実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/26 (火)
まず劇場に入り舞台美術に目が釘付け!いったい何が始まるのだろうか!??と。
そして始まると…。そのための客席前方の空きだったのか!
後方で前の席に大きな方が、なので三分の一ほど視界が削られてしまったけれど、舞台に鏡が使われていて、それに映る世界もまた良かった。
現実味があるだけに恐ろしく、今後どうしてゆけば良いのかも託される終わり方で、とても楽しめました。
実演鑑賞
満足度★★★★
2時間30分は長くて休憩欲しかったと思ったけど、最後まで集中力を途切らせずに観られたので、見応えある力作だったのは間違いないかな、と。
鏡を使った舞台美術やホラー映画的な音響はすごく効果的ではあったし、異空間にある楽しみは存分に味わえました。
が、逆にこういう見せかたが、ホンスジ部分を曖昧にした気がしないでもない。
ただ、この舞台のマジックが無かったら、集中力持たなかった気もするから、考えるところ。
作り手が感じる学校への違和感を感覚的に味わうって意味だと成功してるけど。
客観的に俯瞰的にこのテーマを理性的にって観方をしたいと思ったら、雑音が多い気も。
実演鑑賞
満足度★★★★★
今年一の衝撃。堤さんの演技に魅入り、心を軋ませる音響と心情を映し出す照明であっという間の150分。
観客の想像をかき立てる物語の結末がとても印象深い。終わりのない余韻を感じずにはいられない。
救いや希望はあったのか?無かったのか?
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/26 (火) 14:00
事前情報の通り今までなかったタイプの作品ながら漂う雰囲気はまさに鵺的。いわば「鵺的・ネオ」か?
観ている途中で「どこか爽快感があるのは何人かの人物が"真っ直ぐ"だからか?」と思ったがその後「いや、全員が"真っ直ぐ"だ」と気付く。
しかし"真っ直ぐ"ではあるがそれぞれ方向が違っていて、それが事態を混乱させているのかな?的な。とはいえ、その真っ直ぐさゆえ後味が悪くなく、鵺的にしては珍しい。(笑)
珍しいと言えば装置も具象的なことが多いが今回は上手手前が高く下手奥が低い傾いた床に下手側と奥をハーフミラーフィルムの壁(?)を立て、椅子(教室用&パイプ椅子)と机(?)を随時配置する抽象的なものであるのも珍しい。(奇しくも翌日下北沢で観た芝居のそれと共通点アリ)
一方、途中で「あること」が判明して「そういうことか……」と思ったのもつかの間、「だとするとあれはどっちだ?」などと却って疑問が増えてしまうのはいかにも鵺的?(笑)
本作を経て今後の鵺的がどうなって行くか楽しみ♪
実演鑑賞
満足度★★★★★
千秋楽。
学校は社会の縮図であり、社会の鏡だと常に思っている。世の中の全てがそこにあると思っている。そういう覚悟でいる。
だからこそ、学校だけは正しいことが罷り通る世界でありたい。うまくいかなくとも、そうあろうとする姿勢だけは持ち続けたい。教室を囲む舞台半面の鏡が外界との壁であり、隔たりでありながら、社会を映し出していることを、時に彼らの向こうに客席をも映しながら『お前はどんなんだ⁉️』と突きつけてくる。
「嫌な世の中だなぁ。」
ずっしり重い。社会に対する若者の苦悩や嫌悪。そう思わせてしまう世界を作ってしまった大人の責任を感じて気が滅入る。
監視社会。盗聴、盗撮。
隠し録り、隠し撮り。それを利用して誰かを陥れる。匿名で安全な場所から世に晒して攻撃することで自分を守る。悦に浸る。現代社会を歪ませたのは、間違いなく、米国が生み出したインターネットだと思っている。もちろん便利であり、化学や科学に罪はない。使う人間が未熟で愚かなだけだ。
「誰が見ているかわからない。」
人を信用できない世界。本音を隠してたてまえの鎧で完全武装してパーソナルスペースを守らなければ生きていけない。安心できる場所なんてない。だから、一歩でも踏み込んで来ようものなら徹底攻撃。それもかなりの粘着性をもって。
少子化は甘やかされる子どもを生み、甘やかす大人を生む。大人が大嫌いな思春期の子どもに気に入られたい大人は、大嫌いな大人の代表として子どもの側で子どもの成長を願って心に負荷をかけている教師を攻撃することで機嫌を取り、存在を示そうとする。それが愛情のカタチだと思い込んでいる。厄介なことだ。
賢く立ち振る舞っているようでも、子どもは子ども。身を守るために上手いこと手を打ったと思ってもボロが出る。やっちまったと、失敗した、マズイと感じたあの子はどうするのだろう。
矛盾だらけのエゴが渦巻く世界。それでも、現実の戦いに戻る人たち。そして、姿を消す二人。彼女はどうするのだろう。
ワタシは……どうするのだろう。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/28 (木) 19:00
初日に観て面白かったので楽前に再度観た。やっぱり面白い。(5分押し)142分。
気になったことや思い出したことを徐々に書いていこうと思う。
・脚本の高木は学校が嫌いだと言うが、学校のことをよく分かっている、というか、学校が社会からどう思われているのかがよく分かっていると思う。
・例えば、男性教師3人がどうしようもないこととか…。ただ、あのような人は今のマトモな学校では教頭(今は「副校長」ということが多い)になれないんじゃないか。
・カントリーマームのくだりは、学校あるある、だと思う。ああいう風に、ゲーム風と言うか、ああいった形にすることは学校ではよくあるように思う。
・
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日。
個に応じた教育が叫ばれて久しい。その理念は正しいし、そうあるべきだけれど、ネットの匿名で誰かを叩くことでストレスを解消するような現代では、ただ教育力を失っているように思えてならない。生徒や保護者の顔色ばかり伺って当たり障りのないことに終始する学校で夢は語れない。夢は育めない。
世に学校へ行けなかった人はいても、学生でなかった人はいない。エピソードはどれも、うんうん そうだそうだと頷けるモノばかり。大人になれば、それはちっぽけなことなのだよと分かっても、その時はその世界が人生の全てであり、うまくいかないことがこの世の終わりのように思えてしまうもの。けれど、今なおそんな若者の中に立ち続ける大人は、それを客観視させてもらえない。だから……この作品から少しばかりの光が見出せないかと願いながら150分を生きてみる。
良い作品はあっという間と言う。そうそう……いや、それは違う……そんな感情にグラグラと揺さぶられていたら、突然その時が訪れた。こんなに短い150分を経験したことがあっただろうか。
遠く彼方に光は差していたのだろうか。差しているのだろうか。混乱したまま数日を過ごしている。答えなんて見つからない。けれど、少しの勇気を渡されたような気もしている。もしかしたら責任なのかもしれない。千秋楽を観た時、もう少し先へ進めるだろうか。光を感じることができるのだろうか。それはわからないけれど、もう一度あの150分を生きることが嫌ではない。
少し違う立場からアプローチする井神沙恵さんととみやまあゆみさん、パラレルワールド的なハマカワフミエさんが作品を色鮮やかにする。
堤千穂さんが立ち上げたキャラクターが秀逸。同僚に居たらどう接するのか、自分でも想像がつかない。ただ、本音をぶっちゃけてしまうヤラカシ具合が似ていて苦笑する。
幸あらんことを願う。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/23 (土) 14:00
生徒に寄り添う理想と権実に揺れる学校現場のお話。終始緊張感ある舞台でしたが、終盤、生徒の親が出てきてから更にヒリヒリとした雰囲気に。
照明が美しかった。
チケットは残り少ないみたいですが、お勧めです。
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇場に入り、あの舞台セットを見た時、これは今までの鵺的とかは違うようだ、演出家も小崎愛美理さんだし、どうなんだろう?と思ったが、やはり鵺的は鵺的であった。素晴らしかった。
教師という職業をどう捉えて仕事をしているのか、それは様々であって、でも誰も悪い人なわけではない。それは生徒も同じで。
学校が舞台の芝居はたくさんあるし、同じようなテーマの芝居もたくさんあるだろうと思う。
でも、そこは鵺的。
嫌なところを突いて来るなというか、なるべくなら見たくない、見ないようにしているところを見せて来る。
素晴らしかった。
役者さんたちはみんなとてもいい。
そして舞台美術、照明、音響、脚本、演出。
改めて、芝居とは総合芸術であると思った。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/21 (木) 19:00
期待の劇団・鵺的の大作で確かな見応えがあった。142分。
学校を舞台に「臨時的任用教員」の道原(堤千穂)が出会った生徒と職員が作る風景を興味深く観た。こういう人っているよな、と思わせる典型的な人物がいっぱい登場する中で、登場しない男子生徒を軸に振り回される事件が続く。リアルでもありながら、ギリギリでファンタジーとの境目を綱渡りする脚本も見事だし、それを体現する役者陣も(演出も)見事。加えて舞台美術も凄くて、上手から下手に傾斜する舞台の奥に何面かのカガミを組み合わせ広がりを作るのも巧い。
開演5分前から客電を点けたままで役者がアクトし、客電が落ちて開演して142分の長さは、ちょっと辛い。
生徒役の吉水と野花を入れ替えても面白いと思った。久々に観た渡辺詩子が颯爽としているのも嬉しい。
実演鑑賞
満足度★★★
女優・堤千穂さんの新境地!ほぼすっぴんで新しい教師像を生み出した。いつも斜め上の虚空をぼんやりと見つめる新任女教師。このキャラクターは大いに魅力的でずっと観客の脳裏にこびり付くことだろう。彼女を観る為だけでも今作に価値はある。
野花紅葉さんは少女漫画のキャラそのもののルックス。小松菜奈に見える位、異様に美しかった。もう矢沢あいとかの描くイラストだ。
森田ガンツ氏は名助演。“カントリーマアム”。
函波窓氏もきっちり高校生になっていた。
佐瀬弘幸氏は『デラシネ』の大御所脚本家と同一人物だと誰が信じる?
寺十吾氏は狙い澄ました通り。
かなり凝ったセットで舞台美術の荒川真央香さんは大変だったろう。斜線が織り成す幾何学的なステージ。床も水平ではない。下手に斜めに走る鏡の壁、奥に透過率を変えたハーフミラー、照明が映し出す格子の影。心象風景の視覚化、何処までも記憶とイメージの世界。照明の阿部将之氏の苦労。客席の前の空間に椅子を並べ出演者達が座ってステージを観ている。相当実験的な作劇。
音響作家・北島とわさんの構築する音が不安を煽り続ける。水の滴る音、何かを叩く音、不快なノイズ音が居心地の悪い空間に木霊し、無意識に潜む記憶を引きずり上げる。
学校が大嫌いだった主人公は勤めていた会社が潰れ、一応持っていた教員免許で高校の臨時的任用教職員に。不登校になった男子生徒に責任を感じて担任は休職中、そのクラスを代理で受け持つ。今では教師はハラスメント対策で常に発言を慎み、スクールカウンセラーにスクールロイヤーが常備。カウンセリングを希望するのは心の病んだ教師達ばかり。病んだ教師と病んだ生徒、病んだ保護者に囲まれて主人公はますます学校が嫌いになっていく。
堤千穂さんに尽きる。これを見逃す手はない。終わり方は大好き。
是非観に行って頂きたい。