マッチ売りの少女 公演情報 マッチ売りの少女」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    知らんがな!
    今回の演出家松本修さんと2003年に本作品を新国立劇場で演出された坂手洋二さんとのアフタートークで、本作品の時代背景や登場人物が何を表象しているのかを聞きました。

    先入観念の無い状況で観た私の感想とあまりにも異なるので、それは事前に勉強していない私が悪いのか、それとも1966年初演から時間が経過しているのならそれなりに工夫が必要なのにそれを怠っている演出家が悪いのか、はたまたただ素直に観れば良いのか考えさせられました。

    ネタバレBOX

    私の感想では、老人宅を訪ねて来た詐欺師の姉弟がああ言えばこう言うで、ずけずけ家に入り込むような印象を受けました。もし、この家で失敗したら次の老人宅を訪ねるのだろうという風に感じました。面白く、いらいらしましたが、現実に起きている話のようで不条理劇とは思いませんでした。

    押し掛けてきた姉が少女の頃にマッチ売りをしていたとなると、確かにマッチ一本何百円の方ですね。夫は戦後マッチを買っていたようです。

    目の前で電車事故で幼い娘が死んだと言う夫は、満州から引き上げるときに子供を亡くしたか置いてきた引揚者を表現しているのだそうです。そして、姉弟は生死に拘わらず満州に残された子供たちです。

    夫婦が洋風なテーブルで紅茶やビスケットを食べる様は無国籍で、日本の戦後20年の風景には見えませんでした。1966年の早稲田小劇場での初演のときには、別役実さんのト書きを無視して畳敷きにちゃぶ台、おにぎりだったそうです。日本を意識していたようですね。

    今回の演出も、戦争中の過ちを忘れ、善良な小市民として生活していた当時の日本人を糾弾する意図なら、やはり工夫が必要ではないでしょうか。

    ザ・ピーナッツの物悲しい曲は哀愁があって良かったです。あれは確かに60年代でした。

    坂手さんによると、姉弟は幽霊かもしれないと言っていました。彼は幽霊物が好きで、自身の作品にも明示、暗示を問わず使っているそうです。因みに私は幽霊物が嫌いです!

    答を教えてもらって観る程つまらないものはありません。伝統芸能になっているのなら構いませんが…。

    素直に観て、とてもイラオモ、楽しいものでした。
  • 満足度★★★

    静かで奇妙で美しい作品
    ある老夫婦の家に、その夫婦の子だと名乗る女性が訪ねて来る話で、その女性が『マッチ売りの少女』の主人公と重ね合わされて描かれていました。地味な内容ですが、怖くて不思議な雰囲気の物語と、ベテラン役者の落ち着いた演技に引き込まれて、90分間弱の上演時間がもっと短いように感じました。

    前半は淡々とした会話が続きますが、弟が出て来てからはいかにも別役さん的な奇妙な展開になって行き、夫婦が姉弟に翻弄されて行く姿が滑稽でした。

    「良い人」であろうと振る舞う夫婦の大崎由利子さん、福士惠二さんの演技がとても良かったです。姉弟の2人は笑いを取る部分の演技が上手く行ってないように感じました。

    マレーヴィチの絵画を思わせるセットや、実在感のある小道具、照明、音楽も洗練されていて美しかったです。松本修さん演出で定番のロングコート・帽子・トランクは今回も健在でした。この格好で静かに立っている姿が印象に残りました。

    この公演のチラシを見掛けたことがなく、こりっちで知ったのですが、このようなしっかりと丁寧に作られた作品があまり宣伝されていないのは勿体ないと思いました。

  • 満足度★★★★

    奥深く、趣深い
    マッチ売りの少女をモチーフにした別役実の独特な世界を、出演者ならびに舞台セット、そして曲が見事に醸し出していました。
    とても気に入りました。

  • 満足度★★★★

    別役実の不条理劇を巧みに料理。
    不条理劇という体裁をとりながら社会の内奥にしかと切り込んでいる戯曲の本質を照らし出すような演出でした。

    ネタバレBOX

    終演後のアフタートークで作者の別役実が本作について、立派に家を構え夜のお茶を楽しむ夫婦が象徴するいわゆる「小市民」に対する、姉弟の旅芸人の憎悪というモチーフを、純化して表現するような舞台だったと評していました。また、特定の国や時代を感じさせないニュートラルな舞台作品といった趣の演出により、物語世界に普遍性が感じられたと思います。

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