夜叉ヶ池 公演情報 夜叉ヶ池」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    泉鏡花を現代的にリニューアルした本年屈指の力量感のある再演だ。
    舞台の上手に一段高く釣り鐘、下手には三国嶽の山里の鐘守夫婦(勝地涼・滝内公美)の家。舞台の前には山頂の夜叉が池から流れ落ちる清流が流れているという設定。アヤメが数株おかれた中央は広いスペースになっていて、そこで、妖しい者たちや村人たちのドラマがモブシーンで展開する。振り付け・森山開次との息が合って、森新太郎・演出が、冴える。今までに見たことがない「夜叉が池」である。
    里山に鐘の音が響いて幕が開くと、山里の生活風景。夫と妻の夕餉の準備に旧友(入野自由)の訪れ、とおなじみの導入部が終わって、夜叉が池の白雪姫(那須凛)が妖怪たちを引き連れて現れると舞台は急転。ここからは、ダイナミックなモブシーンが、終わりまで続く。アイディアの良い衣装(西原梨恵)をまとった個々の俳優の動きをたてながら、集団としての動きもよく工夫されている振り付け、現代的な効果音(高橋厳)と音楽(落合崇史)もこの場の効果を上げている。
    新派の「夜叉が池」が、伝統日本に異国情緒を持ち込んだ独特の文明開化趣味で大正のジャパネスク世界を作っていたが、こちらは現代の「夜叉が池」である。
    今更、「夜叉が池」をやってどうなのだろう、という疑問に舞台は見事に答えを出している。この物語の魅力二は、今関心を持たれている自然回帰や、村社会への鋭い観点があったことを教えてくれる。
    俳優もスタッフも、皆懸命に演出についていって(あちこちに細かい工夫が成功しているのが見える)、新しい「夜叉ヶ池」が生まれた。パルコ劇場開場半世紀の記念公演にふさわしい快作である。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    泉鏡花のこの怪異譚は、古人の知恵に耳を貸さない近代人(とくに成金とえせ権力者)の愚かさと、愛に身を捨てる男女の献身との対比を描いたもの。原作のセリフにない大破局のスペクタクルを、ステージングのダンスとサウンドと、すべてを飲み込む大山嘯で描いて、圧巻の舞台だった。

    山奥で朝に夕に鐘をつく老夫婦(勝地涼、瀧内公美)の静かな生活から幕を開け、そこに旅の途中の学者・学円が通りかかり、因縁話が明らかになる。老夫婦は実は若く、白髪頭はかつら。夫は3年前行方不明になった伯爵家の三男の萩原だった。この村では700年来の竜神との約束で、明け六つと暮れ六つと丑三つ時の日に三度、鐘を突かないと、夜叉が池の竜神があばれてふもとの村々を湖にしてしまうという。その鐘撞の老人が倒れたのに、たまたま居合わせた萩原が後を継いだというのだ……。これが話の導入。

    萩原と学園が夜中に夜叉が池を見に去ると、夜叉が池の鯉と蟹五郎に続いて、龍姫の白雪姫(那須凛)があらわれ、遠く離れた剣ヶ峰の千蛇が池の主への恋のために、村を見捨てて、自由に飛んでいきたいとわがままを言う。乳母が懸命に止めるが、姫は聞かず……。

    静かにわびしく始まって、じわっじわっと緊張を高め、最後は予想もしなかった悲劇で、ダイナミックなカタルシスを実現する。多数の俳優・ダンサーたちのつくりだす夢幻のひと時であった。。

    青年座の那須凛は私の好きな女優だが、狂おしい竜神の姫を演じて見事だった。腹黒代議士の山本亨は、帽子は宮沢賢治のようなのに、白塗りの顔に三つ揃えはヤマネコ博士のようで、ふてぶてしい俗人ぶりが迫力あった。

    ネタバレBOX

    鯉七の手をひれのように動かすだけで、陸に上がった魚よろしく、どてっどてッと動く姿。蟹五郎のかくかくッとした手足の動き。などなど、森山開次による異界の者たちの、人間とは違う動きが、いかにもそれらしく、妖怪たちを出現させる。

    すべてが山津波に飲み込まれた後の、清浄の世界で、百合と萩原のメオトがむすばれ、遠くから学円が祈る。カタルシスのあとの光明を感じさせる幕切れだった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初日観劇。いやあ素晴らしかった。今年のナンバー1だ。
    泉鏡花というと私的には受験勉強で覚えた名前で作品は読んだことがなく、時代遅れの作家という認識で、あまり期待しないで出かけたのだった。しかし、静から動へのダイナミックな話の展開、美しく斬新な衣装と踊りにすっかり引き込まれて3回目のカーテンコールでは周りの人に先んじて立ち上がってしまった。もちろん視界の端でどなたかが立ったのを確認してからなのだが(笑)

    1913年(大正2年)の戯曲、つまり110年前の作品である。大正初期というと日本でもまだ人間と妖怪が共存していた時代だ。雨乞いで若い女子の生贄を捧げることも毎年どこかの村で行われていたという(「大正風俗大辞典」民明書房刊より)。そんな時代のお話……おいおい大正の人に叱られるぞ。

    登場人物は
    ・山奥の釣鐘堂を守る晃(勝地涼)と百合(瀧内公美)、そして失踪した晃を探しにやって来た学円(入野自由)の3人。
    ・夜叉ケ池に封じ込まれた竜神の白雪姫(那須凜)とその乳母などの家来たち。家来たちは魚の精のようだ。
    ・干ばつにあえぐ村人たちと議員に雇われたヤクザ者たち。雨乞いを企てている。
    の3つのグループに分かれる。
    と書くと皆さんストーリーの大筋は想像が付くだろう。まあでもそんな余計なことを考えずに目の前に展開する美しきものことをただただ楽しめば良いのだ。

    瀧内公美さんのはかなげな美しさ、那須凜さんの躍動する美しさが堪能できる。私の推しの勝地涼さんはもちろん素晴らしく、眼鏡姿の入野自由さんはぴったりの雰囲気を醸し出している。

    原作は短いもので争うシーンの記述も簡素でもちろんダンスシーンなんて書かれていない。そこを限界突破に膨らませたのが演出の森新太郎さんと振付の森山開次さんだ。満足度は余裕の星5つ。

    ***
    千秋楽も観劇

    序盤の芝居はほとんど舞台下手で行われるので上手席の今回はかなり退屈であった。しかし魑魅魍魎がワラワラと湧いてくる歌舞伎風「スリラー」の踊りでダイナミックモードに入ってからはそうそうこれこれと膝を打っているうちにそのままエンディングまでハイテンションで持って行かれた。

    本当は初日と千秋楽を比べてどう進化したかを比較するはずだったのだが三週間も空いてしまうと今の記憶力では無謀な試みであることを思い知った。

    カーテンコールで一番に立つぞと意気込んでいたのだが2nd callで皆さん立ってしまって涙目だった。千秋楽と初日では違って当然。しかし2ndで真っ先に立つ勇気はないなあ。

    *当日5/23はPARCO劇場50歳の誕生日ということで入口で御礼の大入袋が全員に配られた。中身は恒例の5円玉1枚。

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