実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/13 (木) 19:00
2回目の観劇。1回目は前の人で視界が遮られ悔しい思いも。なのでリベンジしました。
面白かった。世界観が広く景色が見えて、うなぎ食べたくなった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしい舞台だった。戦争と作家という骨太のテーマを貫きつつ、日常は苦労と失敗の積み重ねで、笑いが絶えない。楽しい時間を過ごしつつ、深く考えさせる。劇団チョコレートケーキで初めて笑った気がする。井上ひさし・永井愛の境地に、さらに大きく近づいたと思った。ただ、笑いの起きたところを台本(『悲劇喜劇』7月号所収)でみると、淡々と書いてあるだけで、演出と俳優が、隠れた笑いのネタを生かしていることがうかがえる。
そういう点では、作・演出・俳優の共同作業で生まれた奇跡のような舞台だった。俳優陣では斎藤茂吉を演じた緒方晋が出色。言葉数は少ないしぶっきらぼうだが、ぐっと抑えたマグマを内に持っている感じが、本当に茂吉に見えた。素晴らしい
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/11 (火) 14:00
終戦直後、郷里の山形県に疎開していた斎藤茂吉と賄いの女性、訪れた息子らを描いたフィクション。
実在した人物を主人公にユーモラスな部分も多々ありつつ反戦も訴えるツクリに井上ひさしの評伝系戯曲を想起しながら堪能。
そして戦中の災難を描くよりも終戦後の平穏な日々の中に浮かんでくる人々の心に遺された傷を描いた方が沁みる気がする。それは「戦争詠みをしたことから歌が詠めなくなった」などの特別なものに限らず「戦争だからしかたがない」と自分を納得させるしかなかった一般人など辛いし哀しいし本当に嫌だ。
また、この前々日に観た悲喜交交「余炎」も戦争を美化したことを悔いる俳人を描いており、その偶然性に驚く。
実演鑑賞
満足度★★★★★
昨年の「ブラウン管」でおや?と思った劇チョコがフェアウェイに戻ってきた
やはり彼らの永遠のテーマは観る者に戦争(に向かわせる「体制」)という不条理を再認識(あるいは若者にとっては認識か)させることだと思う
今回は歌人斎藤茂吉もその軛から逃れられなかった状況を描きながら、戦後間もない混乱の中で国民がいかに多大な苦労を背負わされていたか、どんなに大きな傷跡(心の)が残っていたかを浮き彫りにしていた
村井國夫が体調不良により降板し、緒方晋に交代したが、そんなことはみじんも感じさせない演技だった
彼が演じる斎藤茂吉は当時今の自分と同世代
戦時中に「戦争詠み)」と呼ばれる戦意高揚の短歌を詠んだことで、敗戦後「戦犯歌人」と罵られることになり、歌が詠めなくなっている
そのジレンマや、息子たちへぶつける怒りを味のある演技で描いていた
いつも客演女優が素晴らしい演技を見せてくれるが、今回の柿丸美智恵は流暢な山形弁(途中突然標準語に切り替え爆笑)を操り痛、秘めた悲しみを明るさでかき消したくましく生きる農婦を飄々とした演技で見事に表現していた
劇団員3人は安定の演技
特に心に残る場面2つ
〇 西尾が父である緒方(茂吉も医師)に、軍医として行った仙台の病院で、赤ん坊を背負った傷だらけのお母さんに背中の子が死んでいると告げてしまい、気が付いたら母も絶命していたことを告白するシーン
〇 柿丸が自分の息子たちを「万歳、万歳」と叫びながら戦地に送り出してしまったのだと悔恨の表情で語るシーン
駅前劇場という狭い空間の中で、蔵王連峰を描いたパネルの美術が秀逸だった
それをうまく生かすライティングのおかげで、朝昼夕夜を見事に表現できていた(劇団公式Ⅹ舞台写真参照)
アフター・アクトは今回は浅井伸治だけがシリアス
ある意味双方から見捨てられた「ウェーク島の戦い」での戦友の死は会場がシーンとなっていた
西尾友樹はなんとお料理教室(笑)
劇中話とシンクロしているのだが、味噌汁を作りながらの軽妙な語りは笑いの渦だった
実演鑑賞
満足度★★★★★
随分ご無沙汰してしまった当劇団であるが、観に来て正解。斎藤茂吉という題材を、うっすらと(終盤では濃く)戦争に絡めて描いていた。急遽主役の変更との事だったが、緒方晋の出演も楽しみで観劇した。この人にしか出せない味がある(そういえば一応は関西弁は封印していたな)。村井國夫氏では全く違っただろうと、とりわけ主人公の特徴「雷を落とす」場面で、想像もしながら観た。茂吉の息子二人を浅井と西尾、弟子を岡本、三人のコンビネーションを茂吉に対置させ、第三者の存在として近所の農婦を柿丸氏に振って五人芝居、シンプルな構図も憎かった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/15 (土) 14:00
中身のない戦争賛美の作品を作ってきた斎藤茂吉、戦後、そこから脱却しようと悩み苦しみもがき、回りの人達に支えられ、新たな道に歩もうとする姿が感動を呼ぶ。いい作品でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
久し振りの「新作」と銘打ったチョコレートケーキの公演。高い世評の上に歌人の頂点に立っていた歌人・斎藤茂吉(緖方晋)の敗戦後半年の疎開生活を素材にした力作である。
戦時中、戦争賛美の歌を作って戦争協力したとして、立場が反転した茂吉の日々が、焼け出されて同居していた長男(浅井伸治)、のちに北杜夫となる次男(西尾友樹)、アララギ派の門弟で秘書役を務めていた山口茂吉(岡本篤)、身の回りの世話をしていた現地の農婦夫の守谷みや(柿丸美智恵)との生活を通して描かれていく。
国家が非常時にあるときの芸術家(個人)のあり方というのはチョコレートケーキが何度もテーマにしてきた問題で、今回も主筋はこのテーマに沿って芸術作品と作者の関係が描かれているが、そのテーマの周囲に、渦中にある芸術家の葛藤や、芸術家の家族のドラマ、
父子の関係とか、人が生きていく上で「故郷」が果たす役割、とか人間が生活の中で出会う大小さまざまなドラマを張り巡らせて、単なる歴史秘話ではなく、価値転換の今の時代に必要な現代劇となっている。
フィクションと断ってはあるが、登場人物たちのキャラクターを見せるそれぞれの日々の生活のエピソードの拾い方が非常に上手い。よくある頑固親父もののパターンも生かしながら、生き生きしたリアリテイを失わない。娯楽劇にもなっている。
主演の斎藤茂吉を演じる緖方晋が、一月前に急遽登場することになった代役とは思えない熱演でドラマを引っ張っていく。関西の小劇場の俳優だが、三年前のペニノの「笑顔の砦」の初老の漁船の船長が。斎藤茂吉とは対照的な第一次産業に生きる男を演じて絶品だった。代役で賞というのはあまりないが、それに値する出来である。チョコレートケーキの中軸の三人。それぞれのドラマの中での役割を演じきって快演だ。よく客演する農婦の柿丸美智恵は、若い頃は都会に女中奉公に出て短歌を知っていた、という面白い役柄を、型にはまらない柔らかな表現で演じてよかった。
疎開先の部屋を囲んでホリゾントには山頂に白い雪の連なる故郷の山が描かれている。最後にその美術が生きることになるが、それは見てのお楽しみにしておこう。本も役者も揃った今年の収穫に挙げられる舞台である。早い機会に、池袋の東芸の地下とか、トラムなどで再演をみたいものだ。補助席も出て満席。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/11 (火) 14:00
芸術家の、晩年を迎えた人の、再生プロセスを目撃したような感覚。
カギを握るのは、普通の人々の痛みを伴う素直で繊細な心情だった。
柿丸美智恵さんが読む短歌にボロ泣きする。
誰かが短歌を読むのを聴いて泣いたのは、初めての経験だ。
緒方茂吉、その後の人生も観たくなる。
実演鑑賞
満足度★★★
「あかあかと一本の道とほりたり たまきはる我が命なりけり」
アララギ派(正岡子規の信奉者)の師である伊藤佐千夫が脳溢血で早逝。「師匠の照らした遠く続くこの一本道を魂の極わるまで歩き続けなくてはならない。」との覚悟の歌。
正岡子規の掲げた写実(写生)主義とは、絵画の方法論と同じく現実をありのままに写すこと。
更に斎藤茂吉はそれを深め、『実相観入』という造語を生み出した。自然と自分とを同一化し、対象に観察者である自己の存在をぶつけて生命そのものを写すこと。
1945年9月、敗戦してまだ一ヶ月、混乱の世相。郷里の山形県金瓶(かなかめ)村で妹の嫁ぎ先の離れに疎開していた斎藤茂吉(緒方晋氏)、63歳。精神科医で歌人。戦時中に「戦争詠み(時局詠)」と呼ばれる戦意高揚の短歌を詠んだことで、敗戦後「戦犯歌人」と罵られることに。近所の農婦(柿丸美智恵さん)が賄い婦として食事の世話をしてくれている。様子を見に東京から立ち寄った次男(西尾友樹氏)は手紙で兄である長男(浅井伸治氏)と斎藤茂吉の弟子である山口茂吉(岡本篤氏)を呼び寄せることに。
MVPは柿丸美智恵さん。実質、彼女が主人公なんだろう。凄腕。
西尾友樹氏は非常にコミカルな役を怪演。異常にどったんばったん地面に転がり、全身を使って笑いを取る。肘上に痣が見えた。かなり身体を酷使した役作り。煙草やマッチが散らばり、土塊が散乱。
緒方晋氏は大御所役者の風格。体調不良で降板した村井國夫氏の代役なのだがそれを全く感じさせない。彼以外考えられない。
戦後の松竹映画の雰囲気。淡々とした描写を重ねて内面を風景で補完させる。
観れるのであれば必ず観ておくべき作品。
是非観に行って頂きたい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。見応え十分。
斎藤茂吉の心情を抒情的に描いた人物伝。物語の面白さは勿論だが、舞台美術が茂吉の心、いや戦後日本の空虚さを表す 空間(空隙)芸術といっても過言ではない。登場人物は5人、何気ない親子・日常会話にも関わらず その濃密さ、無言の間(ま)の中にも葛藤や情愛といった心の機微を感じさせる演技が上手い。
物語は、終戦直後の1か月、そして山形県金瓶という地(疎開先)の設定が妙。歌人 斎藤茂吉という実在の人物をモチーフにしているが、フィクションであることは言うまでもない。しかし、描かれている状況や今後を考えると、そこには多くの人々が直面するであろう課題・問題が浮き彫りになってくる。つまり老いと喪失感である。そこに少しの慰め(忘憂)を求めるとすれば、故郷という地---雄大な自然を背景にした人間ドラマが息づいてくる。
(上演時間2時間 途中休憩なし) 追記予定
実演鑑賞
満足度★★★★★
斎藤茂吉役の緒方晋氏が絶賛に値する名演。脇を固めるチョコレートケーキの面々らが余裕の好演で支える。ストーリーもじんわり伝わる暖かみがあり、今日は良い芝居を観たという気持ちでうれしくなる。
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日拝見しました。緩みなく、淀みなく、淡々と物語が進行していく感じがうまいなーと、もう芸術の極みに達している感じがしました。勇気いただきました。