実演鑑賞
満足度★★★★
渡辺源四郎商店ではほぼ地元言葉(東北ー青森)を使うので話も勢い地元ネタだ。そこで言葉の醸すコミカルさ、自虐のニュアンスもほんのり加わり、それは地元への裏表無しの愛情、愛着を示すが、私たちはこれを通して普遍的な命題と向き合わされる。
今回はある意味マニアックな青森の歴史ネタ「津軽vs南部」に材を取り、マタギの者たちのドラマを展開した。領土の境界は山野にもあれど、共存を実現していた津軽と南部それぞれのマタギが藩事情に絡め取られ、要は「戦争」に巻き込まれて行く。時折現われる藩の役人が村へ干渉しマタギの生きる世界を狭めている構図がある。一方村人の中では山中で倒れていた娘を助けた津軽の男が良い仲となり、ちとぼんやりなこの男は娘の告白通り彼女を「山の神の化身」と信じる。この娘と男は対立を回避する事に貢献しもするが、やがてこの娘が南部出身であり身内を津軽に殺された恨みから南部側のスパイとして津軽に入り込んでいた事が分る。
些か荒唐無稽な話だが、藩から「南部への急襲」を指令された津軽マタギが「攻めるふりをする」作戦で乗り切ろうとするもそのきっかけが本物の戦に発展してしまうという「ほら見た事か」と言いたくなる筋書きの中に、歴史の真実が込められている。攻撃する「ふり」と、攻撃を正当化する「大義」は空虚である点で似ている。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/05 (日) 14:00
「方言」って何言ってんのかわかんない方が断然面白い!要は話の筋が解ればいいのだ。
変に台詞を解りやすくせず、超アナログな手法で観客に翻訳を伝えるところが秀逸。
大笑いしながら戦争の愚かさ、無意味さを痛感させる、なべげんのこのテイストを心より愛す。
実演鑑賞
満足度★★★★
田町駅での安全確認で突然電車が線路でストップ。やっと動いて降りられたが、乗り換えの電車が全く来ない。運良く何とかギリギリ間に合った。
ここ最近、凄え作品ばっか観ている感じ、何か申し訳ない。金を払えば良いものが観れる訳でもないのに。
舞台前に立っているインディー・レスラーみたいなゴツイ人が作・演出の畑澤聖悟氏だった。(絆會・織田絆誠っぽくもある)。
主演の三上陽永氏がハマり役。
ヒロインの木村慧さんは福原愛に似た美人。
山上由美子さんも重要なパーツを担う。
アイヌ娘の三津谷友香さん。
工藤良平氏は石破茂似。
音喜多咲子さんは子供役で見事。
ドラムの白石恭也氏は猿岩石の森脇っぽい。硬質な音が効いている。
ギターの高坂明生氏、パール・ジャムの曲のフレーズを入れたり、なかなかやるな。
16世紀安土桃山時代、南部氏が治めていた現在の青森県と岩手県の北部。1571年、家臣の津軽氏が謀反を起こし、強引に独立を果たした。(現在の青森県西部)。
江戸時代になり南部藩、津軽藩となっても諍いは続く。1714年、藩境を巡っての烏帽子岳での紛争は幕府の調停が入るものの遺恨を残した。(『檜山騒動』)。
1821年、津軽藩主を暗殺しようと大名行列襲撃を企んだ南部藩の相馬大作が死刑になっている。(『相馬大作事件』)。
時代は明治元年、新政府軍と旧幕府軍の戦闘は北へ向かう。
川を挟んで何百年も憎しみ合う津軽と南部。だがこの村の者達は皆マタギ(東北地方の山間に暮らす狩人)。山の神を信仰し、熊(いたず)を化身と考える。何とか殺し合わずに済む方法を模索する。
客席でガチガチに入り込んでいる女性がいて、相槌を打ったり悲鳴を上げたり、心配になる程、物語にのめり込んでいた。これはそんな凄え舞台だってこと。
MVPは木村慧さん。ラスト・シーンは詩だ。
是非観に行って頂きたい。