実演鑑賞
満足度★★★★★
いわいのふ健さんの回を拝見しました
分かりやすいストーリーと役者さん方の素晴らしいお芝居で、あっという間の2時間でした。。。
出来れば再公演の際は、他の方が演じたジョーも拝見したいと思います。
本題から脱線する感想ですが
舞台のセットが物凄く良く出来ておられまして感動!
チケット代を考えると、なんだか申し訳ない感じすらします。
久々に当たりの舞台に遭遇出来なんだか得した休日の一時でした
ありがとうございました!
実演鑑賞
温泉ドラゴン『キラー・ジョー』トリプルキャスト:いわいのふ健さんの回を観劇。
「底辺を生きる家族による、人生一発大逆転をかけた保険金殺人計画!!」という触れ込みや、暴力描写・性暴力描写・セクハラ描写・流血描写・火薬による銃の発砲などのトリガーアラートの発表から覚悟して劇場へ。
客席に座り、舞台を見た第一印象は「劇場と合っているなあ」という感触。冒頭からグッと物語の中へと引き込まれ、観ながら解釈や見解などを考えることなく、ただただ目の前で起きる出来事を固唾を飲んで目で追っていた。「シーン」というより「出来事」という感じ。そういう意味で、「演劇を観た!」という感覚や余韻がとても強い作品で、そういった経験が久しぶりであったことにも気がついた。
お話自体は本当に救いようがなく、一人として心を寄せられる人物がいない物語で、人に薦めるには勇気のある作品でもあったけれど、安全地帯からそう思い込んでいることそのものにも自分の暴力性をふと感じるような。そんな瞬間も押し寄せた観劇だった。
何よりも劇団としての在り方が素晴らしい。前作『悼、灯、斉藤』から一転、同じ家族モノとはいえその振れ幅にまず驚き、メンバーに劇作家が複数いながら海外戯曲にも取り組むという果敢さ、過去作品がどれも似通うことなく、一つ一つ世界が独立している点においては演劇を上演する「劇団」というカンパニーとしてある種の理想を形にしているとも考えられるのではないだろうか。
実演鑑賞
満足度★★★★★
なんと言っても脚本がよくできている。現代の最後の晩餐である。
五年ほど前には俳小が池袋で上演したときも、前評判で完売した戯曲を演出のシライケイが自らの劇団温泉ドラゴンに持ち帰っての再演である。主演のイワイノフだけが同じジョーを演じるほかはキャストは全員変わって、レベルは大きく上がった。俳小が海外戯曲上演の枠を出なかったところを、おもいきり温泉ドラゴン的に振り切っていて、テキストレジも前回とはかなり違う。その功罪はあるが、今回はかなり手練れの客演俳優たちが、生き生きと底辺生活者の切ない物語を力演していて劇場内息をのませる迫力はある。五十嵐明の無気力、谷川清美の勝手放題、内田敦美の無知の純情など、胸をつく力演である。内田敦美は新鮮な上、技術的にも幼児性を工夫して演じていて、ここは特筆されて良い。クリスも脇に助けられた。俳優の力演が見所である。
一方、舞台は初演より、かなりダイナミックな悪党ものの作りになっていて、そこが疑問でもある。
細かいところから行くと、場面をトレーラーハウスから、廃屋ふうな一軒家にしたのが解らない。折角の絶妙の舞台設定の象徴性を捨てている。その上、客席の蹴込みに花を飾ったのはオセンチでいただけない。登場人物のキャラクターにも、アメリカの原作にはなかったに違いない日本的情念(例えば、兄の犯行への突然の変心、とか妹のヴァージン性の強調とか)が組み込まれていて、それが折角の作品独特のドライなタッチを、日本観客向けにしてしまっているようにも思う。(現戯曲の翻訳をきっちり読んでみたくもある)。
中段まではほとんど初演に沿っていると思うが、中盤の家族内の目を覆いたくなるような争いが、目に見える形で演じられていて、それはそれで舞台表現になっているが、そこまでやる必要があるかどうか。ジョーのペニスをドッテイに口淫させる魔面などは戯曲では裏にしているのではないだろうか。倉の善良な客は息をのんでみていたがやり過ぎである。
と、いろいろ言いたいことはあるが、シライケイタがこの戯曲を俳小の初演ような翻訳調(それでも十分に面白かった)でなく、温泉風に取り組んでみた成果は上がったし、良い試みだった。昼間から満席の劇場には、中年の下町の観客もいてそこも新鮮な劇場風景だった。
実演鑑賞
満足度★★★★
人間の欲と色と愛憎がぎゅっとつまった、こってりどろどろの濃ゆい芝居であった。面白い。殺し屋ジョー(いわいのふ健)以下、兄クリス(山崎将平)、妹ドティ(内田敦美)も、それぞれの役をよく演じていた。
後半の見込み違いから、フェラチオみたいなきわどいシーンも直球ど真ん中で堂々と演じ、壮絶な家族(?)喧嘩の熱演はすさまじかった。本物かと見まがうような血みどろの熱演である。そしてこの熱い悲劇が、人間の愚かさを語っていて、俯瞰してみれば笑える。ジョーが最初にいう「家の中のけんかが、警官がもっとも怪我をするものなんだ」とか、ドティの「誰かが私を怒らせないかぎりね」とか、何気ないセリフが伏線になっている。話の展開の面白さといい、よくできた台本である。