ニーナ 公演情報 ニーナ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    チェーホフ、ロシア、革命、人間
    3人の役者のみなさん、ありがとう。

  • 満足度★★★★★

    15年後
    ニーナは描いていたイメージと随分違っていたが、3人の濃密な会話劇は飽きることなく観られ素晴らしい舞台だった。セットと舞台装置も良かった。

  • 満足度★★★★

    続編として魅力的な作品
    マティ・ヴィスニユックは昨年のKAZEの『戦場のような女』で初めて知った作家。日本の劇団であるKAZEにに次々新作を書き下ろし、他劇団ではなかなか観られない作品なので毎回楽しみにしている。
    チェーホフの『かもめ』の続編のような作品で、しかも今回演じているKAZEの3人の俳優に当て書きをしたというのも興味があった。
    チェーホフの名作の続編としてまったく違和感なく観客の心を捉える力作だと思う。
    既にCoRich常連ユーザーのかたが作品内容については詳細なレビューを書いておられるので、ネタバレでは簡単な雑感を述べたいと思います。

    ネタバレBOX

    白一色のシンプルな舞台美術。昇降する歪んだ白いドアと振り子時計の振り子の球体が印象的。
    この振り子は時を刻むと同時に2人の男性の間を揺れ動くニーナをも象徴しているように感じた。
    『かもめ』で自殺したはずのコースチャ(柳瀬太一)が生きている。柳瀬はいかにも年をとったコースチャらしく見えるのがいい。
    トリゴーリンの緒方一則もそれらしい雰囲気。
    ニーナの柴崎美納は、相変わらず演技が力強く、役柄をくっきりと描き出してみせる。この人、だれかに似てるなーと思っていたのだが、惜しまれて早世した宝塚出身の舞台女優、上月晃の面影がある。上月の舞台はもう観られないけれど、柴崎は女優としていまが一番脂が乗り切っている時期なので楽しませてもらおうと思う。
    登場人物3人とも過去にとらわれ、いわば存在自体が過去の亡霊というとらえかたもできるのだが、何より、2人の男にとってニーナ自身が“愛の亡霊”みたいな存在に思える。
    3人は革命に思いを馳せながら思い出の家を捨て、旅立つところで終わる。
    この芝居にはもう1人登場人物がいて、凍死した脱走兵士(栗山友彦)。遺体の役だが、この脱走兵士の遺体を戸口にみつけたことが3人が外界へ旅立つきっかけとなる。当然、まったく台詞がないのだが、栗山は全身から不気味なオーラが出ていて、終幕、徐々に床に崩れ落ちていくさまが、3人の幻想の崩壊も暗示しているかのようで、また、副題にある「剥製のかもめ」のようでもあった。
    冬の原野に響く鹿の鳴き声や銃声に続く昂揚感のあるBGM、タイガースの「青い鳥」にメロディーが似ている主題曲など音楽もよかった。
    衣装について。「冬だが部屋は温かい」という設定だが、男性2人がシャツ姿の薄着で、吹雪の中、外出するときも手袋もはめず、そのままで全然寒そうではないのが気になった。せめてセーターを着たらと思う。ニーナとコースチャが狩りに出かけるときも薄着のままで、ニーナの衣装換えが多いだけに、抽象的衣装とは捉えらず、違和感があった。ニーナは、パリコレl風のキモノコートのような衣装、フリンジ付きのプリントワンピース、白のナイティー、ゴブランのドレス、毛皮のマントと衣装を変え、視覚的にも楽しめた。
    ラストの3人が出かける場面、コースチャのコートだけが薄手なのも気になった。

  • 満足度★★★

    全体的に良くも悪くもクラシカルな印象
    チェーホフの『かもめ』の登場人物の15年後を描くという、とても魅力的なコンセプトの作品。
    基本3人芝居。

    ネタバレBOX

    ニーナを巡る2人の作家の物語。

    チェーホフの『かもめ』のラストから15年後、そこに設定したのには、訳があった。つまり、ロシアの2月革命が起こった年であるからだ。
    ルーマニアからフランスへ亡命した作家の手による作品なので、この舞台の背景にある2月革命の足音に対しては、ある種の感情があったのではないだろうか。

    それが雪に閉じ込められた家にいる3人と、さらに凍った兵士に込められていたように感じた。
    すなわち、「溶けるのは100年先」という台詞にもあるように、3人の不思議な関係と、それを取り巻く雪に代表される、避けることのできないモノ。世界を覆い尽くそうとしているような、革命の影。
    その不気味さが凍った兵士にさらに象徴されていた。

    ただ、観ていて感じたのは、「ニーナはこんなにエキセントリックだったのか?」ということだ。さらに言えば、「なぜ、『かもめ』のキャストが必要だったのか?」ということだ。

    自殺したはずのトレープレフを生き返らせてまで(2回目の自殺も未遂という設定)、このキャストたちが必要だったのだろうか。観客にとって、登場人物をすぐに認識しやすいということなのだろうか。そして、なぜニーナはわざわざトレープレフのもとに戻ってきたのか、ということもある。
    それが最後までどうもすっきりしてこなかったのだ。

    「15年後に私はこの場所に帰ってきた」みたいなモノローグで幕開けし、説明的な台詞&モノローグが挟まりつつ、朗々と歌い上げるように台詞を言うニーナなど、とてもクラシカルなつくりになっていた。
    さらに、時間とニーナの揺れ動く心の象徴のような、舞台中央の振り子や説明的(情緒的)な音楽の選択も含めて、この作品の世界が作られていたと言っていいだろう。
    それは、演劇であることを強く意識させるのだが、心地良さもあるのは確かだ。例えば、ニーナの台詞回しは、役者にとって気持ちのいいものではなかっただろうか。どうやらそれは観客にも伝わってきた。
  • 満足度★★★★

    物悲しい音楽も良く、
    重苦しい雰囲気の中の三人は素敵でした。

    トレープレフに思わぬ才能があったなんて…笑いました。

    ネタバレBOX

    気まぐれなニーナは夫トリゴーリンが嫌いになり、15年前に飛び出したトレープレフの許にいったん戻りましたが、ロシア二月革命の騒乱が忍び寄る中、追いかけてきた夫とともに三人は彼の地を離れて行くのでした。

    かもめの途中で自殺未遂し、ラストで自殺しきれなかったという設定のトレープレフは、2回しか自殺(未遂)してないよーって言ってました。

    15年間一人暮らしをしていたトレープレフはすっかり料理が上手になっていて、モスクワで田舎料理店を開いていたら繁盛しているよとトリゴーリンに言われ、キョトンとしていました。

    引きこもって自己満足のために文学にこだわっていた彼ですが、料理の方が才能があったとは皮肉で面白かったです。

    それにしても時計の振子を表した金属の玉ですが、私ならあの下には立ちたくありません。もし紐が切れて頭に当たったらただでは済みませんもの。
  • 満足度★★★★

    「かもめ」の続編のような
    亡命作家マテイ・ヴィスニユックが、ワタクシの観た回でいらっしゃってました。今回の作品は「かもめ」を観たことがない観客にも解るように「かもめ」の筋を織り交ぜながら説明し、咀嚼していたから誰にでも解る内容だった。
    上から吊り下げられた大きな振り子を見ていると、巨大な催眠術師が振ってるように感じてなんとも眠くなってしまうのはワタクシだけだろうか・・。苦笑!

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    コースチャーの恋人だったニーナは人気作家トリゴーリンとともに女優を目指してモスクワへ発ち、トリゴーリンとの間に子供をもうけたが死産だった。その間、二度の自殺を図ったコースチャー。

    しかし、15年前に離れたコースチャーの家をニーナは訪れる。ニーナを追ってトリゴーリンも現れる。ニーナに翻弄される二人の男と、彼らを手玉にとるニーナの会話劇だ。

    元々が自閉症のコースチャーはニーナの言葉通りに自らを動かしてしまい、同じくニーナを愛しているトリゴーリンもニーナによって振り回されてしまうのだが、ニーナ自身は自分以外は誰も愛していない、という感情が見え隠れし深層心理のやりとりが面白くもあり危険でもあった。

    ニーナの情熱は常に自分に向けられ、自分自身の成功のためには二人の男を利用し犠牲にしてでも這い上がるという気質に満ち溢れていたが、元来、他力本願なところがあり、そういった哲学しか持ち合わせていないニーナは行き着くところは、ただの落ちぶれた女優なのだった。

    コースチャーはニーナだけを想い続けて15年もの時をプラトニックラブだけで過ごし、そんな彼が書く作品は自分自身の為に書いたような作品で自己愛やエゴが散乱し、読者の心を掴むことが出来ない。

    コースチャーの家の中で過ごす三人は彼らにとってここがユートピアなのだと思う。

    マテイ・ヴィスニユックはフランスの作家らしいが、まさにチェーホフが書き下ろしたような作品で、その描き方は独特の不条理を放っていた。舞台で吐かれるセリフの一つ一つに哲学的な要素が含まれており、いちいち感心して観ていた。
    公演時間2時間だったが、途中休憩15分があり、3時間もの公演時間のように長く感じたのは何故なのか、未だに不思議だ。キャストらの演技力は流石。

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