実演鑑賞
満足度★★
「人と機」は「ひととき」と読む。それが一時なのか、人間と機械という意味なのか解らない。まぁ解らないままで良いと思ってるのだろうが、そういうところが困った作品である。昨年、「悼めば尊し」(コンビニ店員の飯田さん・公演)を見た池内風の青年座の書き下ろし作である。作品をたくさん見たわけではないし、この劇の素材と狙いが劇団と作者の間でどのように合意されていったかは知らない。だが一つの舞台をそういう訳のわからない韜晦趣味で「穏やかに」乗り切れると思っているところが致命的欠陥になっている。
内容は企業ドラマである。中小企業の介護用品製作会社を舞台にして、製品の制作部から製品検品に異動させられた中年のリーダーを主な主人公に、ホットな話題のAI機能の採否、から現代の会社・業界内部の組織経営の話題まで広く織り込んでドラマにしている。
現代の企業に生きる人間たちを描くのは、現代演劇に残された大きな素材領域で、最近でも、中津留、中村ノブアキ、横山と若い人たちもよく素材に選ぶ。みなだんだん上手くなってきた。この池内作品は、とにかく台詞頼み、ほとんど全編登場人物が言葉で説明していく。台詞のテンポは速く、さすがの青年座でも台詞を噛む俳優も少なくない。それでも人物設定が極めて類型的なので話はわかる。そこで何も観客が?と人間的にひかかることがないところが困ったところである。休憩なしの2時間。
前作の「悼めば尊し」は現代の青春物として新鮮だった。ここでは?が現代の若い人たちの心情を見せる糸口になっていた。この新作には見るべき発見がない。次頑張って欲しい。