実演鑑賞
満足度★★★★
華やかな実験劇である。
三世代、三人の女性がそれぞれの人生まっただ中の三十歳代を生きる数年を並行してみせる。ノーセットの舞台にドアの枠が三つ。それぞれの室内でドラマは進行する。シネマスコープの三分割画面を一挙に見ている感じである。15分の休憩を挟んで一時間づつの二幕。各幕に前半4シーン後半は6シーンだったか。
三組のドラマは時に同じ台詞が重なったりして時代が変わっても変わらぬところもあると、暗示したり、、三つの枠で展開する一つ一つのプロットのスジは追い切れないが、起きている事件がほぼ人間の誕生に関することだったりして、現代の暮らしの中で男も女も生きづらい人生を送っていることはよく解る。二三十年前に日本の劇作家が、得意げに台詞を重ねて見せて新趣向と喧伝したのとはワケが違う。こちらは時代も重なっているし、休憩10分を挟んで2時間、全編、ドラマは並行している。三組の俳優はどうやら血縁関係もあるらしく、時に交錯することもあるが、ほぼ独立している。スジはほとんどつかめない。それでいて、スジのつかめないもどかしさはあまり感じない。
文学座の中堅の俳優が、役を生き生きと演じていて、みな適役にみえる。冒頭、一組の男女がチェルフィッチュ風の芝居をやって見せたり、結構賑やかにいろいろな趣向が取り込んでいる。それが、全体としては重苦しい話なのに、人生花盛りのお祭りのはなや傘につながっていく。人間捨てたモノではない。
しかし、ここまでやるなら、見る方にも、三回くらいは見るという前提で興行するという新手もあったのではないかと思う。もちろんコストもチケット代も上がるだろうが回を重ねるたびに面白さは大きくなると思う。(もちろん、そんな興行は出来ないという現状を踏まえた上での公演ではあるのだが、劇団ならやれるのではないか)
文学座は女性演出家の逸材が続々出てくる不思議な劇団だ。生田みゆきもまだ十本もやっていないと思うがもう4本見ている。これは「ガールズ・イン・クライシス」(20)のような前衛性の強い作品だが、昨年評価の高かったアラバールの「アッシリア皇帝」のような作品もスター性のある俳優をうまく使ってエンタメとして楽しめる作品も作る。った今年の小劇場作品の「海戦」も、この作品を仲間内の素人の俳優も混ぜながら芸大の同級生でやる、という趣向が面白かった。華やかで、手が多い。一つ世代を上げると、森新太郎が出てきたときのような感じである。どんどん活躍の場を拡げて欲しい。商業演劇だって軽ーく出来てしまうと思うが才女、才に溺れないよう