ニーナ 公演情報 東京演劇集団風「ニーナ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    続編として魅力的な作品
    マティ・ヴィスニユックは昨年のKAZEの『戦場のような女』で初めて知った作家。日本の劇団であるKAZEにに次々新作を書き下ろし、他劇団ではなかなか観られない作品なので毎回楽しみにしている。
    チェーホフの『かもめ』の続編のような作品で、しかも今回演じているKAZEの3人の俳優に当て書きをしたというのも興味があった。
    チェーホフの名作の続編としてまったく違和感なく観客の心を捉える力作だと思う。
    既にCoRich常連ユーザーのかたが作品内容については詳細なレビューを書いておられるので、ネタバレでは簡単な雑感を述べたいと思います。

    ネタバレBOX

    白一色のシンプルな舞台美術。昇降する歪んだ白いドアと振り子時計の振り子の球体が印象的。
    この振り子は時を刻むと同時に2人の男性の間を揺れ動くニーナをも象徴しているように感じた。
    『かもめ』で自殺したはずのコースチャ(柳瀬太一)が生きている。柳瀬はいかにも年をとったコースチャらしく見えるのがいい。
    トリゴーリンの緒方一則もそれらしい雰囲気。
    ニーナの柴崎美納は、相変わらず演技が力強く、役柄をくっきりと描き出してみせる。この人、だれかに似てるなーと思っていたのだが、惜しまれて早世した宝塚出身の舞台女優、上月晃の面影がある。上月の舞台はもう観られないけれど、柴崎は女優としていまが一番脂が乗り切っている時期なので楽しませてもらおうと思う。
    登場人物3人とも過去にとらわれ、いわば存在自体が過去の亡霊というとらえかたもできるのだが、何より、2人の男にとってニーナ自身が“愛の亡霊”みたいな存在に思える。
    3人は革命に思いを馳せながら思い出の家を捨て、旅立つところで終わる。
    この芝居にはもう1人登場人物がいて、凍死した脱走兵士(栗山友彦)。遺体の役だが、この脱走兵士の遺体を戸口にみつけたことが3人が外界へ旅立つきっかけとなる。当然、まったく台詞がないのだが、栗山は全身から不気味なオーラが出ていて、終幕、徐々に床に崩れ落ちていくさまが、3人の幻想の崩壊も暗示しているかのようで、また、副題にある「剥製のかもめ」のようでもあった。
    冬の原野に響く鹿の鳴き声や銃声に続く昂揚感のあるBGM、タイガースの「青い鳥」にメロディーが似ている主題曲など音楽もよかった。
    衣装について。「冬だが部屋は温かい」という設定だが、男性2人がシャツ姿の薄着で、吹雪の中、外出するときも手袋もはめず、そのままで全然寒そうではないのが気になった。せめてセーターを着たらと思う。ニーナとコースチャが狩りに出かけるときも薄着のままで、ニーナの衣装換えが多いだけに、抽象的衣装とは捉えらず、違和感があった。ニーナは、パリコレl風のキモノコートのような衣装、フリンジ付きのプリントワンピース、白のナイティー、ゴブランのドレス、毛皮のマントと衣装を変え、視覚的にも楽しめた。
    ラストの3人が出かける場面、コースチャのコートだけが薄手なのも気になった。

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    2011/02/08 13:48

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