水彩画 公演情報 水彩画」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-6件 / 6件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    茨城県内のカフェでの二組の客(親子二代の夫婦ともう一組の夫婦)6人による会話劇。
    一方の会話が途切れた時にもう一方の会話が始まるように上手く組まれているが「会話の中の沈黙」もテーマということで大いに納得。
    そして近しい間柄ゆえの妙な気遣いや無遠慮さから生じる気まずい沈黙などリアリティがあって身につまされる……ってか身に覚えアリ。
    で、互いにもう一組の会話も聞こえてしまっていそうなのが気になったりも。(笑)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    劇団普通『水彩画』を観劇。

    茨城弁を駆使した口語演劇。

    あらすじ:娘・あみは父と母を連れて夫と一緒に美術館に行った帰りに、茨城県の田舎町には似つかわしい喫茶店でたわいもない話しをする。隣では結婚間近のカップルが来ている。互いの会話は筒抜けだが、のんびりした風景の中で、淡々と時間が過ぎているように見えるのだが…。

    感想:平田オリザ超えと言わんばかりの口語演劇で展開されていく。
    両親の物忘れが進み始めているからか、「やれ薬は飲んだが?」「トイレの鍵が壊れているとか?」と不毛な会話ばかりが続くが、綿密に書かれている戯曲、演技、演出が三位一体になり、生々しい瞬間を徐々に感じ始めていく。笑いが苦笑に変わり始めると、父と母の将来の不安に怯えている娘・あみが感じる悲劇に否が応でも追随してしまい、鳥肌すら立ってくる。
    『平田オリザは人間が生きている事こそがドラマだ』と言っているが、赤の他人の不毛な会話に己の実生活を感じてしまう。
    何も起こらない、ただの会話の中に大きなドラマが展開されているのだ。
    『映画監督・小津安二郎』っぽいと言われそうだが、遥かに凌駕しているのは間違いない。
    誰が何と言おうと断言出来る、それほどの演劇なのである。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    今回も茨城弁の日常風景を切り取った会話劇。堪能した。
    おなじみ用松亮と坂倉なつこ(奈津子改め)の夫婦役コンビに、娘(安川まり)とその婿(浅倉浩介)がまた「らしい」。
    同じカフェスペースを訪れ隣のテーブルに陣取るカップル(伊島空・青柳美希)も、地元で結婚を控えた風情で年代差もうまく出てる。
    後者の話題が序盤は聞き取れず、両グループ同時進行とは言え(青年団のように)重なる事なく聞き取れるが、序盤での若者コンビの方の会話は四人組に比べると少々理解に難があった。中盤以降漸く会話とそこに込められた感情が見えてきた。
    この二組同時進行の会話劇が、今回の試みであったが、まずまずであった。
    古い夫婦像がモデルになっていると感じるが、2020年代の今も、ああいう感覚は生きているのだろうか。坂倉演じる母の「曲げなさ」が見物だし、用松父のあの感じ(うまく言えない。そういう領域を表現しているんである)も相変わらず良い。

    地元で暮らして行けてる、という所で人物ら全員がとりあえずは生活の安定が約束されてる感があるのだが、今の時代シビアな経済面への言及が、(そういう問題を忘れる時間が有難いのも本音だが)リアルを穿つ劇としては、欲しい所。
    地元で教師をやっていたのが黙っていなくなり、最近東京でNPO活動をやってる事が分った友人が、若者カップルの主な話題で、そのあたりで微かに触れてはいるのだが。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    会場は「すみだパークギャラリーささや」。隣のカフェは入ったことあるけれど、個人的にギャラリーは初。地続きの空間のため、カフェ同様もの静かで落ち着いた雰囲気があります。物語の設定も「洗練されたカフェ」でした。絵画の個展を見に行った帰りにカフェに寄った老夫婦とその娘夫婦。近くの席には4人と面識のない若いカップル。2つのテーブルの会話は基本的に交わることなく、それぞれ別の話題が進行する。とても静かな会話劇で全編茨城弁。この団体の特徴をしっかり反映した一作でした。

    ネタバレBOX

    まず何より、場所から受ける影響が作品の基盤となっています。カフェ公演と劇場公演の丁度中間のような空間になったのでは。観客は、この空間に馴染みながら、出演者6名の静かな会話に集中するのみ。「日常的な他愛のない会話から、時折見せる人間関係の機微」を感じとれる、この団体らしいテキストだと感じました。直接的な描写はほぼないものの、認知症や高齢者介護に関する物語でもあると想像。親世代、子世代、双方にスポットを当てた描き方も、石黒さんの筆の魅力だと感じました。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/06/19 (水) 14:00

    座席1階

    マチネの回だったので、隣のカフェは営業中。その店内音楽がちょうどいい具合に聞こえてきて、いいバックミュージックになっていた。舞台は茨城県内のちょっとしゃれたカフェ。ここで、両親と娘夫婦の4人組み、そして若いカップルの双方の会話劇に注目するという趣向。劇団普通定番の全編茨城弁の舞台だ。

    双方のテーブルの会話がクロスするわけでなく、実際にカフェで行われている会話のようにそれぞれ独立している。ただ、双方の会話が重なるところは少なく、話が重なって聞きにくいということはない。
    会話の中身は、そのような立場になった人なら一度は経験したことがあるような話で、客席は共感できる。若いカップルは地元で同棲中で近く所帯を持とうとしているが、この二人が、東京に出て行ってしまって愛想がない同級生を非難するような場面もある。首都圏とは言いながら東京の吸引力に翻弄される若い世代の思いが少し、興味深い。首都圏以外から東京に出てきた人には「そんな思いもあるんだ」という気付きになるかもしれない。

    劇団の名前の通り、普通の会話劇が進んでいき、盛り上がるところは少ない。だが、普通の会話を会話劇にするのは恐らく、相当高度なテクニックが必要なのだろう。劇団普通も経験を重ね、しっかり若いファンをつかんでいる。普通の会話劇にクスッとしたり、共感したり。こうした演劇体験をさせてくれる劇団やユニットはそれほど多くない。

    ただ、工夫が必要と思うところもある。普通の会話劇の締めくくりの仕方は、「普通」では落胆する人もいるのではないか。舞台も後半になると、「この会話劇はどんな終局を迎えるんだろう」とソワソワしてしまうが、そういう意味では肩透かし。劇団普通の作品では、ヒット作「病室」の方が楽しめる(近々再演もあるそうだ)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    茨城のオシャレなカフェ。用松亮氏と坂倉なつこさんの老夫婦、隣でその娘の安川まりさんと浅井浩介氏の夫婦がコーヒーを飲んでいる。
    用松亮氏の会社時代の同僚、定年退職仲間のハナワ氏の油絵展覧会を見に行った帰り。
    外にはオープンテラスが見え、店内の鉢には蓮とメダカのビオトープが置かれている。

    もう一つのテーブルには結婚前の同棲中のカップル、伊島空(くう)氏と青柳美希さん。高校時代からの親友のカズ君が就職先の教師を辞めて黙って東京に出て行ってしまった。今では杉並区でNPO法人関係の仕事をしているそうだ。カズ君から来たメールの中にこの店のことがあり、コストコ帰りに寄ってみることにした。

    浅井浩介氏は若い頃の前田吟っぽい。
    伊島空氏は若い頃の原田大二郎っぽい。

    高度に練り込まれたコメディ。聞く気もないのに流れてくる他人の会話、それがぼんやりと耳に入るカフェにいる。集まった観客は未知なるジャンルに興奮しているようだ。
    『ドキュメンタル』のような空気感。笑ってはいけない状況で延々と繰り広げられる日常会話。カズ君の話をまた蒸し返すカップル。いやカズ君、そもそも俺知らねえから。もうその話はいいよ。
    個人的にもの凄く憂鬱な出来事があったのだが今作の雰囲気がいい気分転換になった。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    トイレの鍵が引っ掛かり、出る時なかなか開かない。
    土産物コーナーで高価な陶器のカップが売られている。坂倉なつこさんは旦那に買ってやりたいと思うが、用松亮氏は気に入らない。

    安川まりさんが「自分が何が欲しいのかもう分からない」と突然涙ぐむシーンが印象的。勿論介護の話題も出るが自分のしなければならないことと自分のやりたいことについての物語に思えた。誰もが自分が何を考え、他人が何を考えているのかよく分からない。盲目の手探りでそのあやふやなものを確かめ合っているような会話劇。心と言葉の手でそのフォルムを何度も何度も撫で回す。会話って一体何なのだろう?

    演劇的な仕掛けが一つだけある。卓上テーブルランプが店内に二箇所置かれている。それを安川まりさんと青柳美希さんがそれぞれ点けるのだが、その時だけ前夜のシーンだったり帰宅後のシーンだったり時空間が飛ぶ。

    100分は長すぎる。敢えてやるなら逆に休憩入れて3時間半ぐらいこれをやった方がよかった。ランナーズハイに近い内因性カンナビノイド(脳内マリファナ類似物質)が生成される筈。

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