アナトミー・オブ・ア・スーサイド【9月11日~20日公演中止】 公演情報 アナトミー・オブ・ア・スーサイド【9月11日~20日公演中止】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    華やかな実験劇である。
    三世代、三人の女性がそれぞれの人生まっただ中の三十歳代を生きる数年を並行してみせる。ノーセットの舞台にドアの枠が三つ。それぞれの室内でドラマは進行する。シネマスコープの三分割画面を一挙に見ている感じである。15分の休憩を挟んで一時間づつの二幕。各幕に前半4シーン後半は6シーンだったか。
    三組のドラマは時に同じ台詞が重なったりして時代が変わっても変わらぬところもあると、暗示したり、、三つの枠で展開する一つ一つのプロットのスジは追い切れないが、起きている事件がほぼ人間の誕生に関することだったりして、現代の暮らしの中で男も女も生きづらい人生を送っていることはよく解る。二三十年前に日本の劇作家が、得意げに台詞を重ねて見せて新趣向と喧伝したのとはワケが違う。こちらは時代も重なっているし、休憩10分を挟んで2時間、全編、ドラマは並行している。三組の俳優はどうやら血縁関係もあるらしく、時に交錯することもあるが、ほぼ独立している。スジはほとんどつかめない。それでいて、スジのつかめないもどかしさはあまり感じない。
    文学座の中堅の俳優が、役を生き生きと演じていて、みな適役にみえる。冒頭、一組の男女がチェルフィッチュ風の芝居をやって見せたり、結構賑やかにいろいろな趣向が取り込んでいる。それが、全体としては重苦しい話なのに、人生花盛りのお祭りのはなや傘につながっていく。人間捨てたモノではない。
    しかし、ここまでやるなら、見る方にも、三回くらいは見るという前提で興行するという新手もあったのではないかと思う。もちろんコストもチケット代も上がるだろうが回を重ねるたびに面白さは大きくなると思う。(もちろん、そんな興行は出来ないという現状を踏まえた上での公演ではあるのだが、劇団ならやれるのではないか)
    文学座は女性演出家の逸材が続々出てくる不思議な劇団だ。生田みゆきもまだ十本もやっていないと思うがもう4本見ている。これは「ガールズ・イン・クライシス」(20)のような前衛性の強い作品だが、昨年評価の高かったアラバールの「アッシリア皇帝」のような作品もスター性のある俳優をうまく使ってエンタメとして楽しめる作品も作る。った今年の小劇場作品の「海戦」も、この作品を仲間内の素人の俳優も混ぜながら芸大の同級生でやる、という趣向が面白かった。華やかで、手が多い。一つ世代を上げると、森新太郎が出てきたときのような感じである。どんどん活躍の場を拡げて欲しい。商業演劇だって軽ーく出来てしまうと思うが才女、才に溺れないよう

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    ほぼ全編、三つの場面が舞台上に展開し時に台詞も被りまくる(三つ全部が被るのは避けられ観客の注意力の限界をそれなりに考慮している)。三世代に跨がる女性の話でその関係者を周囲が演じる。その事が分かるのは芝居の中盤であったが(それがためにジグソーパズルを埋めるような面白さもあった)、自分は冒頭の一場面を逃しており最初に全体図の提示があった可能性はある(この日は都心北部の電車が停まった影響で上下線とも遅れがあり、駅から猛ダッシュするもアトリエに入る路地を見失い2分遅れ。あとから客が次々と到着していた)。
    だが観初めてすぐ舞台を目で追わされ、入り込んだ。自分が産んだ子を普通には愛せず砂を噛むような人生の砂漠を手探りで彷徨う母、十代からヤクにハマって地獄をくぐったその娘、さらにその娘は同性パートナーとの関係を持ちながらも自分の奥に燻る何かを持て余している。時間経過の多くの箇所は抜けており想像で補うしかないがかの想像の余地が演劇的である。彼女達が住むのは同じ庭付きの家屋であるのがミソで、そこに人の生の連鎖、反復、過去から未来を臨む視線が宿る。無色だった時間の中に希望の色が微かに灯るのを俯瞰の風景として見るラストが胸に迫る。1970年代に母となる一世代目に栗田桃子、2000年代の三世代目に熱を上げ心の扉を叩き続ける女性に渋谷はるか、が名を知る役者であったが、期待通りの演技ながら全体を構成する一つとしてはまっていた(独特な作りの劇に貢献していた)という印象の方が大きい。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    説明通り、実験的というか前衛的な構成の台本で、これを上演するのは技術的にかなり難しいと思われるが、この劇団は意欲的に挑戦している。冒頭の会話場面からいきなりハードルが高い。母、娘、孫という時代の異なる3つの物語が舞台上で文字通り同時に進行し(容赦なく会話が重なるので聞き取れないことも)、時として同一のセリフが同時に発せられたり、別の時代の登場人物の言葉が関連したりする。3世代で時代を変えて同じ葛藤や不安が繰り返されることを印象づけるかのようだ。

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