実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/12/16 (月) 14:00
座席1階
青年座創立70周年記念公演の一つ。ユニット「かわいいコンビニ店員飯田さん」主宰の池内風が青年座に書き下ろすのは初めて。劇団に書いてくれる新たな作家を発掘する取り組みだと思う。
舞台は介護用品製造販売会社という一風変わった設定だ。褥瘡の発生を抑える介護ベッドの開発を担当していた技術者が、ある出来事の責任を取らされた形で営業部に異動となる。技術者は、販売が好調のAI画像分析を搭載したベッドの動作不良を感じて再検査を求めているが、同期の営業部員は検査に後ろ向きで販売促進を続ける。「何かあったら命に関わる」と、技術者の良心にかけて検査を求めるが、部内では孤立していく。
会社の中の群像劇。掃除のおばあちゃんも含めてユニークなキャラクターがたくさん登場し、それぞれに脚光を当てるという面白い筋立てだ。物語のメーンは、機器の不良にほおかむりして新バージョンの製品の開発を急ぎ、仮に不良だったとしてもそれをなかったことにしてしまうというもくろみとの戦い。AI画像分析というのも今風でいい。
機器の不良を疑わせる事例は、施設でこのベッドを使っている利用者の離床をセンサーが感知できなかったというできごとだ。離床が感知できないと、徘徊傾向がある認知症の人が勝手に施設の外に出て行ってしまう危険性がある、とのことだった。
自分が感じたのは、施設側もこうしたハイテク機器に頼らず、離床が感知できなくても利用者に危険が及ばないような対策を取るべきだと思ったのだが、そのような点には言及はなし。また、今作で登場する離床センサーがどのような形のものなのかははっきり示されないが、アナログ的なものだと、センサーマットを利用者の足がつくところに敷いておけば、マットのセンサーが壊れない限りは離床を覚知できる。こんな細かいところが気になってしまった。
群像劇として、会話劇としては抜群に面白い。だが、ラストの幕切れがいけない。このような終わり方はとても欲求不満だ。まるで、続編がありますよといわんばかりの終わり方に、私は拍子抜けと感じたし、周囲の拍手の状況から、私と同じように感じた人も少なからずいたと思われる。