これが戦争だ 公演情報 これが戦争だ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-20件 / 21件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    熱のこもった演技に臨場感がありました。

    ネタバレBOX

    深く戦争について多くのこと考えました。兵士の目線で、兵士の言葉で戦争をとらえているところが衝撃でした。アフガニスタンで起こったことについて強い関心を、持たずにはいられません。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    出演者4人の演技が、素晴らしかったです。
    改めて、戦争について考えさせられました。

    ネタバレBOX

    アフガニスタン戦争からの帰還兵…カナダの兵士たちがインタビューに応える、合同作戦中の出来事の再現。
    焦点がぼやけた感は否めませんが、戦争中の精神状態はよく描かれていたと思います。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    この劇団と演出家の組合わせでは、かつて『殺し屋ジョー』という秀作を見た。もう、初日前から前売り完売だったガ、声にならない前評判に負けない良い舞台だった。今回はそうはいかなかったようだが、それは多分、戯曲による。
    今回は現代戦争の実地報告書のようなルポルタージュ劇だ。カナダの作品で、アフガニスタンでの国連軍とタリバンとの前線にかり出されたカナダの青年男女四人の戦争体験である。ルポルタージュ劇というのは半世紀ほど前のイギリスのフォークランド紛争を描いた『フォークランド・サウンド』(コズミンスキー)あたりがハシリかと思うが、戦争のような規模の大きな世界を扱うにはリアリティの保証にもなって最近ではよく使われる。
    しかし、戦争の実態というならアメリカの本には数多いし、その悲惨を多くの国民が実体験した我が国だって負けていない。一頃、世界で最も暮らしやすい平和な国と言われたカナダ人の戦争体験は、外国へ行っての体験であることもあって、今ひとつ切実感がない。
    戦闘の前夜の興奮で男女兵士がやってしまうとか、戦場で不意打ちを食って児童を殺してしまったとか、目前の戦闘に動転して救援へり呼び出しに失敗するとか、どうしても只のリポートになってしまう。これではならじと演出者は督励するが、現実戦場となると日本人青年にも基本、体験がない。戯曲も舞台の上もどうしてもきれい事になってしまう。まぁこの結果はやむを得ないと思われるが、その戯曲の範囲で、四人の出演者は、よく頑張っているし、演出も、同じ場面を時間をずらして視点を変えてみるという趣向を生かして面白く見せている。1時間40分。
    シライケイタはこの後、座・高円寺の芸術監督を引き受けると言うから、小劇場ならではの芸術監督の新生面を切り開いて欲しい。ここ数年で大分太くなった演劇作家の意欲作を期待している。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    本劇団さんはとにかく役者の力量がすごいと思います。4、5回目の観劇ですが、始まって数分で内容に引き込む内容と演技素晴らしかったです。本作品はインタビュー方式で、各人の視点から当時の状況が展開されますが、違和感なく映像を見ているように楽しめました。次回も期待です

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    どうして「これが戦争だ」というタイトルでこんなストーリーなのか、作者の意図がつかめなかった。内容的には「これが痴情のもつれだ」といったほうがいい。登場人物がどいつもこいつもバカにしか見えない。戦場の緊迫さが人を狂わせてバカにする、ということか?台本に期待ハズレ感が否めず、『ベルリンの東』と同じ作者とは信じ難い。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    インタビューを繰り返す形~というか
    なぞってゆく感じかな
    質問者や音声等の演出は無く
    演者が自答する形で芝居がなされてゆくスタイルでした

    う~ん見応えはあったなぁ~と感想

    ネタバレBOX

    合同作戦前の妙な高揚感ある戦場での話と
    実際に合同作戦で起きた事
    その後の顛末をインタビュー形式で
    時間軸を前後しつつ
    かつ
    回答者らの視点での返答が再現劇=回想シーンにて
    舞台上で表現されました

    舞台セットは凹をひっくり返した
    鉄板製の門のような形状のみで
    表面には弾痕とか付いてる感じの簡素なセットでした
    回答者は兵士さんらで
    女性兵士と新兵と上官である軍曹さんと軍医さんのみです

    女性兵士は先の軍事作戦で民間人の少女を射殺してしまったトラウマがあり
    軍曹さんは国に残したカミサンが間男引きずり込んで離婚状態
    そんで基地の女性兵士に手当たり次第に手を出して
    性病もらいまくってます・・・・
    新兵さんは女性兵士に気があるも軍曹と女性兵士の
    おっせっせ現場を聞いてしまい自暴気味になり
    軍医さんはマトモと思ってたらホモさんでしたが
    まぁそれはそれですけど
    凄いのは軍曹さんで~その軍医さんにも手を出す両刀さんでした・・・
    役者さんの根性入り具合が凄いと思った=キスシーンあってねぇ

    でタリバン掃討の合同軍事作戦で
    新兵さんが玉と膀胱をやられて
    負傷兵がいるんで俺たちは後方支援にまわると伝えると
    現地軍さんは敵の塹壕出口を塞いで水攻めにして
    敵を溺死させてしまいます
    それが人道的にどうかとのインタビューが
    メインでの隠されていた話でした
    止められなかったのか~米軍は何をしていたとか~ですね

    で後日現地で生活している方々から
    戦地=水攻めされた塹壕で異臭がするし
    コレラ等の感染症蔓延が怖いので何とかしてくれと
    苦情が入り現状改善に向かった軍医の報告
    気温50℃にもなる塹壕内で兵士だけでなく
    民間人・・かなぁ少年兵の死体も多く見つかり
    総数170体近くの死体を埋葬したと語り
    話は閉じるのでした・・・・

    教育の無い少年兵とかを自爆兵として
    敵陣に突っ込ませるとかリアルなトラウマものの話があったが

    自分ン聞いた話では
    まっ裸の子供兵が銃だけ持って突撃してくるというのも
    聞いた事あったデス・・そんで胴体に爆発物とか巻いてきてたら
    どうしようもないですよね・・・
    先頭車両の進行先ルートに赤子を置いておいて・・・・などという話も・・・
    戦争は狂気だなぁと
    つくづく思った舞台でありました

    戦争繋がりで
    広島原爆被害者さんの話の一つ
    一面死体だらけで
    足の踏み場が無いので
    仕方なく死体を踏みつけて移動しなければならなかった方の
    足が死体に沈み込んでゆく描写がリアルで怖かった
    死体を踏むという人の尊厳の話
    原爆で損壊した死体の柔らかい腹部等に沈み込む
    生理的嫌悪感を伴う足の感触・・・
    戦争は悲惨などという言葉では済まされないと
    深く心に残った話でした
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    死が日常にある戦場を舞台にした、ひりひりするストレスともいえる緊張感のなかで劇は進行する。
    ウクライナで戦争が行われている現在に、本当に考えさせる1時間40分でした。
    そこには日本では経験されることのない、死に直結する毎日。。。
    そこで繰り広げられる群像劇。
    「これが戦争だ」という言葉を、重くかみしめました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    血気盛んな兵士3名と影のある雰囲気をまとった軍医1名
    兵士の中に若い女性が1名いるものだから愛情と愛欲の入り混じった人間関係が生じてしまうのは当然と言えば当然の流れか
    この部分だけを切り取ったなら かなり興味深い大人の物語として観てしまうところ、そういう訳にはいかない
    そこは戦争の最前線なのだから

    主に語り描かれるのはネックとなる二日間の出来事
    それぞれの証言に嘘が無い証拠に、起こった事実こそ皆一致しているのだけれど、それぞれの目線から立った証言が積み重なっていくごとに現場で起こった事がより立体的に見えてくる
    あまりにも惨い戦略の数々に居た堪れない気持ちになってしまうが、これが「戦争」なのだと真っ直ぐに考えるため必要な痛みだと思って大切に受け止めたい

    真に迫る演技で鮮明な人物像が立ちあがっており、それ故に痛みがダイレクトに突き刺さってくる舞台でした

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/07/27 (木) 19:00

    価格4,500円

    劇団俳小。前回のマギーの博物館に続く2度目の観劇でした。
    マギーもそうでしたが、芝居のテンポ感や俳優の持つポテンシャルを十分に引き出している印象がありますね。「これが戦争だ」アフガン戦争から帰国した4名のカナダ軍兵士たちのインタビューから、各々配役の視点で物語が解釈されていく本作品では、戦争の惨さはもちろん…どんな極限状態であっても人間の持つ欲望や想いは、同じくらい強く「生きる」という意味を再確認させられるものと感じた。

    ネタバレBOX

    スティーブン、ターニャ、ジョニー、クリスの4人が語るのは、共同作戦前夜での出来事。
    男女関係のもつれ等から、仲間の若手兵士ジョニーの負傷させてしまう。この一連の流れと配役視点の回想シーンが繰り返され…という流れは、正直予測ができてしまうので面白くはなかったです。日本人キャストがカナダ軍兵士を演じるという点で、ややオーバーなリアクションや台詞回し。台詞の受け身では所々に日本人っぽさを感じてしまう点。作品が戦争をモチーフにしているということもあるが、中盤からの芝居の盛り上がりという部分ではやや欠けているようにも感じました。個人的な感想としては、まるでエチュードのような「役者のためになる作品」だったように思います。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    戦争と言うと私がイメージするのは戦場となった地域の悲惨さや銃撃でした。
    しかし、この作品を観て戦場に赴く側の心情を知ることが出来ました。
    死と隣り合わせである恐怖、プレッシャー、そして人を殺してしまうという罪悪感、それは攻撃する側される側両方に共通としてある心情だと思います。
    今起きている戦争にそれが楽しいと思える兵士はいるのでしょうか。
    そう考えると戦争で奪われていくのは人命や建造物だけではなく、人の心も奪われていくのではないかと。
    結局戦争の芝居は後味が悪く、誰も幸せにならない。
    そこに行き着くプロセスが今までのとは違う視点からでしたので、勉強になりました。
    そして何より想像するしか他ないこの戦地に赴いた兵士を演じ切った役者4人を心より尊敬致します。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    登場人物4人とも素晴らしく、見応えのある凄い舞台。にも関わらずこの☆になっているのは、見終わったばかりの今、自分の中では舞台の出来よりも戦争への嫌悪感の方が単純に大きいからなんだろう(と思う)。時間が経てばまた印象は変わるのかもしれないが。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白いという言葉は、語弊があるかもしれないが 観応えがある公演だ。
    物語はアフガニスタンに派遣されたカナダ軍兵士が、帰還後インタビューに答える中で 当時のことを回想する。インタビューでは、チラシにもある「合同作戦における『ある出来事』を聞き出そうとする」が、兵士たちはその前夜のことを話すことで、核心を はぐらかした回答をする。リアルな戦場から少し時を経た今、当時の状況を客観的に見つめようとするが、感情が高ぶり…。

    「戦争反対」は頭では解っているが、その残忍で悲惨な光景は現実として迫ってこない。どこか遠くの国・地域のことで自分の事として感じられないし 考えられない。この演劇を観れば一時的には戦争のことを考えるが、暫くすれば日常の暮らしの中に埋没してしまう。日本では、夏の時期(特に8月15日前後)に反戦に係る演劇や映画が多く上演・上映されるが、何となく恒例的になってきているような。しかし、戦争の現実を知らない者に、その最悪の不条理を観せ 聞かせ続けることが演劇や映画の役割ではないだろうか。たとえ演劇という虚構の世界であろうと 観客の想像力を働かせることが出来れば、少なくとも観念的には危機意識を持つことが出来る と思う。その繰り返しこそが大切であり、演劇というか芸術の<役割>であり<力>であろう。

    さて 公演の見どころの1つは、戦場という極限状況下においても 人間の本能というか欲望が剥き出しになるところ。観念的にしか捉えられない戦争<戦場>、一方 そんな状況下においても欲情する、そんな実践的な行為は容易に想像することが出来る。そこに人間らしい哀しみと可笑しみが垣間見える。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    薄汚れたゲートのようなモノがあるだけで、ほぼ素舞台。
    登場人物は4人、勿論 熱演である。一人ずつアフガニスタンでの戦闘について心情を述べるが、インタビューで聞かれている<核心>については話を逸らす。因みにインタビュアーの声はなく、自分でインタビュイーとしての役割を演じ 回答を繰り返すというモノローグである。物語は「合同作戦」とはを聞き出そうとすることで観客の意識・興味を惹き出す巧さ。

    ターニャ(蜂谷眞未サン)は民間人の少女を誤射し自責の念に苛まれる。ジョニー(遊佐明史サン)は配属初日に同僚の戦死を目の当たりに見てショックを受ける。スティーブン(北郷 良サン)は、別戦場で部下を死なせた責任を感じている。三者三様に心に何らかの傷を負っており、戦場での外傷とは違う意味での戦慄を描く。
    一方、戦場という緊張感ある場においても人の欲情は抑えられない。いや明日をも知れない状況だからこそ、異常な興奮ー性欲が滾るかのよう。そこに人間の極度な精神状態、そして戦場という<生>と<死>の隣り合わせの極限状況を活写する。

    ゲートのようなモノは、戦闘の激しさを物語る荒廃と化した街であり 半壊した建物イメージ。そんな建物の内と外で繰り広げられる情欲は刹那的、それを覗き見ることによって異常な嫉妬心が芽生える といった違う観点での描き方。人間の死生観という二面性、一方 状況を二方向から描くという対極を見せることで、一様ではない人の心情を表す。更に戦場における命の優先順のようなこと。ターニャが民間人の子供の命を助けるため 救急ヘリを出動させたが、その間に戦傷したジョニーの救出が遅れ後遺症(歩行障害)が残った。戦場という状況の複雑さが浮き彫りになる。

    終盤、塹壕を水攻めし土砂で埋め殺す、または爆死させるような語り。公演は全て帰還兵の回想・記憶の証言だけ。一発の銃声も発しない代わりに、音響で泣き叫ぶ声、照明で阿鼻叫喚のような人影を映す。そこには観客の想像力が。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00

    見ていて、こちらの胃が痛くなるステージ。仲間内で、恐怖によるストレス溜まりまくりで、誰もが異常な精神状態なって一触即発の状態。いや、小さな即発など日常茶飯事か。戦争ものというと、日本でははるか昔の敗戦が描かれることが多いが、これは21世紀の出来事ということで時間的にものすごく身近に感じられ、それが怖かった。帰宅後、ネットで「カナダ軍兵士をむしばむアフガン従軍/自殺者が62人」という記事を発見した。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    役者さんたちの熱演が素晴らしかったです。
    特にターニャ役の蜂谷さんは、女性兵士という日本ではほとんど観れない兵士役で、インパクトがあり、雰囲気も魅力的でした。

    [これが青春だ] と言えばわかるが、[これが戦争だ] と言われても、戦争を体験していないのでわからないが、このお芝居を観て、悲惨さがかなり伝わってきた。

    個人的には、いつもの[俳小]の物語仕立てがとても好きですが、斬新な舞台で意外性があり、とても良かったです。

    猛暑の中、行くのが大変でやっと劇場に辿りつきましたが、迎えてくれたスタッフの方々のご配慮が嬉しかったです。

    素晴らしいお芝居で、観て満足でした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    アフガン戦争から帰国したカナダの兵士たちがインタビューに答える、
    答えながらそれぞれの回想を再現ドラマのように見せる、という構成。
    役者陣の熱演が素晴らしい。
    声も台詞も力強く明瞭で、戦地の緊張感がビリビリ伝わって来る。
    だがインタビュアーが知りたがっている「合同作戦」は
    イマイチぼやけたような気がする。

    ネタバレBOX

    ほとんどセットらしい物もなく、舞台中央奥に出ハケの口を残して壁があるだけ。
    ここが時にキャンプとなり、戦いの最前線となり、帰国したカナダの現在地となる。

    登場人物4人が帰国後インタビューを受けている。
    インタビュアーは執拗に「合同作戦」のことを聞いてくるが、
    核心を突く返答はなかなか出てこない。

    質問の合間にはつい作戦前夜のことを回想してしまう。
    皆普通の精神状態ではなかった。
    少し前に罪もない5歳の子どもを射殺してしまった伍長のターニャは、
    それ以来ずっと不安定なままだ。
    自爆テロなのか、重傷の子どもを助けたい民間人なのか判別が難しい場面で
    どうしてもその子どもを助けたいと、軍のヘリを要請する必死の姿が強烈な印象を残す。
    結果的にヘリはこの民間人救助に向かったため、
    作戦の現場で重傷を負ったジョニーの救助は遅れ、彼は重い障害を負うことになる。
    このターニャ役の蜂谷眞未さんが美しくて
    こんな人が部隊に居たらトラブルは目に見えてるだろう、と思わせる。

    スティーブン軍曹の帰りを待っている(はずの)妻は浮気しているが
    だからと言ってターニャに手を出す理由にはならないだろう。
    新兵のジョニーはまだ二十歳、ターニャにぞっこんで追い回しているが
    軍隊ってみんなこんなに性行為で心のバランスをとるものなのか、私にはわからない。
    この”誰かをぶん殴る代わりにやっている”ような性行為が実に虚しく映る。

    終盤、ようやく「合同作戦」がタリバンの塹壕を水攻めにする作戦であり、
    現地部隊からの提案であったこと、部下の負傷に気を取られて
    その残忍さを予想できず、反対しなかったこと、
    その凄惨な結果を知って悔やんでいることが軍曹の口から語られる。

    最後に、その悲惨さを語るのは軍医のクリスだった。
    彼は作戦の「後片づけ」を命ぜられて塹壕の遺体処理に当たる。
    気温50度の中、腐敗の進んだ遺体の山と格闘すると、
    下の方に小さな体がいくつもあった、と語る。
    聞いていたほど、彼らは銃を持っていなかった、とも。
    そして客席に向かって淡々と「これが戦争だ」と告げる。

    「戦争」を兵士目線から語るところは素晴らしい。
    政治や本部の連中から離れた、地べたに近いところから発せられた声がする。
    ただインタビュアーの知りたいことは何だったのか、
    私は「水攻め」のことだと解釈したが、よくわからなかった。

    ”平凡で平穏であるはずの日常”が否定されることから戦争は始まる。
    助けたり見殺しにしたり、間違って死なせたり、愛することを間違ったり、
    他人を貶めたり、それで自分が浮き上がろうとしたり・・・。
    人が日常を喪う。同時に「戦争の日常」が始まる。
    戦地から帰って来てからも、もう以前の日常は戻らない。
    たぶんあまりにも多くの人間の日常を奪ったことから
    もはや逃げられないと知ったから。
    この作品は、そのことを改めて心に刻むよいタイミングだと思った。



  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     今作はアフガニスタンに派遣されたカナダ兵士の戦場に於ける行為に対するジャーナリストの質問に対して返答する各兵士の返答内容を再現する形で話が展開する。舞台美術は極めてシンプルで板中央に出捌けにも用いる空間を開け、その両側に大きな衝立を1つづつ置いた抽象的で無駄の無い内容。作品内容に集中させる為に最も効果的な舞台美術となっている。また、出演俳優4名はそれぞれの役を生きるべく奮闘していることが伝わってくる演技で好感を持った。(追記2023.7.26、それにしても、今作のような作品が書かれ、上演されるカナダという国の文化レベル、社会の懐の深さ、自由度には称賛すべきものがあるように思われる。自分の直接の友人、知人を含めたカナダ国籍者との付き合いを通じても良く感じることではあるのだが)
     一応下らない誤解を防ぐ為に書いておくが、パシュトゥーンワーリーなどに触れたからといって自分がターリバーンの女性政策に賛意を表明している訳ではない。ただ、対話する他に合理的な解決法は無いと考えるから、話の持っていきよう迄考えて掛からないといけないのではないか? ということである。

    ネタバレBOX

     登場人物は4名、唯一の女性兵士・ターニャ伍長、責任感が強く部下思いの軍曹・スティーブンは故国に妻を持つが妻は浮気中、自身は看護婦ともターニャとも肉体関係を持った。一方、現地の下士官らしく独学でパシュトゥーン語を勉強してもいる。軍医・クリス。彼は通常の診察以外に兵士たちの心理的ケアも担当しているが、軍というものが戦闘を基本に構築されている組織である以上これは自然な分担ということになろう。当然、総てが剥き出しになる戦場体験の中で性の問題は極めて執拗で深刻な問題であるが、男性中心の軍隊で彼もホモセクシュアルである、脚本家が彼のキャラをそのように設定していることでLGBTQの問題も可視化されていることになる。そして新兵・ジョニー20歳はターニャに夢中の4名。証言される事象が起こった時期は9.11以降のターリバーン勢力排除の時期を経て再び西側に支えられて漸く成立している傀儡政権に反発したターリバーン復活以降のアフガニスタンの前線、パンジェイ。西側バックアップでかろうじて成立している傀儡政権の国家治安部門と国際治安支援部隊(IFSA)が共闘する直前から共闘し始めた頃の前線。カナダ兵は着任初日に兵士1名が死亡する攻撃を受けた為、この任地を亡くなった兵士の名で呼ぶようになっていた。各証人が各々の記憶を頼りに往時の自らの体験を、記憶を元に再現する内容が戯曲化されているが、アタックを掛ける前日の模様を各々が語る共有シーンもあるので、その証言者毎に若干の違いがある点などを観客自身はどう解釈するか? も問われている。(例えばヘルメットを着けている・いないや、ほんの僅かな動作・所作の差などで各人の記憶の相違等も表現されていると取るか、或いはそういった小道具を袖から手渡すだけの裏方の手配が時間やスタッフ人数の関係でできなかったと取るかで観客の読みの深さそのものが観劇後反復する思考の中で試される。この演出がグーと筆者は判断した)つまり前者の場合、命の懸かる前線で兵士、軍医を含めて個々の人間が味わっている部隊のミッションでは必ず複数で対応している最中にとてつもなく孤独・孤立感を味わっている兵士たち個々の人間という生き物の深さも描かれていると見る観客が出てくる点が良かろうと自分は思うのである。
     物語に出てくる基本的なシーンは、ジョニーとターニャの淡い恋のシーン(ジョニーはマジだが、ターニャは距離を置いている)、ターニャの証言の中に彼女がもう1人と共に歩哨に立っていた時、アフガニスタンの民間人と思われる大人2人が一人の腹を裂かれ血みどろの子供を抱きかかえて陣地に近づいてきた話がある。自爆とは考え難いが可能性零とは判断しかねぬ2人、制止する為に英語で呼び掛けるが彼らには言葉が通じない、そのまま進んでくる。あわや彼らを殺害しそうな時、スコープで詳細を観察していた歩哨の相棒がスコープに見える模様を逐一ターニャに伝えた。以前、5歳の女児を心ならずも射殺してしまったことを気にしているターニャは助けを求めてやってきたと合点し軍の携帯を用い緊急に救援ヘリを要請した。然し答えはノー、というよりヘリは軍負傷者の為に用意されていると電話を切られてしまった。話の続きは、ターニャが相棒の制止も聞かずもう1度、ヘリ派
    遣を要請し2度目は認められたこと。その直後、ジョニー達が塹壕の中で戦っている最中に少年兵がスーサイドボンビングを決行、結果的には死ぬことになった家族思いで26歳の兵士が瀕死の重傷を負い、その救援を頼んだ軍曹の緊急連絡にも拘わらずヘリ到着に1時間も掛かったこと、それ故、緊急オペも死んだ兵士は受けられなかったことなどが語られるが、ジョニーもこの時重症を負い障碍者となった。4人の証言に共通していたのが先に述べた、明日は敵との初の戦い前夜のことであった。
     ところでターリバーン(*アラビア語は男性形、女性形があるので女性形は別な表記発音になる)という呼称の意味をどれだけの日本人が理解しているだろう? 今作を少しは現実的に解釈する為にこれは極めて重大な問題である。現在ターリバーンが復活を遂げていることにも今作を理解する為にも大きな関わりがあるからである。如何に諸外国が様々に圧力を掛けようが、ある国や大きな地域で実権を獲得し、握り続ける為には権力者は住民の支持を不可欠の要素とする。少し話が逸れた。ターリバーンとはアラビア語で学生を意味するターリブの複数形である。今回のケースでは「神学生」を意味するから複数形では「神学生達」とでも訳したら良いのかも知れぬ。これはフスハー(正則アラビア語で、所謂アーンミーヤではない)表現である。
     歴史の現実に即し密着して言えば単数形のターリブはソ連の軍事侵攻を受けたアフガニスタンで多くの子供が戦災孤児となった為、モスクが施設内で子供たちを育て教育を施した。モスク内の学校であるからクルアーンは必須である。その結果孤児たちの頼るべき精神的支柱が宗教的色彩を帯びるに至った。同じ頃、世界の政治はムスリムに対し偏見を持って対した。宗教的な思考を中心にアイデンティファイした元戦災孤児の中にムスリムフォビアに反発し過激な思想が目覚めるのは必然であったと言えよう。然も傀儡政権の中で大きな力を持った北部同盟のリーダーたちの殆どはマスードと僅かな例外を除き殆どが無頼の輩であり傀儡政権成立後も腐敗の温床を為していたから、都市部を除けば民衆から完全に離反していた。繰り返しになる部分があるが、もう一度振り返ってみよう。何故ターリバーンが生まれたのかだ。ソ連によるアフガニスタン侵攻によって多くの戦災孤児が生まれそうした戦災孤児の多くがムスリムの教会とも言えるモスクに引き取られ、付属の学校で教育を受け成長したからである。そういう環境の中で育った彼らの多くが、倫理的に可成り厳格でストイックな宗教観を持つに至ったことは自然であろう。そういった事情も価値観も分からず、唯自分たちの価値観だけを中心に判断する米英を中心とする西側諸国の根本的な過ちは、余りにも自己肯定的で他の価値観や論理ベースを認めようとしない傲慢で排他的な価値観を政治利用しつつ、実際には自分たちより軍事的に劣ると見做した他国や他政権を軍産学複合体の儲けと政治力で自由に操ろうとする勢力によって、西側諸国の国民の命をも費消しつつ実行されているのが現実の戦争の姿だということではないのか? 
     “戦争の初め、最初に殺されるのが真実である”との格言が正しいのはまさしくこの点を見事に隠蔽してしまうことを指摘しているからである。今作でもその辺りのことは、各兵士の証言の至るところに見て取れる。兵士たちは「アフガニスタン国家治安部隊の指揮官たちですらジュネーブ条約の内容を知らない」と非難するがそう述べる彼ら自身が前線でアフガニスタン民間人に、自分たちの前線基地に来ないよう制止する最も簡単な現地語や共通語すら知らない、教えられていないことに抗議しないどころか、抗議しようとの発想すら浮かんでいないように思われるが、もし“ストップ、引き返せ、来るな、それ以上近づけば殺す”などが言えるだけでターニャが僅か5歳の民間人少女を撃ち殺さずを得なくなり実際に殺害してしまったことで強く深く自らの精神を病んでしまうようなことには至らなかった可能性も高かろう、ということである。国際治安部隊を派遣していた主たる国々は世界でもトップクラスの経済力を誇る先進国でもあった、その豊かな先進国国民である兵士たちが国内で経済的弱者であるとしてもその程度の要求すらできないほど知的訓練が出来ていないということであれば、これは国家として非常に大きな問題でもあるハズ。遥かに貧しいアフガニスタンの人々がジュネーブ条約の諸協定を知らないことを非難する前に自国政府を批判するのが先だと自分は考える。何となれば、金銭流通が世界を席巻している以上、金銭的貧困は即ち命の値段がその分安くなるということである。貧しければそれだけで死は日常となるのである。この単純極まる事実の重みを我らは先ず理解しておかねばならぬ。また先進国の軍事的指導者たちはターリバーンの中核を担うパシュトゥーンの部族法であるパシュトゥーンワーリーを理解する程度のことは人権をことあげする以上最低限知っておかねばなるまい。そのような努力や外交努力も無く戦争を始め、最前線へ派遣する兵士への十分な教育も無しに平和だの正義だのと言えるのか? そのことを今作は訴えている。もう少し言っておくなら、カナダ部隊が死者1、重傷者1を出した戦闘後もターリバーンは、正確な銃撃と武器の扱いでカナダ軍を苦しめたが攻撃したターリバーンを1時間ほどで一掃したのはアフガニスタン国家治安部門であり、ターリバーンが利用していた地下通路内に水を導き入れ全員(確か167名、多くの少年兵を含む)を溺死させた。敵兵と雖も年輪もゆかぬ少年が襤褸の如く殺された事実、マスコミが注目しないハズはない。こういったことも含めて“これが戦争だ”なのである。
  • 実演鑑賞

    良い舞台だったと思います。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    自分はいかなる戦争も犯罪に他ならないと考えているが、その思いを強くした
    兵士ら4人によって前線における非日常の「日常」が語られ(演じられ)る
    その極限に置かれた精神状態
    4人の表情、特にアフガン人の子供を助けようとする時の蜂谷の取り乱した様子が良かった
    全体的にはセリフに重きを置き過ぎてそこで説明しようとしてしまった感があり、このところ高く評価していた俳小にしてはモヤモヤしたかな
    シライケイタは相性悪いかもしれない

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    合同作戦における「ある出来事」・・・は私には分かりませんでした。
    しかし、戦争の非情さ、犠牲になる子供たちのこと、正気を保つことの難しさなど、今、この時も続いている場所があることを思うと気が重くなりました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    戦争の精神状態を表現した演技が素晴らしかったです。

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