぞれに脚光を当てるという面白い筋立てだ。物語のメーンは、機器の不良にほおかむりして新バージョンの製品の開発を急ぎ、仮に不良だったとしてもそれをなかったことにしてしまうというもくろみとの戦い。AI画像分析というのも今風でいい。
機器の不良を疑わせる事例は、施設でこのベッドを使っている利用者の離床をセンサーが感知できなかったというできごとだ。離床が感知できないと、徘徊傾向がある認知症の人が勝手に施設の外に出て行ってしまう危険性がある、とのことだった。
自分が感じたのは、施設側もこうしたハイテク機器に頼らず、離床が感知できなくても利用者に危険が及ばないような対策を取るべきだと思ったのだが、そのような点には言及はなし。また、今作で登場する離床センサーがどのような形のものなのかははっきり示されないが、アナログ的なものだと、センサーマットを利用者の足がつくところに敷いておけば、マットのセンサーが壊れない限りは離床を覚知できる。こんな細かいところが気になってしまった。
群像劇として、会話劇としては抜群に面白い。だが、ラストの幕切れがいけない。このような終わり方はとても欲求不満だ。まるで、続編がありますよといわんばかりの終わり方に、私は拍子抜けと感じたし、周囲の拍手の状況から、私と同じように感じた人も少なからずいたと思われる。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/12/13 (金)
AI対人間対人間…。過去があっての今、そしてこの先を頷きながら観た。
掃除員さんの旦那さんに対する他人への言い方と本心の違いとか
若い社員の考えとか会社の理不尽とか、色々と考えさせられた。