かもめ 公演情報 かもめ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    愉しい観劇であった。俳優諸氏が提示するキャラが芳醇で堂に入っていて(過去観た「かもめ」だって役者は堂に入っていたはずなのだが)、本物だな、と思わせるものがある。翻訳劇である「かもめ」が持ち得る世界観の研ぎ澄ました一つがここにある、と思った。発する言語の意味ニュアンスは的確で切れ味よいが、役人物の性格、心理といった側面からのアプローチで果してこういう仕上がりになるだろうか・・?(研究所の設立者である故・伊藤氏は大変厳しいであったと聞いた事があるが、娘に受け継がれたそのメソッドを聞いてみたいものだ。)
    劇空間の快楽。救いのない苦い物語を観客に飲ませる甘味さがある。

    ネタバレBOX

    温暖となったこの日、劇場内も半端なく暑かった。そんな中、大ラスでトレープレフはニーナとの久しい対面の後、絶望を噛み締めてその時点までに書いていた原稿を破くのだが、一枚一枚、同じテンポで八等分に破いて行く時間は暑さも手伝って耐えがたいものになった。8枚近く破いていたが、断念の意志と未練との分裂した感情からか、死への準備の時間だったか・・意味的には解釈も可能だが、自分が生み出した言葉を無意味だと宣告する行為の中に、自棄の感情が突起のように小爆発が起きないものか・・存分に未練を湛えながら、自分を死へと追いやるという虚しさ、「死に価しなかった死」(中二病的な?)としたかったのか。一時的な衝動による自死=軽い死ではない、という事を示そうと、自死は衝動的な死以外の何物でもないのではないか。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    凄く面白かった。何かチェーホフが初めてしっくり来た。鈴木清順の後期、『夢二』みたいな質感。演出の画角がバストショットで日本人風に繰り広げられる為、非常に解り易い。演出家の解釈が映画的でキャラクターをきっちり説明してくれている。思うに戦後の日本映画はかなりチェーホフに影響を受けているのだろう。起こる大事件は全て噂話、観客にはその隙間を垣間見せるだけ。ほんの少ししか見せず、観客の想像力を刺激して作品を補わせる手法。

    役者のレヴェルが本物。こういう奴が観たかった。
    ピアノを弾き、壁に何かを書き連ねるトレープレフ(喜多貴幸氏)。作家志望の青年は田舎の叔父ソーリン(竹内修氏)の屋敷に滞在している。その湖畔にある屋敷の一つに住む地主の娘、若き美しきニーナ(藤沢玲花さん)を主演に自作の舞台を発表するのだ。彼の母親アルカージナ(中込佐知子さん)は有名な大女優で著名な作家トリゴーリン(田中飄氏)を愛人として引き連れている。叔父の屋敷の支配人(執事)シャムラーエフ(中川香果〈かぐみ〉氏)と妻ポリーナ(須川弥香〈みか〉さん)、その娘マーシャ(安田明由さん)。マーシャに求婚している教師メドヴェージェンコ(佐藤幾優〈いくま〉氏)。やたらモテる医師ドールン(早船聡氏)。
    屋敷の中庭の特設ステージでトレープレフは舞台を開幕。古き悪しき閉鎖的保守的な現代演劇界への宣戦布告、未だ誰も見ぬ全く新しき革命的作品のつもりだったが、ろくに観て貰えず嘲笑され全く相手にされやしない。傷付いて途中で打ち切り立ち去る。ニーナは有名な作家、トリゴーリンを紹介されて夢中になる。

    大都会モスクワで女優になることを夢見るニーナ、藤沢玲花さんが美しい。有名になることへの幼稚な憧れがリアル。
    トリゴーリン、田中飄氏はウィレム・デフォーと佐藤浩市を足した感じ。
    ドクトルを誘惑し追い回すポリーナ、須川弥香さんの怪演に客席がどっと湧いた。
    トレープレフを恋するマーシャ、安田明由さんは喪服姿のゴスロリ腐女子。二階堂ふみとかがやりそうな役。この過剰な現代風アレンジは正解。
    嫌味な大女優アルカージナ、中込佐知子さんは桃井かおり調。こういう役に日本人は皆、桃井かおりを連想する。それだけイメージが強烈なのだろう。

    この遣り口で『桜の園』や『三人姉妹』はどうなるのか?観てみたい。
    かなり面白いので是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    第四幕が余り好きじゃない。ここの解釈が違う。(何が正解なのかは分からないが)。ここはふざけたチェーホフの内的自己達の一人がじゃれ合いの宴からふと酔いが醒め、突然自死する流れ。茫然としているのは書いたチェーホフ自身。何も死ぬことはなかったじゃないか、と。自分の中に残った誠実、イノセンス(無垢)、かもめが死んでしまった。そこが唐突すぎて終わりの為の終わりみたいになってしまっている。トレープレフとニーナの対話の描き方をもっと深く潜らないと、冴えないマザコン文学青年が失恋して自殺にしか見えない。多分、そうじゃない筈。

    客層がキツい。俳優が呼んだ知り合い、自称業界人なんだろうけれど酒飲んでスマホでLINEして寝て、時間潰しにパンフをパリパリ音立てて。つまらなかったんだろうが、せめて前の方には座らないでくれ。役者がどんなに良い芝居をしても台無しだ。後ろの方で時間を潰していて欲しい。

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