実演鑑賞
満足度★★★★
渡辺源四郎商店ではほぼ地元言葉(東北ー青森)を使うので話も勢い地元ネタだ。そこで言葉の醸すコミカルさ、自虐のニュアンスもほんのり加わり、それは地元への裏表無しの愛情、愛着を示すが、私たちはこれを通して普遍的な命題と向き合わされる。
今回はある意味マニアックな青森の歴史ネタ「津軽vs南部」に材を取り、マタギの者たちのドラマを展開した。領土の境界は山野にもあれど、共存を実現していた津軽と南部それぞれのマタギが藩事情に絡め取られ、要は「戦争」に巻き込まれて行く。時折現われる藩の役人が村へ干渉しマタギの生きる世界を狭めている構図がある。一方村人の中では山中で倒れていた娘を助けた津軽の男が良い仲となり、ちとぼんやりなこの男は娘の告白通り彼女を「山の神の化身」と信じる。この娘と男は対立を回避する事に貢献しもするが、やがてこの娘が南部出身であり身内を津軽に殺された恨みから南部側のスパイとして津軽に入り込んでいた事が分る。
些か荒唐無稽な話だが、藩から「南部への急襲」を指令された津軽マタギが「攻めるふりをする」作戦で乗り切ろうとするもそのきっかけが本物の戦に発展してしまうという「ほら見た事か」と言いたくなる筋書きの中に、歴史の真実が込められている。攻撃する「ふり」と、攻撃を正当化する「大義」は空虚である点で似ている。