日本演劇総理大臣賞 公演情報 日本演劇総理大臣賞」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
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  • 実演鑑賞

    柳井作品には討論劇の系列があった、と思い出した。戦時期日本の「表現」にとって厳しい状況で、えんげきにまつわる二つのシーンが交互に描かれる。二つのいずれ分かるが、その一つがタイトルになってる賞の選考会議。「12人の怒れる・・」を下敷きに(もろパロって)進むエンタメ路線と、深刻な状況がうまく融合できていた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    上演時間、2時間。

    開場して10〜15分くらいに入場して、
    席がとびとびで空いているくらいだったのですが、
    場内スタッフさんが
    「一番うしろは通路になっているので、ぐるっと回り込めます」
    「奥側は最前列が空いています」
    「手前側3列目ならおふたり並びで観劇できます」
    などと
    具体的な口頭案内をしていて、
    着席しやすかったです。

    役者さんも演技力がすばらしい人揃いで、
    骨太の脚本とたしかな演技で大満足です。

    なぜ「演劇」を選んで彼らがここにいるのか。
    なぜ私は現地に行って「観劇」をするのか。
    そのひとつの答えがここにありました。

    ネタバレBOX


    『残り火』という演劇作品が出来上がるまでの過程の「稽古場」と、
    『残り火』が総理大臣賞に相応しいかを論じる「選考会」の
    2つの空間が交差するのですが、
    その構造・構成が巧みでした。

    『残り火』というひとつの作品を劇団(内側)と選考委員(外側)から観測させて、
    さらに『残り火』の「観客」となる警察・記者も舞台上にいることで
    作中で語られていた「循環」「対話」を目視させつつ、
    客席に座っている「こちら」と『日本演劇総理大臣賞』という作品で「循環」と「対話」を起こしていました。

    観劇が、演劇が客席の「私」に与えてくれるものを画化・言葉化、そして体験させてくれたうえに、
    自由な表現を奪われていく演劇人のあがきと、
    それでもまだ失われてないものを描くストーリー。
    すごい体験をしました。

    客席が2面で舞台を挟む配置も良い効果でした。
    特にそれを強く実感したのが
    クライマックスの久子が「俳句にする」シーンの劇場全体の一体感。

    横からの視点になることで、
    舞台上のふたりの登場人物がつかもうとしている「ことば」への遠近感の表現が強まり、
    否応にも視界に入る客席に循環を味わい、
    さらに自分の心の揺れを自覚する。

    すごく充実して、贅沢な時間でした。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    演劇に対する強い情熱が伝わってきて、痺れました。涙が溢れました。最高に面白かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    総理大臣名義の演劇賞というタイトルから勝手に演劇人の自虐、皮肉を読み取り、作者柳井氏の新境地?とシニカル系コメディを想像して「余話」を観に行った所が、もろシリアス劇。一体どんな本編が?と前振りにまんまと乗せられ足を運んだ。
    とある劇団の芝居の稽古場面と、日本演劇総理大臣賞の選考会議の場面が交互に描かれる(最後にはその関連が分る)。
    稽古場では演出家の病欠のため作家(澤口渉)が駆り出され、三人芝居の場面稽古を進めているが、「演出はこうは言わなかった」「じゃ俺に聞くな」等のやり取り。そこへ大きな咳払いをし口を挟んでくる者がある。刑事である。「色恋の気配は好ましくない」等と難癖をつけ、「検閲で引っ掛かる」「検閲で言われたら直す」「私が検閲官に申し入れても良いのだぞ」が作家と刑事の毎度のやり取りとなる。俳優の一人桑山(鶴町憲)は「聞く必要はない」と強気だが、劇団主宰で女優の雪子(百花亜希)は制止する。
    一方選考会議は開始早々、「12人の怒れる・・」のフォーマットが現われる。選考会議の趣旨にそぐわぬ進行だが「12人」が下敷きだと分ると飲み込める、ただしパロディ、逆転劇という娯楽性に引っ張られるリスク。だが選考に残った二作品の内容が観客に推測でき、討議の帰趨(勝ち負け)より「内容」へ集中できる具合にはなっていた。

    選考委員の約全員が推したのが「紙吹雪」、一人だけが「残り火」を推した。
    「紙吹雪」を推した委員の面々とは、まず委員長である日本演劇界の重鎮・岸(榊陽介/当人至って真面目な性質)、彼を「先生」と持ち上げ高慢に振舞う若手評論家・諸星(伊藤俊輔/「12人」では最後まで容疑者を犯人と決めつけている役に相当)、女流劇作家小谷栢楊(ハクヨウ/島口綾/場違いな所に来たと及び腰で付和雷同)、今一人の女性劇作家・宮古(小口ふみか/堂々と自説を語り自立心が強い)、演劇雑誌発行人をする古橋(高野絹也/かつてプロレタリア演劇に傾倒した)。
    一人「残り火」を推したのが、演出家・羽田(ハタ/音野暁)。評論家諸星は彼を詰って「残り火のどこが良いのだ」と迫るが、議事によりまずは「紙吹雪」を推す弁を聴く事となる。
    この話の筋は聴いていると岸田國士作「紙風船」そのまま。だが最後は隣家の庭から紙風船でなく、紙吹雪が飛んで来て、夫婦の倦怠に嫌気がさした妻が家を出て行く、となる。
    一方の「残り火」は、実は劇団が稽古をしているその作品だ。選考会議で「紙吹雪」の優れた点が挙げられて行く中、「残り火」にもそれがある事、さらに時代と切り結ぶ批評性において「残り火」が先んじているとの評価に辿り着くのだが、稽古シーンで芝居が掘り下げられて行く(そこに刑事が持ち込む難題も絡んでいる)プロセスと、選考会での議論がシンクロして行くのが終盤である。
    劇団のシーンの進行の過程では、演劇人の一斉検挙といった事件もある。そして最も割かれる議論は、プロレタリア演劇への弾圧から「転向」した彼らが再び公権力に屈する屈辱に抗おうとする中、「制約を飲んででも優れた芝居を世に出すこと」が出来るのか、であり、その可能性を信じ、見出す姿勢へと劇団は変化を刻む。女座長は刑事と二人になった時、検閲に掛かるだろう箇所を事細かに指摘し続けてくれた労に感謝を述べるシーンがある。刑事の顔に表情が微かによぎる。劇の終盤で作家が召集令状を受け、三日後の出発だと団員に告げた時、この刑事が頭を垂れている(台詞はなく、見過ごされて不思議でない)。
    作家は戦死し、「残り火」は土壇場で上演不許可となる。
    選考会で「残り火」を推した演出家とは劇団での演出であり、時間的には選考会が暫く後の事、作家の弔い合戦であったと分る。選考会議では最後の一人(頑なな評論家)が私的事情(妻との離婚)を暴露され票を変える所で結論が出るが、同席した役人である嵯峨野は平然と「総理は「紙吹雪」を殊のほか気に入られている」と最初に言ったはずです」と、暗にそれに沿って会議を進めるべきであったと岸を難じ、相応しい議事を設えて提出するように、と言いおいて席を立つ。

    日本演劇総理大臣賞、という賞が実際にあったのかも?と観ながら思ってしまったが、それは無いようである。
    本作では選考会議が「評価」を為さねばならない作品が二つ登場するが、史実に基づかないフィクションにおいて難しいのはこういう所で、「選考に残る作品」は実際に戯曲の中には具体的な形で存在させる事ができない(劇作家の中である程度の想定はできるだろうが)。選考会議での議論の描出に厳密なリアリティを持たせる事はその意味で困難。作者が念頭におく「演劇作品の評価軸」を語る材料として辛うじて存在し得るにすぎない。従って、結論ありきの議論となり、穴は沢山ある。
    が、その疵を凌駕するものがある。
    「残り火」の主人公の女流歌人は、著名な歌人の有力な弟子(既に売れてもいる)でありながら袂を分かたざるを得ず、歌人の道を諦めて山奥にいる従兄の下に身を寄せていたが、その彼女の下に弟弟子に当たる青年が訪ねて来る。姉弟子の変わらぬ意志の前に身を引くしかない青年は、去り際に、自分が作った句の評価を求める。酷評を受けるが、ふと彼女はこう直せばいい、と直しを提案する。一つの印象的な句が出来上がる。恐らくは彼女を慕っていたのだろう弟弟子を見送る、姉弟子の中に、新たな生の活力が宿る。(そんな感じのラスト)
    師匠に破門された身で句作を、それを世に問う道を諦めた彼女は、師匠に従わなかった事を以て意志を貫徹した自立の人であった、が、弟子は彼女に俳句を作ってほしいと懇願しに山奥を訪ね、彼女が頑なに閉じていた句作への扉を静かに開く。
    選考会では、「紙吹雪」が持つ現代性、批評性、観客との対話といった評価軸が、「残り火」にもある読みへと導かれ、表現を巡る息苦しい世相の中におかれた演劇の現在に、「残り火」の女歌人は重ね合わせる事ができる、優れて現代的な作品、という理想的な結末に至るのだが、時代の大きな力の前では雑草の茎を折るようにあえなく潰される。架空の演劇賞選考会議であるが、仮にそうしたものがあったとして、そうした運命にあるだろう。2020年からのコロナ禍の下で味わった演劇製作者の無力感が、反映しているように私には思えたが、日本社会が芸術を不要不急とした事の疵は深い。コロナ下の中でも棲息できた芸術文化は勿論あるが、私という人間にとっては(芸術が不要不急ではない人間にとっては)大きなダメージだった。芸術文化「以外」の人間の営みの「尊さ」を思い出させる場面が、果してあったろうか。むしろ逆ではなかった。
    時代が窮迫の状況を迎えたとしても、この芝居の演劇人たちのように劇作りにこだわり、芝居を作り続けようとする営みを、今の演劇人たちも続けようとするのか・・という問いを私は読み取る。同時に、彼らの営みを私たちは応援するのか、その勇気を持ち続けられるのか・・も問うている。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    演出、脚本、役者、舞台美術、照明、音響、全体の構成、ほんとにスキが無い芝居だった。
    適度に力の抜けるシーンがちゃんと用意されてるところまで含めてスキが無い。
    描かれたのは時代と大きな演劇への愛情だったと思います。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    素晴らしい。
    内外の名作会話劇を見事にオマージュ。
    緻密な構成で2つの時間軸を交互に展開する脚本と演出に目が離せず、発せらる魂のこもった言葉に何度も涙。
    皆演劇愛に満ち溢れていた。
    散々涙したのにカテコで再び感極まる。
    最後の最後で「今年一」がまた増えてしまった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/12/27 (水) 14:00

    会議ものとバックステージ系の芝居が好みで「12人の怒れる男」も「笑の大学」も大好きな身にとってまさに「盆と正月が一緒に来たような」傑作にして秀作。4年ぶりに観ることができて、そしてこれが今年の観劇納めで良かった♪
    劇中に出てくる「作劇/演出のセオリー」や「演劇に大切なもの」が本作で体現されているのも見事。これ、初演時に気付かなかったのは己の未熟さかあるいは脚本の改稿や演出家の違いによるものか?
    で、活動休止前の作品を活動再開の1本目に再演することに連続ドラマで前回のラストシーンを見せてからその回が始まるパターンを想起。(笑)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    年末に見られて良かったと思っています。
    今年だけではありませんが、幅広いジャンルでの公演があるのも、こうした時代を経てのことなんだろうなと感じられました。

    ネタバレBOX

    票を変えていくんだろう、ということは推察できましたが意志の硬そうな委員の方々を諭していく過程が見事でした。
    なぜ投票したかということも、なぜ意見を変えるのかも、あれだけの時間なのに無理がほぼなかったように思います。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/12/29 (金) 14:00

    超正攻法な「議論」という手段で「芸術とは何か」を論じさせる構成が素晴らしい。
    一分の隙もない緊張感あふれる役者陣の演技にどんどん引き込まれ、
    登場人物と一緒に口惜しくてボロ泣きした。
    権力と抑圧、戦争と理不尽・・・、これ全て「イマ」の話じゃないか。
    1年の〆にこの作品を観ることが出来て、本当に幸せだった。

    ネタバレBOX

    対面の客席に挟まれた舞台には転々と椅子が置かれている。
    この椅子に座るメンバーが入れ替わりながらストーリーは進む。

    まずは昭和16年、内閣情報局主催の「日本演劇総理大臣賞」という
    ありそうでなさそうな(若干胡散臭げな)賞の最終選考会場。
    演劇界の重鎮や作家など選考委員が集まり
    最終選考に残った二作品を巡って論争を繰り広げる。
    作品は「紙吹雪」と「残り火」。
    演出家の羽田(音野暁)を除いてあとは全員が「紙吹雪」を推している。

    もうひとつはその「残り火」の稽古場風景。
    時節柄刑事がひとり「検閲」のために常に同席している。
    羽田は、選考委員らの票を覆すため「芸術とは、演劇とは何か」という
    根源的な命題を巡る論争に立ち向かって行くが
    稽古風景の再現は、その羽田の論理を支える具体的な実証場面である。

    対抗する作品「紙吹雪」の設定や展開にも確かに新しい時代性はあるが
    「残り火」の主人公が悩んだ末に自ら道を切り開く行動力や抗う力、
    観客との対話を想起させるやり取り等、「残り火」の魅力を
    余すところなく提示していく。
    それはそのまま「残り火」の劇作家(澤口渉)が伝えたいと願ったことであり、
    羽田にとっては、上演のために変更を余儀なくされながら脚本を書きあげ、
    そして戦死した、この友人のための弔い合戦であったのだ。

    選考委員メンバーが、意外なほど柔軟な頭の持ち主であったり、
    検閲する刑事の本音が見えて嬉しかったり、
    なのにやっぱり「ケッ!」という理由で「残り火」は受賞を逃す。
    そこがいかにも”内閣情報局”らしくて、悔しくも説得力がある。
    政府ってこんなもん。

    「芸術とは、演劇とは」という相変わらず大きな命題、
    二つの作品を因数分解のように解説する分析力、そしてこの構成、
    いくつもの難題に挑み続ける柳井さんの脚本に心から感服。
    そしてあの膨大な台詞を一点の緩みもなく繰り出す役者陣に大拍手。

    賞なんか要らない。(いや、もらえるものはもらっておこう!)
    少なくとも「日本演劇総理大臣賞」は要らない。
    そんなものは誰かにくれてやれ!
    私は「残り火」も観てみたい。
    2023年12月、演劇に感謝して終わる.
    ありがとうございました。


  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/12/28 (木) 14:00

    戦時下の演劇の様子が想像する事が出来て楽しめました。
    衣装も素敵で、演劇って良いものだなと感じられました。

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