日本演劇総理大臣賞 公演情報 ロデオ★座★ヘヴン「日本演劇総理大臣賞」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/12/29 (金) 14:00

    超正攻法な「議論」という手段で「芸術とは何か」を論じさせる構成が素晴らしい。
    一分の隙もない緊張感あふれる役者陣の演技にどんどん引き込まれ、
    登場人物と一緒に口惜しくてボロ泣きした。
    権力と抑圧、戦争と理不尽・・・、これ全て「イマ」の話じゃないか。
    1年の〆にこの作品を観ることが出来て、本当に幸せだった。

    ネタバレBOX

    対面の客席に挟まれた舞台には転々と椅子が置かれている。
    この椅子に座るメンバーが入れ替わりながらストーリーは進む。

    まずは昭和16年、内閣情報局主催の「日本演劇総理大臣賞」という
    ありそうでなさそうな(若干胡散臭げな)賞の最終選考会場。
    演劇界の重鎮や作家など選考委員が集まり
    最終選考に残った二作品を巡って論争を繰り広げる。
    作品は「紙吹雪」と「残り火」。
    演出家の羽田(音野暁)を除いてあとは全員が「紙吹雪」を推している。

    もうひとつはその「残り火」の稽古場風景。
    時節柄刑事がひとり「検閲」のために常に同席している。
    羽田は、選考委員らの票を覆すため「芸術とは、演劇とは何か」という
    根源的な命題を巡る論争に立ち向かって行くが
    稽古風景の再現は、その羽田の論理を支える具体的な実証場面である。

    対抗する作品「紙吹雪」の設定や展開にも確かに新しい時代性はあるが
    「残り火」の主人公が悩んだ末に自ら道を切り開く行動力や抗う力、
    観客との対話を想起させるやり取り等、「残り火」の魅力を
    余すところなく提示していく。
    それはそのまま「残り火」の劇作家(澤口渉)が伝えたいと願ったことであり、
    羽田にとっては、上演のために変更を余儀なくされながら脚本を書きあげ、
    そして戦死した、この友人のための弔い合戦であったのだ。

    選考委員メンバーが、意外なほど柔軟な頭の持ち主であったり、
    検閲する刑事の本音が見えて嬉しかったり、
    なのにやっぱり「ケッ!」という理由で「残り火」は受賞を逃す。
    そこがいかにも”内閣情報局”らしくて、悔しくも説得力がある。
    政府ってこんなもん。

    「芸術とは、演劇とは」という相変わらず大きな命題、
    二つの作品を因数分解のように解説する分析力、そしてこの構成、
    いくつもの難題に挑み続ける柳井さんの脚本に心から感服。
    そしてあの膨大な台詞を一点の緩みもなく繰り出す役者陣に大拍手。

    賞なんか要らない。(いや、もらえるものはもらっておこう!)
    少なくとも「日本演劇総理大臣賞」は要らない。
    そんなものは誰かにくれてやれ!
    私は「残り火」も観てみたい。
    2023年12月、演劇に感謝して終わる.
    ありがとうございました。


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    2023/12/30 00:46

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