実演鑑賞
満足度★★★★
この劇団と演出家の組合わせでは、かつて『殺し屋ジョー』という秀作を見た。もう、初日前から前売り完売だったガ、声にならない前評判に負けない良い舞台だった。今回はそうはいかなかったようだが、それは多分、戯曲による。
今回は現代戦争の実地報告書のようなルポルタージュ劇だ。カナダの作品で、アフガニスタンでの国連軍とタリバンとの前線にかり出されたカナダの青年男女四人の戦争体験である。ルポルタージュ劇というのは半世紀ほど前のイギリスのフォークランド紛争を描いた『フォークランド・サウンド』(コズミンスキー)あたりがハシリかと思うが、戦争のような規模の大きな世界を扱うにはリアリティの保証にもなって最近ではよく使われる。
しかし、戦争の実態というならアメリカの本には数多いし、その悲惨を多くの国民が実体験した我が国だって負けていない。一頃、世界で最も暮らしやすい平和な国と言われたカナダ人の戦争体験は、外国へ行っての体験であることもあって、今ひとつ切実感がない。
戦闘の前夜の興奮で男女兵士がやってしまうとか、戦場で不意打ちを食って児童を殺してしまったとか、目前の戦闘に動転して救援へり呼び出しに失敗するとか、どうしても只のリポートになってしまう。これではならじと演出者は督励するが、現実戦場となると日本人青年にも基本、体験がない。戯曲も舞台の上もどうしてもきれい事になってしまう。まぁこの結果はやむを得ないと思われるが、その戯曲の範囲で、四人の出演者は、よく頑張っているし、演出も、同じ場面を時間をずらして視点を変えてみるという趣向を生かして面白く見せている。1時間40分。
シライケイタはこの後、座・高円寺の芸術監督を引き受けると言うから、小劇場ならではの芸術監督の新生面を切り開いて欲しい。ここ数年で大分太くなった演劇作家の意欲作を期待している。
実演鑑賞
満足度★★★★★
本劇団さんはとにかく役者の力量がすごいと思います。4、5回目の観劇ですが、始まって数分で内容に引き込む内容と演技素晴らしかったです。本作品はインタビュー方式で、各人の視点から当時の状況が展開されますが、違和感なく映像を見ているように楽しめました。次回も期待です
実演鑑賞
満足度★★★
どうして「これが戦争だ」というタイトルでこんなストーリーなのか、作者の意図がつかめなかった。内容的には「これが痴情のもつれだ」といったほうがいい。登場人物がどいつもこいつもバカにしか見えない。戦場の緊迫さが人を狂わせてバカにする、ということか?台本に期待ハズレ感が否めず、『ベルリンの東』と同じ作者とは信じ難い。
実演鑑賞
満足度★★★★
インタビューを繰り返す形~というか
なぞってゆく感じかな
質問者や音声等の演出は無く
演者が自答する形で芝居がなされてゆくスタイルでした
う~ん見応えはあったなぁ~と感想
実演鑑賞
満足度★★★★★
死が日常にある戦場を舞台にした、ひりひりするストレスともいえる緊張感のなかで劇は進行する。
ウクライナで戦争が行われている現在に、本当に考えさせる1時間40分でした。
そこには日本では経験されることのない、死に直結する毎日。。。
そこで繰り広げられる群像劇。
「これが戦争だ」という言葉を、重くかみしめました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
血気盛んな兵士3名と影のある雰囲気をまとった軍医1名
兵士の中に若い女性が1名いるものだから愛情と愛欲の入り混じった人間関係が生じてしまうのは当然と言えば当然の流れか
この部分だけを切り取ったなら かなり興味深い大人の物語として観てしまうところ、そういう訳にはいかない
そこは戦争の最前線なのだから
主に語り描かれるのはネックとなる二日間の出来事
それぞれの証言に嘘が無い証拠に、起こった事実こそ皆一致しているのだけれど、それぞれの目線から立った証言が積み重なっていくごとに現場で起こった事がより立体的に見えてくる
あまりにも惨い戦略の数々に居た堪れない気持ちになってしまうが、これが「戦争」なのだと真っ直ぐに考えるため必要な痛みだと思って大切に受け止めたい
真に迫る演技で鮮明な人物像が立ちあがっており、それ故に痛みがダイレクトに突き刺さってくる舞台でした
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/27 (木) 19:00
価格4,500円
劇団俳小。前回のマギーの博物館に続く2度目の観劇でした。
マギーもそうでしたが、芝居のテンポ感や俳優の持つポテンシャルを十分に引き出している印象がありますね。「これが戦争だ」アフガン戦争から帰国した4名のカナダ軍兵士たちのインタビューから、各々配役の視点で物語が解釈されていく本作品では、戦争の惨さはもちろん…どんな極限状態であっても人間の持つ欲望や想いは、同じくらい強く「生きる」という意味を再確認させられるものと感じた。
実演鑑賞
満足度★★★★
戦争と言うと私がイメージするのは戦場となった地域の悲惨さや銃撃でした。
しかし、この作品を観て戦場に赴く側の心情を知ることが出来ました。
死と隣り合わせである恐怖、プレッシャー、そして人を殺してしまうという罪悪感、それは攻撃する側される側両方に共通としてある心情だと思います。
今起きている戦争にそれが楽しいと思える兵士はいるのでしょうか。
そう考えると戦争で奪われていくのは人命や建造物だけではなく、人の心も奪われていくのではないかと。
結局戦争の芝居は後味が悪く、誰も幸せにならない。
そこに行き着くプロセスが今までのとは違う視点からでしたので、勉強になりました。
そして何より想像するしか他ないこの戦地に赴いた兵士を演じ切った役者4人を心より尊敬致します。
実演鑑賞
満足度★★★★
登場人物4人とも素晴らしく、見応えのある凄い舞台。にも関わらずこの☆になっているのは、見終わったばかりの今、自分の中では舞台の出来よりも戦争への嫌悪感の方が単純に大きいからなんだろう(と思う)。時間が経てばまた印象は変わるのかもしれないが。
実演鑑賞
満足度★★★★
面白いという言葉は、語弊があるかもしれないが 観応えがある公演だ。
物語はアフガニスタンに派遣されたカナダ軍兵士が、帰還後インタビューに答える中で 当時のことを回想する。インタビューでは、チラシにもある「合同作戦における『ある出来事』を聞き出そうとする」が、兵士たちはその前夜のことを話すことで、核心を はぐらかした回答をする。リアルな戦場から少し時を経た今、当時の状況を客観的に見つめようとするが、感情が高ぶり…。
「戦争反対」は頭では解っているが、その残忍で悲惨な光景は現実として迫ってこない。どこか遠くの国・地域のことで自分の事として感じられないし 考えられない。この演劇を観れば一時的には戦争のことを考えるが、暫くすれば日常の暮らしの中に埋没してしまう。日本では、夏の時期(特に8月15日前後)に反戦に係る演劇や映画が多く上演・上映されるが、何となく恒例的になってきているような。しかし、戦争の現実を知らない者に、その最悪の不条理を観せ 聞かせ続けることが演劇や映画の役割ではないだろうか。たとえ演劇という虚構の世界であろうと 観客の想像力を働かせることが出来れば、少なくとも観念的には危機意識を持つことが出来る と思う。その繰り返しこそが大切であり、演劇というか芸術の<役割>であり<力>であろう。
さて 公演の見どころの1つは、戦場という極限状況下においても 人間の本能というか欲望が剥き出しになるところ。観念的にしか捉えられない戦争<戦場>、一方 そんな状況下においても欲情する、そんな実践的な行為は容易に想像することが出来る。そこに人間らしい哀しみと可笑しみが垣間見える。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00
見ていて、こちらの胃が痛くなるステージ。仲間内で、恐怖によるストレス溜まりまくりで、誰もが異常な精神状態なって一触即発の状態。いや、小さな即発など日常茶飯事か。戦争ものというと、日本でははるか昔の敗戦が描かれることが多いが、これは21世紀の出来事ということで時間的にものすごく身近に感じられ、それが怖かった。帰宅後、ネットで「カナダ軍兵士をむしばむアフガン従軍/自殺者が62人」という記事を発見した。
実演鑑賞
満足度★★★★★
役者さんたちの熱演が素晴らしかったです。
特にターニャ役の蜂谷さんは、女性兵士という日本ではほとんど観れない兵士役で、インパクトがあり、雰囲気も魅力的でした。
[これが青春だ] と言えばわかるが、[これが戦争だ] と言われても、戦争を体験していないのでわからないが、このお芝居を観て、悲惨さがかなり伝わってきた。
個人的には、いつもの[俳小]の物語仕立てがとても好きですが、斬新な舞台で意外性があり、とても良かったです。
猛暑の中、行くのが大変でやっと劇場に辿りつきましたが、迎えてくれたスタッフの方々のご配慮が嬉しかったです。
素晴らしいお芝居で、観て満足でした。
実演鑑賞
満足度★★★★
アフガン戦争から帰国したカナダの兵士たちがインタビューに答える、
答えながらそれぞれの回想を再現ドラマのように見せる、という構成。
役者陣の熱演が素晴らしい。
声も台詞も力強く明瞭で、戦地の緊張感がビリビリ伝わって来る。
だがインタビュアーが知りたがっている「合同作戦」は
イマイチぼやけたような気がする。
実演鑑賞
満足度★★★★★
今作はアフガニスタンに派遣されたカナダ兵士の戦場に於ける行為に対するジャーナリストの質問に対して返答する各兵士の返答内容を再現する形で話が展開する。舞台美術は極めてシンプルで板中央に出捌けにも用いる空間を開け、その両側に大きな衝立を1つづつ置いた抽象的で無駄の無い内容。作品内容に集中させる為に最も効果的な舞台美術となっている。また、出演俳優4名はそれぞれの役を生きるべく奮闘していることが伝わってくる演技で好感を持った。(追記2023.7.26、それにしても、今作のような作品が書かれ、上演されるカナダという国の文化レベル、社会の懐の深さ、自由度には称賛すべきものがあるように思われる。自分の直接の友人、知人を含めたカナダ国籍者との付き合いを通じても良く感じることではあるのだが)
一応下らない誤解を防ぐ為に書いておくが、パシュトゥーンワーリーなどに触れたからといって自分がターリバーンの女性政策に賛意を表明している訳ではない。ただ、対話する他に合理的な解決法は無いと考えるから、話の持っていきよう迄考えて掛からないといけないのではないか? ということである。
実演鑑賞
満足度★★★★
自分はいかなる戦争も犯罪に他ならないと考えているが、その思いを強くした
兵士ら4人によって前線における非日常の「日常」が語られ(演じられ)る
その極限に置かれた精神状態
4人の表情、特にアフガン人の子供を助けようとする時の蜂谷の取り乱した様子が良かった
全体的にはセリフに重きを置き過ぎてそこで説明しようとしてしまった感があり、このところ高く評価していた俳小にしてはモヤモヤしたかな
シライケイタは相性悪いかもしれない
実演鑑賞
満足度★★★★
合同作戦における「ある出来事」・・・は私には分かりませんでした。
しかし、戦争の非情さ、犠牲になる子供たちのこと、正気を保つことの難しさなど、今、この時も続いている場所があることを思うと気が重くなりました。