ハーフムーン 公演情報 ハーフムーン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★★

    唐沢ワールドに身をゆだねて大満足
    『アラカン!』で、ニュータイプのバックステージものを見せてくれた唐沢伊万里さんと、テアトル・エコーのタッグ。
    今回は、いかにもいそうな中年夫婦が、どこかにありそうな民宿にやってくる話。作家さんの振り幅の大きさをかんじさせますねー。

    はじまりのところでわたしたちは、民宿の次男坊のもくろみをきかされます。やってくる客に取材して、それをネタにシナリオを書いてデビューしよう! なーんていう。でも、やってきた夫婦のダンナのほうは、きいてもごくふつうのことしか言いません。がっくりくる次男坊…。

    おいおい、唐沢さんのドラマだぜ、これからきみにびっくりするようなことが起きるんだぜ、と客席から心のなかで、わたしは次男坊に語りかけました。

    ネタバレBOX

    その期待にたがわず、いろんなことが起きます。

    まずこの夫婦は、奥さんの発案で、「よりよい夫婦になるための練習」をしに来てるということがわかります。なんだそりゃ? と思うよね。でも、奥さんは自分なりに夫婦のあいだがらに悩んでのこと…。では、ダンナはなんでついてくるか? っていうと、その理由が少しずつわかってきます。

    …と、「夫婦のあり方」を静かに考えさせる展開と見せかけて、次から次へと問題がこじれていき、二度、三度と重なる「まさか!」な大展開に、もう身をゆだねるしかありません。
    この感覚が、気持ちいいんだよなー。『アラカン!』でもそうでした。途中から、「どうなるのか予測もつかない、でも芝居の流れについていけば、ぜったい大丈夫!」っていう心理になる。

    さて、ネタバレBOXとはいえ、ぜんぶのネタをとても書ききれないぐらい豊かな内容なので、わたしが好きな点を並べてみます。

    ・民宿の兄弟と幼馴染の女の子が、最後まで、奥さんのウソを信じて、しかもさらに勝手に誤解を深めてしまうこと。
    ウソっていうのは、奥さんは中盤、感情がたかぶって、自分たちは不倫カップルだと言ってしまうんですよね。その感情のたかぶりの奥には、まさに次男坊ががっかりした「平凡ななれそめとその後のありふれた結婚生活」があることが、観客にはわかってくるんですが、それって、若い3人にはわからないのが自然!

    ・中年夫婦のけなげさ。
    ほんとは何を伝えあわなければいけなかったのか、気づいたふたりは、あるヘンテコな手段でそれを伝えはじめます。
    これがもう、笑わずにはいられないんですが、一生懸命であるゆえなんで、けなげで、かわいくて、笑いながら泣いてしまいます。
    泣けるシーンで笑わせる、これこそ喜劇ですね。
    ちなみにかれらが伝え合うのは、かれらの個別の事情であり、ほかのだれとも違う、自分だけの気持ちです。よくある、「愛してると言葉に出すこと」「感謝の言葉」なんかじゃないんですねー、これが。

    ・対照的に見えた男ふたりが心を通わせるところ。
    主人公夫婦とはいちいち対照的な、初老男性と若い女性の、年の差カップルが出てくるんですが、その初老男性のほうが、ダンナに前述の「ヘンテコな手段」をさずけてくれます。
    そのときに語る言葉、すごくいいですよ。「これならみのり(若い彼女のほう)をあずけても大丈夫だな」と、親みたいな気分になります。
    そして、それまでは対照的なふた組に見えたかれらだけど、たしかさを求めあう気持ちは同じなんだなあ、と気がつきます。

    ・女傑対決。
    民宿の若者3人が主人公夫婦を不倫カップルだと信じ込んでいるなか、なんと「ここに夫が女と来てるはず!」と言い張る女性がとびこんできます。
    観客は、今までのストーリーからいって、「夫を出して!」と言ってくる人物はありえないことを知っています。では、この人はだれ? と思いながら見るんですが、種明かしされるまで観客に何らかの仮説を抱かせたらおしまい。
    脚本はそこは丹念につくられているのですが、役者さんにも隙のない演技が求められます。
    戯画的な演技で、それをこなした女優さん(森澤早苗さん)には脱帽!
    最近気がついたのですが、お芝居には観客が自分を投影できる役も必要だけど、かけらも投影できないどころか、少しでも話がつうじる相手に見えたら、芝居全体がこわれる、そういう難しい役もあるんですねえ。
    『ザ・ワールド・イズ・スターマイン』の十日町くんとか、この女性とか。

    そして、正体をあらわした女性は、宿のおかみさん(日本を代表する声優で舞台女優の太田淑子さん!)と対決するんですが、かわいいかわいいおばちゃんに扮した太田さん、これがまたすばらしい!
    不倫カップル専用の宿になってくれたら巨額の契約金を払うと言われ、「どんな人が来るかわからないから楽しいのに、そんなのつまらないからいやだ」って言うんですよ。
    メルヘンなこと言ってるようでいて、てこでも動かないよ、という断り方ですよね。すっごく「商売人」らしい! こわい!
    なのに、目の前にいる女優さんは少しもこわくなくてかわいいまま! あー、演技ってすごいなあ、と思います。

    あと、空間の使い方がなんとも面白かったです。
    いっしょに見た人がそれをうまく言い表してくれたので、ここにも書いてもらうようお願いしました。
    きっと書いてくれると思うので、期待しててください!
  • 満足度★★★

    唐沢さんに今後も期待したい
    前回「アラカン」で注目した唐沢伊万里さんの脚本なので、観に行きました。

    個人的な感想としては、正直「アラカン」ほどは面白く感じなかった。

    場内は中高年夫婦の姿が目立ち、男女としてのときめきを失った「日本の中年夫婦」特有の問題が描かれ、改めて夫婦の会話の必要性を思い、反省させられました。

    勘違いやなりすましなど、オーソドックスなシチュコメの手法で笑わせ、今後も唐沢さんのコメディは観たいと思います。

    1時間55分で少々長く感じられ、1時間40分くらいに圧縮するともっとテンポよくなるのではと思いました。

    ネタバレBOX

    夫婦の在り方を見つめなおす目的で、民宿にやってくる遠山夫婦が主人公。

    まず、冒頭のシナリオ作家志望の民宿の次男(加藤拓二)と、遠山の元部下で次男とは幼馴染の従業員桃子(沖田愛)との会話が面白くない。

    「北極と南極くらい住む世界が違う」というのも、笑わせるつもりの台詞なのかもしれないが、

    客はシーンとしている。

    コメディは幕開きが肝心だと思うが、面白くなりそうな予感がもてなかった。

    民宿の兄弟のキャラクター設定が平凡で、役者の「間」もよいとは言えず、この2人が出てくると、テンションが下がってしまうのが難。

    兄役の粟野志門が、台詞をつっかえるのも気になった。

    舞台が、民宿ではなく、民宿の付帯施設の「焼き物工房」なのだが、夫婦が部屋に行かずに延々ここで会話するのが何となく不自然でしっくり感じられない。

    登場人物も、当然、民宿ではなく、いきなり工房に入ってくる。

    舞台と設定上の制約がとても気になってしまった。

    ドリフの「もしも」シリーズの民宿コントのような設定の可笑しさもないし。

    夫婦でつくる骨壺の会話はおかしかったが。


    遠山の夫、藤原堅一の好演が印象に残った。

    シチュコメの「間」が身についている。

    不倫宿の企画者・三島役の森澤早苗は面白い役だが、少々演技がオーバーで鼻につく。

    舞台には登場しない遠山家の隣家の人妻と遠山の夫の関係についての説明も、とおりいっぺんで興味をひかない。

    それだけに、遠山の妻(石津彩)がみんなの手前、隣家の人妻になりすまして夫に皮肉を連発するのが笑いにまで昇華しない。

    遠山の妻が民宿の兄弟と従業員に、愛人と誤解されたまま、工房を去る幕切れも後味が悪い。

    台詞に沿ったハーフムーンのお月様の演出は良かったと思う。


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