夜叉ヶ池 公演情報 パルコ・プロデュース「夜叉ヶ池」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    泉鏡花を現代的にリニューアルした本年屈指の力量感のある再演だ。
    舞台の上手に一段高く釣り鐘、下手には三国嶽の山里の鐘守夫婦(勝地涼・滝内公美)の家。舞台の前には山頂の夜叉が池から流れ落ちる清流が流れているという設定。アヤメが数株おかれた中央は広いスペースになっていて、そこで、妖しい者たちや村人たちのドラマがモブシーンで展開する。振り付け・森山開次との息が合って、森新太郎・演出が、冴える。今までに見たことがない「夜叉が池」である。
    里山に鐘の音が響いて幕が開くと、山里の生活風景。夫と妻の夕餉の準備に旧友(入野自由)の訪れ、とおなじみの導入部が終わって、夜叉が池の白雪姫(那須凛)が妖怪たちを引き連れて現れると舞台は急転。ここからは、ダイナミックなモブシーンが、終わりまで続く。アイディアの良い衣装(西原梨恵)をまとった個々の俳優の動きをたてながら、集団としての動きもよく工夫されている振り付け、現代的な効果音(高橋厳)と音楽(落合崇史)もこの場の効果を上げている。
    新派の「夜叉が池」が、伝統日本に異国情緒を持ち込んだ独特の文明開化趣味で大正のジャパネスク世界を作っていたが、こちらは現代の「夜叉が池」である。
    今更、「夜叉が池」をやってどうなのだろう、という疑問に舞台は見事に答えを出している。この物語の魅力二は、今関心を持たれている自然回帰や、村社会への鋭い観点があったことを教えてくれる。
    俳優もスタッフも、皆懸命に演出についていって(あちこちに細かい工夫が成功しているのが見える)、新しい「夜叉ヶ池」が生まれた。パルコ劇場開場半世紀の記念公演にふさわしい快作である。

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    2023/05/12 13:38

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