コンラットを踊る 公演情報 コンラットを踊る」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     華5つ☆ タイゼツベシミル! 尚ギャラリーXで40点程の写真展を見ることもできる。樹木に転写したユニーク写真展。入場に別途料金は掛からない。たった千円でこれだけ素晴らしい舞台を観ることができる。

    ネタバレBOX

     ヴィエルシャリンは2013年にも来日しており矢張りシアターXでブルーノ・シュルツの「マネキン人形論」を上演しているが、この時の舞台も卓越した素晴らしい舞台であった。10年ぶりの再来日で今回の出し物はポーランドが国土を19世紀に喪失しポーランド語を用いることができたのは家庭を除き教会内と劇場だけであった。この時代にロマン派の大詩人として名を成したAdam Mickiewicz(アダム・ミツキェーヴィチ1798~1855)は、国土も主権も喪失したポーランド人にそれ迄使われていたポーランド語より強靭で独自な近代ポーランド語を創造し世界中に居るポーランド人にポーランド語の自治圏を提供したのである。1830年の11月蜂起は国民政府を樹立したものの翌年10月に帝政ロシアに鎮圧され4万の死傷者を出した。鎮圧後1万を超える亡命者を生み多くの者が流刑に処されたりロシア軍に徴用された。20世紀に入って100年以上も制圧されていたポーランドは一旦国土と主権を回復した時期があるが再びそれらを喪失したことは歴史の教える通りである。一方、このように理不尽で非人間的な状況に置かれて尚ポーランドは再生した。その原動力になったのがミツキェーヴィチの作品群によって伝え続けられたポーランド語とポーランドが理不尽な苦悩の犠牲者としてのたうった歴史をキリストの受難と重ねその苦悩故に復活するという力強いヴィジョンであったということができよう。因みに生まれがリトアニア大公国であったミツキェーヴィチはクラクフもワルシャワも生涯訪れることが出来ぬまま世を去った。
     現在今まさにパレスチナ人が体験を強いられている理不尽極まる受難もまたパレスチナ人とパレスチナ復活という未来へ向かっての試練だとしたら? 全く先の見えないこのような苦悩の中でパレスチナ人の中から新たな救世主が生まれる物語をマフムード・ダルウィーシュに匹敵するような才能を持つ表現者が現れて描ければイスラムフォビアも駆逐され、平和的解決の道筋が開けるかも知れない。
     今作は全く古びない、当に現在の世界状況を如何様に滅びから救うかという難題に最も果敢にそして回り道であるかのようにみえて恐らく最も早い解決法さえ示唆してくれるように思われる。
     劇団ヴィエルシャリンの思考が素晴らしいばかりでなく、今回の上演に当たってチョイスした場面が極めて適格であり、演出、演技、ダンス、ピアノ、フルート、ヴァイオリン、アコーデオンの生演奏奏者たちの腕も大したものだ。無論、間の取り方、終始昏い照明も内容と密接に絡むと同時にマッチし、変更が基本的に出来ない台詞に対して即興を基本に踊られるダンスの素晴らしさ。変わらない部分に対する即興の意味する処を追求する姿勢の底にあるヴィジョンの素晴らしさ迄観客が気付ければ、この舞台の質の高さは文句のつけようがあるまい。

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